2020年8月22日土曜日

ブルーベリーソースがあったなら

ランダムに選んだ結果、抜栓しグラスに注ぐ(正しくは抜栓し、コルクを
チェックした時点で判ってしまうのですが)と2日目のワインは赤でした。
1種類目の白ワインと同様、グラスの中のワインと沈黙の中、真剣に向き
合い、そのワインの背景をプロファイリングします。
グラスにワインを注いだ段階でグラスから立ち上る香りである程度の背景
を知る事ができます。アロマのリッチさからは非常に良く熟したブドウで
造った事を、木樽由来の芳醇なヒントからはこの赤ワインの酒質が非常に
充実している事を推測させます。
深い色合いで、紫色からルビー色へ移行しつつある色調は熟成がある程度
進んだ事が判ります。ワインの中心部には黒みを帯びた暗赤色を感じる所
からも熟度の高い、ポリフェノールを豊富に含んでいるブドウで造った事
を推測させます。
ここまででこの赤ワインのボディーの豊かさがほぼ推測でき、実際に香り、
味わいとチェックをし、その推測の正しさを確認、証明して行きます。
香り:インキーです。パフュームです。スミレのフローラルさから高貴さ
を感じます。ブルーベリーのコンポートのヒントから果実味のリッチさを
感じます。
それらの次に樹脂やタールを思わせる芳醇さがあり、このワインの重厚さ
を推測させると同時に原料ブドウがあの品種ではないかと的を絞らせます。
更になめし皮やシナモン様のスパイシーさがあり、アメリカンチェリーや
ブラック・オリーヴなどの黒みの強い木の実のヒントもあり、ここからも
熟度の高いブドウで造った内容の充実したワインである事から造りの過程
でシッカリと木樽の要素をワインに移す事ができたと考えられます。
この赤ワインは間違いなく芳醇なボディーをしていて、果実味、木樽から
の成分、タンニン(渋味成分)を豊かに備えた深みがあり、充実した酒質
のワインであるとほぼ確定しました。それを味わいで最終確認し、ワイン
の正体を明らかにします。
味わい:ワインを口に含んだ瞬間にフローラルさ、モカコーヒーのヒント
が口中を満たし、華やかさと芳醇さの共存がそこにあります。アルコール
度数は豊かで、温かみのあるボリューム感があり、ここからも原料ブドウ
の熟度の高さが判ります。
酸度は高く、ミネラリーさも豊かながら、そのアルコールのボリューム感
と木樽からのオイリーな成分をまとったタンニンのドッシリとした豊かな
主張に包み込まれ、ラウンドさの中で相対的に低く、優しい広がりに感じ
ます。
味わいの中にもスパイシーで、タールぽさがあり、更に赤身肉にある鉄分
ぽさやジビエ(野生の動物肉)の野趣さが深みを更に増大させます。この
ニュアンスが余韻にまで力強く残存し、外観で推測した事が事実であった
と判りました。
この様な赤ワインを造るブドウをプロファイリングの時点で数種類に絞り
込んでいましたが、外観、香り、味わい、余韻から総合的に判断し、特に
決め手は、ワインの色が濃く、黒みがのある色調である事、樹脂、タール
ぽさがある事、鉄分ぽさがある事、そしてラウンドな口当たりをしている
事で、ひとつの品種をテイスティングシートに書きました。
ここでボトルを包んでいた紙をはがし、自分で決めた品種が本当にこの赤
ワインの原料ブドウなのか確認します。テイスティングは品種を当てる事
が主眼ではなく、ワインの背景、ワインの正体を探り、明らかにする事が
目的ですが、品種が当たるのはうれしいものです。
そのブドウ品種はTannat/タナ。フランス南西部、スペインとの国境付近
のエリアが原産のブドウです。品種名の由来は、フランス語でタンニンの
豊富なと言う程の意味の語に由来しています。事実、タナで造ったワイン
は木樽での長い熟成で酒質を和らげる必要があります。
時々、引用に使うワイン用葡萄ガイドに依れば、タナの赤ワインは非常に
深い色とタンニンの...スパイシーで唾液がでるほどエキサイティングな。
とあります。
この赤ワインがどれほど豊かなボディーをし、重厚で、味わい深いのかを
想像できると思います。この様な酒質のワインにはテイスティングの時に
感じたジビエの料理を合わせ楽しむのが良く、香りに感じた様に、ブルー
ベリーのソースを添えてあげればパーフェクトなマリアージュを創造して
くれるでしょう。


(あいにく昨夜はブルーベリーソースなしでしたが...)それでもTannat
には鴨のローストがナイスな相棒です。

*Domaine Sogga 2018 Vin Sans Chimie Tannat
ドメーヌ・ソッガ2018ヴァン・サン・シミ、タナ

飲み頃温度:19度。
<まろやかなフルボディー>