赤ワインの場合、造り方の相違によるより、原料ブドウの相違
によって酒質の違いが出やすいのですが、白ワインの場合には
原料ブドウの違いによるよりも、造り方(発酵をどの様に行う
か。あるいは熟成をどの様に行うか。)による違いから酒質の
相違が出やすいと言えます。
それは赤ワインのそれぞれの個性は、原料ブドウの果皮に由来
する割合が多く、つまり、赤ワインの色や香味の由来は果皮の
色素やエキスにある為です。
赤ワインやロゼワインと異なり、多くの白ワインは原料ブドウ
の果皮を果汁に浸漬し、果皮の色素やエキスを果汁に移す事が
ありませんから、自ずと製造過程がどの様になっているのかで
その白ワインのスタイルが決まる事になります。
曽我彰彦さん入魂の3種類の白ワインが届きました。3種類共に
Chardonnay/シャルドネと言うブドウ(白ワイン用の最も有名
な、そして高貴品種)で造ってあります。但し、何も知らない
ならば、3種類全てがシャルドネで造ってあると自信を持って
断言できないかもしれないくらいにそれぞれが別々のスタイル
に仕上がっています。
その違いは既に言及した様にワインが出来上がる過程の違いに
よって生まれた訳で、あるワインはオーク樽由来の風味が明確
にあり、あるワインは美しい果実味が主体となり、あるワイン
はそれら両方が優雅に備わっていると言った具合です。
以前、鶏肉は火が入るとナッツ、特にカシューナッツ、そして
ピーナッツ、を思わせる風味が現れると言及しました。そこで
曽我さんの熱い情熱がギッシリと詰まった3種類の白ワインを
赤城鶏の串焼き塩味に合わせ、相性研究をしてみました。
用意した串焼きは3種類。太田市浜町にある「屯(かおす)」
でto goです。焼き加減、塩加減の塩梅が絶妙で、毎週月曜日
は屯の串焼きとワインで夕食です。
・もも
・ぼんじり
・皮
の3種類なのですがナッツのヒントは「もも」より「ぼんじり」
の方が、「ぼんじり」より「皮」の方がより明確です。
白ワインにナッティーなニュアンスを感じる場合、2つの要因
があります。1つは温暖なエリアでブドウがシッカリと完熟し、
そのブドウで白ワインを造るとワインに生アーモンドの風味を
感じる事が多くあります。
もう1つは発酵や熟成を白ワイン用のオーク樽で行った場合、
オーク樽が含有している要素がワインに移行し、そのワインは
カシューナッツ、ピーナッツ、ローストしてあるアーモンド、
カフェ・オ・レ、カスタードクリーム、ミルク・プリンなどを
思わせる香味が備わります。
料理とワインの相性の良さは両者に共通の要素があればある程
高まりますので、ナッツの風味がある白ワインでも、鶏肉同様
のカシューナッツやピーナッツのニュアンスのあるオーク樽を
使い、造った白ワインの方がより良くマッチします。
優雅に感じるもの、そして明確に感じるものですので、それに
応じ、鶏肉の部位違いの串焼きとのつながりの深い浅いが生じ
ます。
・オーク樽由来の風味をあまり感じないワイン
「もも」との相性にとても優れています。両者が合わさる事で
ワインに上品な甘味旨味が生まれます。「ぼんじり」でもそれ
に類似する状況が生まれますが、「皮」とではワインの存在感
がなくなってしまいます。
・オーク樽由来の風味と美しい果実味が優雅に共存するワイン
「ぼんじり」との方がよりマッチイングしていると感じますが
「もも」との相性も悪くはなく、やはりワインにしなやかさが
増します。「皮」とでは美しい果実味の広がりのバランス感が
不安定に感じます。
・オーク樽由来の風味を明確に感じるワイン
「皮」との相性はパーフェクトです。両者のナッティーな風味
が相乗し、口中に品位ある旨味が広がります。「ぼんじり」、
「もも」の順にワインのナッティーさが肉の味を圧倒し、口中
にはナッツしかない様な感覚になります。
1種類のワインで複数の料理との相性がパーフェクトになると
言う事はなかなかありませんが、ナッティーな要素を多少なり
とも備えている白ワインは鶏肉の料理、特に串焼き、との相性
に優れ、果実味が優先するタイプよりもオーク樽からの要素が
優先する香味を持つタイプを相棒にしてあげる事で、ビールや
焼酎、日本酒で楽しむ時以上に串焼きの味わいをマリアージュ
の世界として堪能できます。
*Clos de Cacteau 2019なら「もも」がベター
*Reserve Privee 2019 なら「ぼんじり」がベター
ですが、これはダメだと言うまでの悪マッチはありませんので
鶏肉の串焼き塩味をto goしたなら、当店でSogga Pere et Flis
3兄弟Chardonnayの何れかを、もし太っ腹に行くのなら3種類
ともゲットし、ご家庭でそのマリアージュをお楽しみ下さい。