役不足だよ。といったセリフをよく耳にするのですが、その
使い方、合ってます?役不足は、力量に比べ、役目が不相応
に軽い事を意味するのであって、決してそれをするレヴェル
に達していない、スキルがないからそんな事はできるはずが
ないと言った事を意味していないのです。つまり、Chateau
Latour/シャトー・ラトゥールを飲みながら、スナック菓子を
つまむ。それはラトゥールには役不足。これが本当の使い方
です。
近年、大注目のワイン生産国、モルドヴァからまたまた興味
深いワインが届きました。ワインには白ワイン、ロゼワイン、
赤ワインがある事をご存じと思いますが、スパークリング・
ワインはどうでしょうか。
スパークリング・ワインもワインですから、当然、白もロゼ
も赤もあります。しかし、赤のスパークリング・ワインには
出会った事がないよ、飲んだ事がないよ、と言う人がかなり
いると思います。
理由は簡単。赤のスパークリング・ワインの生産量がとても
少ない。実は造るのが難しいからなのです。ブドウを圧搾し、
果汁を絞り出します。その果汁を発酵させるとワインになる。
そのワインに酵母と糖分を加え、炭酸ガスを補足する2回目
の発酵を行う。
それがスパークリング・ワインの主な製造方法なのですが、
2回目の発酵の際に酵母がワインの色素を食べてしまうので
2回目の発酵の前は赤ワインだったのが、発酵後にスパーク
-リング・ワインになった時にはロゼになってしまったり、
ロゼワインだったのが、白になってしまったりするのです。
その様な事もあって、赤のスパークリング・ワインの生産量
は少ない訳です。
入手困難なレアものと言った程までではないですが、消費者
の方には比較的馴染みの薄い赤のスパークリング・ワイン。
それをモルドヴァのRadacini Wines/ラダチニ・ワインズが
日本のマーケットに特化し、造り、届けてくれました。
Rouge de Cabernet/ルージュ・ドゥ・カベルネ。Cabernet
Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョンで造った赤/rougeで、
原料ブドウであるカベルネ・ソーヴィニョンの個性が明確に
反映されたスパークリング・ワインです。
その特徴として最も感じるのは果実味と共に広がる乾燥した
ハーブを思わせるフレーヴァー。そこからドライな口当たり
と強すぎないスパイシーさが口中を満たします。
新着ワインが手元に来た時、一緒に楽しむと良い料理を選ぶ
為、複数の料理、時にはワインの香味を推測し、それに合う
だろうと思われる料理とペアリングを行います。
予想通りの結果となる事もありますし、そうでない事もあり
ます。また、パーフェクトでないけれど、料理にちょい足し
したなら、パーフェクトになるだろうと言う時もあります。
の新メニュー「若鶏の熟成もろみ焼き」。もろみに漬け込み、
その後、香ばしく焼き上げました。と説明がありましたので
カベルネ・ソーヴィニョンがスパークリング・ワインに変身
複数でなく、一点選択でペアリング。その結果は...。
思い描いた通り、決して悪くないマリアージュをしています。
ワインの果実味ともろみに由来するカラメルぽいニュアンス
の香りの融合。ワインのタンニン(渋味旨味の成分)と醤油、
味噌の由来する旨味成分(ソトロンと言う成分が創り出す)
の融合。肉にほうれん草と添えれば、原料ブドウ由来の植物、
野菜を思わせる香味との融合。肉に大根おろしを添えれば、
炭酸ガスがもたらす味わいのキレとの融合。と言ったいくつ
もの融合がワインと料理の間に生まれます。
しかし、パーフェクトではないのです。何が足りないのか。
それはワインに感じられる乾燥したハーブを思わせる要素が
料理にないからです。
乾燥したハーブを思わせる要素。それを料理にちょい足しし、
ワインの持つフレーヴァーと同系にし、両者を同化、リンク
させる。これでパーフェクト・マリアージュは完成。
そのちょい足しの大役に選ぶのは「山椒」。もろみ由来の味
との相性にも優れますから、料理の香り、味わいを台無しに
しません。そしてワインのフレーヴァーとリンクするのです
から、結果は明らかです。

