近年、目にする機会が多くなったのは単に気のせいでしょうか。
何がって?黒ブドウで造った白ワインの事です。黒ブドウとは
果皮の色が紫色をしたブドウの総称で、Cabernet Sauvignon/
カベルネ・ソーヴィニョン、Pinot Noir/ピノ・ノワなどがそれ
に該当します。
黒ブドウからは普通、赤ワインが造られますが、果皮の色素を
どの様に処理するかでロゼワインも白ワインも造る事が可能と
なります。
それはこんな具合です。ワイン造りは、ブドウを破砕し、果汁
を取ります。その果汁に酵母を加え、酵母の働きでアルコール
発酵を行う事で、ジュースがワインに変身します。
その過程で、果汁に果皮を浸漬する、ほどほど浸漬する、浸漬
をしない。これら3つの方法により、赤になるか、ロゼになるか
白になるかが決まります。ワインの色は果皮の色がワインへと
移行した結果なのです。
黒ブドウは本来、赤ワインを造る為のブドウですが、それにも
関わらず、ロゼワインならまだしも、なぜ白ワインを造るのか。
そんな疑問が湧くでしょう。造りたいからそうしているのでは
なく、きちんとした理由があります。
ブドウの樹は生き物ですから、寿命があります。加えてワイン
を造る為に相応しい実を付ける期間は当然ですが、それよりも
短くなります。
樹を植えます。実がなるまで数年、良質の赤ワインを造る為の
実がなるまで更に数年。ベストは10年後くらいから。それまで
は黒ブドウから赤ワインが造れません。果皮の色素が赤ワイン
の為に十分ではないからです。そこで赤ワインを造れる成分を
備えた実になるまでの期間、果皮の色素を使わない白ワインを。
果皮の色付きが良くなり出したら、ロゼワインを造る。多くの
場合、ブドウ樹のこの様な状況に起因しています。
今日はカベルネ・ソーヴィニョンの若樹の実から造ったBlanc
de Cabernet/ブラン・ドゥ・カベルネ(カベルネから造った
白ワインの意)を紹介します。
カベルネ・ソーヴィニョンは2つのブドウが自然交配した結果、
誕生したブドウで、親は黒ブドウのCabernet Franc/カベルネ・
フランと白ブドウのSauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブラン
です。
カベルネ・ソーヴィニョンの赤ワインに緑色の印象(杉の葉、
シダ、緑黄色野菜などの香味)を持つのはソーヴィニョン・
ブランの性質を受け継いでいるからと言え、事実、カベルネ・
ソーヴィニョンの白ワインを何も知らされず飲んだなら、多く
の人がソーヴィニョン・ブランの白ワインと思う事でしょう。
ソーヴィニョン・ブランの白ワインもそうですが、カベルネ・
ソーヴィニョンの白ワインを料理と一緒に楽しむ時、この緑色
のイメージを頭に描きつつ合わせ楽しむ料理、食べ物を決める
と良いでしょう。
橋渡し役になります。例えば今や世界中で愛される様になった
「寿司」。貝類、脂身の少ない白身、タコやイカを軍艦寿司、
あるいは握り寿司でいつもより山葵を多めにし、できれば醤油
ではなく、塩で食す。これで緑色のイメージを備えた白ワイン
との相性が格段に増します。
山葵の風味をしっかり添え、ワインと寿司の緑の調べある至福
のマリアージュを堪能してみませんか。