ワインのある風景: 変身する所がワインの一つの面白さ。第1課/di yi ke

ワインを飲んで、そのワインがうまいまずいで語られる事がありますが、
ワインはそれだけの主張とは異なる主張ができるポテンシャルを内包して
いますので、それも考慮し、そのワインを判断する事も必要です。
内包されているポテンシャルを引き出すにはいくつかの方法がありますが、
最も効果的なのは料理と相乗させ、ワインだけの時に主張していなかった
要素を表面化させる事です。
酸味の広がりが強過ぎる。料理でそれを和らげてあげる。渋味（タンニン）
の主張が強過ぎる。料理でそれを包み込んで優しくしてあげる。緑のもの
を連想させるニュアンスが強過ぎる（言葉悪い表現ですが、青臭いと表現
できる様な）。料理でそれを中和してあげる。と言った感じに。
なんでだと思う方もいらっしゃるでしょうが、当店では中華人民共和国の
ワインに熱視線を浴びせ、それらのワインを追い求め、可能な限りの商品
を店で売る試みを続けています。

この度、3種類の日本初上陸ワインが久し振りに当店へやって来ました。

3種類全て既にテイスティングをしましたが、それぞれがそれぞれのある

要素を強めに主張していますので、それを何かしらの方法で和ませてやる
必要がある今の状態です。それらを3回連続で一つずつ紹介して行きます。

変身する所がワインの一つの面白さ。それを真に実感できるワイン達です。
最も効果的な方法、料理とマリアージュさせ、ワインを見事に変身させて
みましょう。

先ずは当店で初販売の白ワインです。北京の西、約1,000kmの内陸の地、
Ningxia/ニンシア（寧夏回族自治区）が産地です。大陸は内に行けば行く

程、大陸性気候（ブドウ栽培期は少雨で、日夜の温度差が激しく、日射し
が強い）が顕著になり、その自然環境の下、ブドウの熟度が高くなります。
地中海沿岸部の白ワインもそうですが、熟度の高いブドウから造られる白
ワインは苦味旨味のアクセントがあり、豊かなミネラリーさに支えられた
骨太な（硬水の様な）酒質になります。時にその硬水のニュアンスが強く
なり過ぎ、それを和らげてあげる必要がある事があります。ワインの現状
を変身させてあげる必要がある訳です。

今日紹介の白ワインは、力強い骨太さ故、やや口当たりが固いと感じる人

がいる可能性があり、それを料理で和ませ、この白ワインが内包している
素晴らしさを引き出してあげる事にします。
このタイプの酒質をしている白ワインには硬水の様な香りと味わいがあり
ます。焼カキや焼きハマグリを思わせるニュアンスがあります。にがりを
思わせる味わいがあります。ローストしていないナッツを思わせるヒント
があります。そして、フリンティーさがあります。
その様な同系の要素を持つ料理の風味と中和させ、強く主張し過ぎぎみの
個性を和らげてあげるのです。貝、甲殻類を使った塩味の料理と。当然の
事ですが焼カキや焼きハマグリと。苦味の主張に合わせ、根野菜の天ぷら
を塩で。鶏肉とカシューナッツの塩炒めもこのワイン向きです。

料理がワインを引き立て、ワインが料理の味わいを更に深くする。ワイン
と料理は補完し合い、引き立て合い、お互いの存在を高め合い素晴らしい
マリアージュの世界を創り出す。だから、ワインの評価をその時にもして
欲しい。ワインはそう願っている事でしょう。