2020年8月23日日曜日

ワインは見かけによります。

6種類届いた内、白ワイン1種類と赤ワイン1種類をテイスティング
し終えましたので、今日のワインが3種類目になります。いつも通り
ラベルも中身も見えない状態にしてあるボトルをランダムに1本選び、
抜栓します。
小布施ワイナリーのワインには「DIAM/ディアム」と言うブショネ
(コルク臭)と無縁のコルクが使われていますので、ワインと接して
いる面の異臭(ブショネ)の有無を確認する必要がないのですが、念
の為、確認します。

コルクから香るのは黄色やオレンジ色の果実を思わせるトロピカルさ
で、これは赤ワインでないと推測(断定に近いレヴェルで)できます。
当然の事ながらブショネ・フリーのコルクですから、異臭は全くあり
ません。
グラスにワインを注ぎます。推測通り、白ワインです。ですが、非常
に濃く、普通ではありません。ワイン・メイキングの過程で何らかの
特別な事がある筈と考えられます。
過熟するまで収穫を待って、果皮が透き通り、黄金色になったブドウ
(エキスが豊富な)でワインを造った。白ワインではあまり行わない
果皮を果汁に浸漬しつつ発酵を進めた。醸造、熟成過程で木樽内での
空気接触(酸化熟成)が十分あった。などが考えられます。


この白ワインの外観は、貴腐ワインがまだ若々しい状態の時の様で、
画像中の2つのグラスの濃い方の様子に類する色合い、色調を呈して
います。実際の画像を撮り忘れてしまいましたので、とても良く似て
いる外観のワインの画像をWEB上で拝借しました。
いつも通り、香り、味わいをチェックする前にワインの背景、正体を
探ります。プロファイリングです。ワインの色合いが非常に濃い理由
は色々ありましたが、木樽内での空気接触(酸化熟成)が主原因では
ないと考えられます。主原因がそれならば、色調に酸化による茶系の
トーンが多少なりとも必ずありますが、このワインは緑色をわずかに
帯びた黄色からその緑色がなくなりつつある黄色で、茶系のトーンは
ありません。色の濃さからも推測できる様に半端ないレヴェルの熟度
に達したブドウで造ったワインであると考えられます。
それはグラスの内側を流れ落ちるワインの速度が非常に遅い事からも
考えられ、ワインにはエキスがギッシリと詰まっている事を物語って
います。それをテイスティングを通して確認します。

香り:特に長十郎梨の様なビターさを思わせるニュアンスがあります。
ルビーグレープフルーツの皮のビターなニュアンスもあります。硬水
を思わせるフリンティーさと生アーモンドの様なヒントがあります。
一方でワインが空気に触れると、パイン、マンゴーなどトロピカル・
フルーツの華やかさ、果蜜を思わせるリッチさが現れます。
白ワインを造るための白ブドウは、一般的にとても良く熟すと果皮に
苦味旨味の成分が多く蓄積され、それがワインへと移行します。また
果汁中の糖度が非常に高くなりますので、その糖が発酵でアルコール
に変化し、豊富なエキス分と共に、高い度数のアルコールでワインを
豊かに構成します。それをワインの流れ落ちる速度が物語っている訳
です。
味わい:落ち着いて、穏やか。膨らみ広がるラウンドさがあり、柔和
です。果実の華やかさが核になっています。アルコール度数は12,5%
と推測し、アルコールに変化しなかった糖分と共にエキス分の豊かな
存在が粘性を高め、ワインの流れ落ちる速度を遅めている様です。
酸度、ミネラリーさは控えめで、苦味のアクセントがあり、凝縮した
味わいは、やはり、非常に良く熟したブドウからならではのワインの
特徴で、外観で予想した通り、ワインは見かけによるのです。
ワインが空気に触れるに従いクリーム、カフェ・オ・レ、カスタード
プリンの様なヒントと共に、黄桃、マンゴーのトロピカルさより明確
になります。とてもリッチです。ワインを洗練させる程度にオーク樽
がワイン・メイキングで使われている様です。
貴腐ワインの様にリッチでありながら、甘さは控えめで、ホワイト・
ペッパーの様なヒントが混じりますので、甘いニュアンスのある辛口
のテイストが広がり、それが持続します。エキス分がタップリの粘度
の高い、充実した酒質のワインです。
この様な個性の豊かなワインの正体がこちら。温暖化に対処し、曽我
さんが期待を込めて栽培し始めた所、小布施ワイナリーの畑の気候、
風土に驚く程良く適応したブドウ、Petit Manseng/プティ・マンサン
で造りました。



*Domaine Sogga 2019 Petit Manseng Vendange Tardive
ドメーヌ・ソッガ2019プティ・マンサン、ヴァンダンジュ・タルディヴ

飲み頃温度:11~14度。
<コクのある、わずかに辛口>
ヴァンダンジュ・タルディヴとは、ブドウが過熟(完熟)するまで収穫を
十分に待ち、遅摘みする事を言い、収穫するブドウは非常に高い糖度で、
エキス分も豊かに備わっています。


・パイン入り酢豚
・鶏の唐揚げ、甘酢あんかけ
ワインの香りと口当たりに合わせ、これらの様な料理に合わせて頂く
と至福のマリアージュが完成します。