ドイツはかつて最北にあるワイン産地でした。その為、ブドウ
栽培は過酷で、主に赤ワインを造る果皮が深い紫色の黒ブドウ
は果皮の色付きが悪く、良質の赤ワインを誕生させるには不適
でした。
そんな中でも人々の英知を結集し、困難な自然環境を克服し、
何とか良質の赤ワインを造り出そうとたゆみない努力が行われ、
赤ワイン造りもして来ました。
その過程で行われたのが、ドイツの気候風土に適合した品種を
誕生させる事でした。その一つの方法が優れた交配品種を生み
出す事です。それを反映してドイツには他国にないブドウ品種
(ドイツ独自の交配品種)が多数あります。
今日紹介の赤ワインは、その交配品種の中で最も有名で、最も
重要とされている「Dornfelder/ドルンフェルダー」で造られ
ました。
この品種はドイツ赤ワインの救世主の様な存在で、色調の濃さ、
魅力的な果実味をワインにもたらし、木樽熟成に耐えうる十分
なボディーをも備える事ができます。
ドルンフェルダーは、Helfensteiner/ヘルフェンシュタイナー
とHeroldrebe/ヘロルドレーベを親に持ち、その名は葡萄栽培
学校の創始者の名に因んでいます。
また、ヘルフェンシュタイナーは、Fruhburgunder/フリュー
-ブルグンダーとTrollinger/トロリンガーを親に持つ交配品種、
ヘロルドレーベは、Portugieser/ポルトギーザーとLemberger
/レンバーガーを親に持つ交配品種です。
この様に何世代にも渡り交配を繰り返し、その時々の自然環境
に適合させる事も珍しくありません。また、一度誕生した交配
品種がその時ではなく、後になって活躍する事も多々あります。
今日紹介するドルンフェルダーの赤ワインはライトなボディー
で、ブドウ果汁の糖分を発酵させず残したほんのり甘味のある
チャーミングなスタイルに仕上がっています。
ジャン・ブッシャー18ラインヘッセン、ドルンフェルダー
・外観:深みのある色合いです。全体に鮮やかな紫色の色調を
明確に感じます。グラスの内側を流れるワインの速度は速く、
このワインのアルコール度数が高くはない事を推測させます。
つまり、ワインには甘味があるだろうと。
・香り:ブルーベリーを思わせるリッチな果実味があります。
インキーでパフューム、リキュールを思わせる華やかさに満ち
溢れています。
ワインが空気に触れるに従いレッドペッパー様のスパイシーさ
とメントールを感じるフレッシュさが現れます。ラヴェンダー
様のフローラルさも現れ、一層、華やぎます。
・味わい:ジューシーでライトタッチ、外観で予想した通り、
ほのかな甘味のチャーミングな広がりがあり、アルコール度数
は高くはありません。
酸度は中、ミネラリーさは控えめで全く角々しくない丸みある
柔和で優雅な口当りです。
インキーでパフュームさを伴う紫色のイメージ満載の果実味の
中に酸味、甘味、苦味、渋味の赤ワインの4大要素がバランス
良く広がり、和まされます。
どこまでもエレガントで、身体に染み入る様に消えて行く余韻
は優美です。