ワインの栓(クロージャー)はかつては天然コルクだけでした
が、今のその多様性には驚くばかりです。良質の天然コルクは
とても高額。温暖化でコルク樫の成長が不規則となり、良質の
コルクを取れる部分が少なくなってしまった。等々の理由から
クロージャーの多様化が進みました。
スクリュー・キャップが普及し始めた頃、コルクを抜く楽しみ
がなくなってしまうので、ワインを飲むのが味気なくなるから
とスクリューキャップのワインを敬遠する人がとても多かった
事を覚えています。
その解決策として、シンセティック・コルク(プラスチック製
のコルク)、Vinoloc / ヴィノロック(ガラス製のコルク)も
登場し、スクリュー・キャップ敬遠のワイン・ラヴァーの心を
ワインにつなぎ止めて来ました。今ではスクリュー・キャップ
敬遠のワイン・ラヴァーに滅多に出会わなくなりましたが。
コルク(コルク樫で作った)は密栓でありながら、気孔がある
事でわずかながら空気の流通が起こります。つまり、ワインが
還元状態に陥り難いのですが、プラスチック製のコルクの場合、
気孔のあるコルクと異なり、完全な密栓となり、空気の流通が
ない事からワインが還元状態(窒息状態、冬眠状態の様な感じ)
に陥り、ワインが持っている本来の香りや味わいの主張がなく、
個性が閉じこもった状態になってしまいます。
また、異常とは言えませんが、プラスチックですので、ワイン
にビニールぽい香り(キューピー人形をイメージして下さい。)
を付けてしまいます。これも還元状態の一因です。
それらを解消する為には寝ぼけているワインを起こしてあげる
必要があります。デカンタに移し、十分に空気接触をさせた後、
飲むのも一手ですが、それでは解消しきらない前に飲み終えて
しまう事もあるでしょう。
そこでお勧めなのは、飲みたい所を我慢し、1日目はグラス1杯
だけ、2日目は残りの半分、そして3日目に全部飲み切る。そう
する事で、日を追うごとに変化し、最後にはワインが真の姿を
現してくれる瞬間に出会えます。
そんな楽しみ方をしてほしい。したら最高にブドウ品種の個性
を楽しめるワインがあります。それは白ワインで、ヴィオニエ
/ Viognierと言うブドウで造られています。
ヴィオニエの白ワインは、カリンなど白い果肉の果実の香り、
沈丁花など白っぽい花の香りがあり、時には果蜜やトロピカル
ささえ感じる事もあり、そのアロマにうっとりとしてしまう程
です。3日目にその状態になる訳です。
そんな「ヴィオニエの白ワイン」がこちらです。イタリア中部
トスカーナ州で育まれたブドウで造りました。ブドウの持って
いる個性(ワインになった時のアロマ)をストレートに生かす
為、ステンレス製のタンクで醸造、熟成しています。
*d'Aressandro 2018 Toscana Viognier
ダレッサンドロ2018トスカーナ、ヴィオニエ
飲み頃温度:11~14度。
<コクのある辛口>
3,300円
・1日目の楽しみ方
この日は1杯だけ飲みます。最も還元的な部分がグラスに入り
ますので、本来はその様な行為をあまりして欲しくないのです
が、グラスをこれでもかと言うぐらい回し、中のワインを十分
に空気に触れさせてからお飲み下さい。
・2日目の楽しみ方
1日目よりアロマが広がると思いますが、それでもまだ本来の
それではなく、ビニールぽい香りが残留しています。その残留
している香りを生かす楽しみ方ですが、熱した油が同系の香り
となる事から、油で炒めた料理、油で焼いた料理とペアリング
してあげるとお互いの香りがリンクし、欠点だった要素を利点
に変えてくれます。
例えば炒飯、焼き餃子(醤油も、ラー油もなしで)を食べつつ
ワインを飲んで頂くと、ワインだけを味わった時と大きく相違
する香味を楽しめます。エノキやエリンギのバター・ソテー、
鶏モモ肉の塩麴炒め等もお勧めの料理です。
ついにヴィオニエの白ワインらしいアロマを楽しめる時の到来
です。良好に熟したブドウで造ったのでしょう。黄色い果実の
華やかさを感じます。甘味旨味のある黄色い野菜の料理に相乗
しそうな香味をシッカリと感じます。
そこで3日目の状態の香味の時に一緒にお楽しみ頂きたいのは、
ハロウィーンがもう直ぐですので、カボチャを使った料理です。
コロッケ(ソースを付けないで、味は塩で添えて)、煮付けや
焼きカボチャ(淡い味付けでカボチャの味を生かして)ならば
ワインの香り、味わいとリンクし、マリアージュを奏でてくれ
ます。また、カボチャのパイ、カボチャのパンもお勧めです。
香味の変化を楽しむのもワインの楽しみのひとつです。時間の
経過と共に変化するこの白ワインを興味深く味わって頂ければ
と思います。