2021年12月17日金曜日

ブルネッロ3兄弟

シャルドネ3兄弟の回で言及しましたが、同じブドウ品種でも
育まれた環境が異なれば、そのブドウの実が備える性格が当然
異なります。それを踏まえ、実の性格に相応しいナチュラルな
ワイン造りが行われます。
ですので同じ造り手が造った同じヴィンテージ、同じブドウの
ワインであっても驚く程、酒質が相違する事が多々あります。
今日はそんな3種類の赤ワインを紹介します。


造り手はイタリア中部、トスカーナ州モンテプルチャーノ村に
居を構えるContucci/コントゥッチ。ワインは2011年秋に収穫
したBrunello/ブルネッロ種(Sangiovese/サンジョヴェーゼの
1種で、より高貴なクローン)で造ったトスカーナを代表する
ワインの一つであるVino Nobile di Montepulciano/ヴィーノ・
ノビレ・ディ・モンテプルチャーノです。





ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノはコントゥッチ
の本拠、「モンテプルチャーノ村の高貴なワイン」と言う意味
で17世紀の著名な詩人、フランチェスコ・レーディが「ワイン
の王」と讃えた事で名声を博した歴史ある赤ワインです。中世
以来、「優雅で貴族的なワイン」としてトスカーナ州のワイン
通好みの銘酒として愛飲されています。




ワインは地味(ブドウが育まれた環境に影響を受け、その地に
根差したそれぞれの味わい)が違いを生みますのでヴィーノ・
ノビレ・ディ・モンテプルチャーノの赤ワインを一括りにし、
どの様な酒質なのか語る事は非常に困難ですが、大まかな傾向
として、ワインが若い内は果実味とタンニン(渋味の成分)が
調和し、力強い主張があるものの口当たりはまろやかで優雅、
ワインが熟成すると絹の様にしなやかな口当りで、優美で和み
のある深みを感じる酒質となります。




そしてヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノに限らず
ブルネッロ種で造った赤ワインに共通するのは、ジビエ、鮪、
鰻などに感じる鉄分ぽさに通じる味わいがある事です。従って
それらの食材で作った料理と好相性となります。
当店は基本的に高額なワインを積極的に勧め、お客様に買って
頂く事をしていませんが、年の瀬ですし、リッチな宴を行う事
があるでしょうから、高額ワインの紹介をさせて下さい。




*Vino Nobile di Montepulciano 2011
ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ

飲み頃温度:19度。
<シルキーな口当りのミディアム~フルボディー>
5,500円
熟成感抜群です。きのこソテー、シナモンなどのスパイスを
思わせる香りが広がります。果実味の残存と熟成香が調和し、
和みと優美さがある口当りの中に赤ワインの4要素、甘味、
酸味、苦味、渋味が何一つ突出せず、バランス良く備わって
います。身体に染み入る様なシルキーさがあります。




*Vino Nobile di Montepulciano 2011 Pietra Rossa
ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ、ピエトラ・ロッサ

飲み頃温度:19度。
<力強さと優美さが共存したフルボディー>
11,000円
火の入った動物赤身肉、きのこソテーを思わせるワイルドさ
と複雑さが主体となり、シナモンなどのスパイス香がそこに
アクセントを添えています。どっしりと備わったタンニンに
ドライさと鉄分ぽさが伴い力強く広がります。しかしながら
フィニッシュはシルキーで、品格を感じる酒質です。




*Vino Nobile di Montepulciano 2011 Mulinvecchio
ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ、ムリンヴェッキオ

飲み頃温度:15~18度。
<和みあるミディアム~フルボディー>
11,000円
アメリカンチェリーを連想させる果実味とスミレ様の華やか
でパフュームなフローラルさが広がります。その奥にきのこ
ソテーやローストしたジビエ肉をイメージする複雑さがあり
ます。それは味わいでも同様で、エレガントさとパワフルな
野趣さが共存し、深みがあります。重厚さと一線を画す酒質
には優美さも備わっています。



きのことビーフの味わいが凝縮したハッシュ・ドゥ・ビーフ
もブルネッロ3兄弟にピッタリの相棒です。