2020年8月21日金曜日

これもひとつのスタイル

小布施ワイナリーから届いた6種類の非発泡性ワイン(スティルワイン)
を毎日1種類ずつ大切にテイスティングしようと思い、昨夜、ランダム
に1種類を選び出し、抜栓、グラスに注いだ所、白ワインでした。
この白ワインの正体は何なのか?それを分析的観点で探って行きます。
ワインのテイスティングとは本来その様な作業なのですが、試飲会など
で前もってある程度の情報を知ってしまっている時のテイスティングと
白なのか、ロゼなのか、赤なのかさえ判らず、全く情報のない時、情報
の少ない時のテイスティングとでは根本的に大きな相違があります。
昨夜のテイスティングは曽我さんが造ったワインである。これだけしか
前提条件がない状況にし、テイスティングをしましたので、先程、言及
したテイスティングの後者の方になります。
先ず、グラスの中のワインの外観をチェックします。この段階では香り
も味わいもチェックしません。ひたすらグラスの中のワインの様子だけ
を見て、プロファイリングします。
プロファイリングとは辞書に因れば、犯人像(ワインの正体)の分析で、
経験、データなどから犯人像(ワインの正体)を推理し、人種、年齢、
生活態度など(どこの産地で、どのブドウから、どの様に造られたのか)
を特定してゆくもの。とあり、ワインのテイスティングでもターゲット
を絞り込む為、必要不可欠な作業になります。
つまり、香り、味わいをチェックする前に、プロファイリングをしない
のなら選択肢が多過ぎて、特定に至るまでの過程に迷いが生じ、無駄が
発生してしまうのです。迷いは本質を見極める目、技を狂わせます。
それでは6種類届いたワインの最初のワインのプロファイリングをして
みましょう。グラスの中のワインを息を殺し、じっと見つめ、問いかけ
ます。その思いがワインに通じた時、ワインの自己紹介が始まります。
それをどれだけ拾い上げる事ができるかがポイントです。
完全に澄み切った色を呈する外観で、明確にグリーンのトーンを感じる
色調です。これはステンレスタンクで醸造し、軽快な酒質で豊かな酸味
を持っているワインを意味しています。そしてクリーンな外観は冷涼な
産地、低温での醸造の何れか、または両方を示唆しています。
ここまでのプロファイリングで絞ったターゲットを胸に秘め、ワインの
正体に迫って行きます。香り、味わいをチェックする前に、もう一度、
外観をチェックします。
既にプロファイリングした様に一点の曇りもなくクリアな外観で、やや
薄めの色合いで、涼しそうなグリーンの色調を感じます。グラスの内側
を滑り落ちるワインの速度は早めで、粘性は大きくありません。これは
アルコール度数が高くない事を示しています。
香りです。こちらもクリーンです。ステンレスタンクで低温での発酵を
した可能性が極めて大きいと考えられます。果実、花、スパイスの香り
を感じます。
長十郎梨、グレープフルーツなど少々、苦味を感じる果実をイメージし、
ミネラリーさの強い硬水を思わせるフリンティーさがあります。グラス
を回し、ワインが空気に触れると、先程の果実のコンポート、白い花の
華やかさが現れます。またメントールを思わせる爽やかさも現れます。
木樽からの影響を受けていないワインである可能性が更に強まりました。
味わいをチェックします。苦味のアクセントを基調としています。香り
で予想した事がここで裏付けられました。軽快でアルコール度数は12%
ほどでしょう。
酸味は高め、ミネラリーさは控えめながら、軽度の苦味の広がりに生の
アーモンドや硬度の高いミネラルウォーターのニュアンスを感じます。
その次に、やはりハニー&フローラルさが現れ、アロマ豊かなブドウの
ワインがブレンドされているのではと想像します。
心地良い広がりの苦味を基調とし、硬水を思わせる骨太さがあり、その
奥に華やかなアロマがある。この白ワインはこんな感じです。
果たしてその正体は?正解はノン・オークのシャルドネ(木樽で発酵も
熟成もしていない)でした。苦味のアクセントがあり(ソーヴィニョン
・ブラン)、ミネラリーでフリンティー(シャルドネ)、そしてハニー
&フローラルなアクセントがある(リースリング)。その3種類の品種
のブレンドだと思ったのですが...。
当てる事が主眼ではないのですが、まだまだ未熟です。テイスティング
の技能は鍛え続ければ向上し続けると言われています。これからも日々
トレーニングです。
フルーティーさが前面に出ず、穏やか、フリンティーさがあり、香りの
強度は控えめ。シッカリ広がるミネラリーさがあり、甘くない。こんな
白ワインは生の魚介類、特にタコ、イカのあの苦味を感じる味わいとの
相性が抜群です。


そしてクリーンでシャープな酒質の白ワインである事から、タコ、イカ
をポン酢、あるいは塩レモンで食してあげると素晴らしいマリアージュ
を奏でてくれるでしょう。


6種類届いた曽我さんの珠玉のワイン達の1番目はこの様なワインです。
是非、お楽しみ下さい。
*Domaine Sogga 2019 Vigne Sans Chime Chardonnay
ドメーヌ・ソッガ2019ヴィーニュ・サン・シミ、シャルドネ

飲み頃温度:11~14度。
<コクのある、やや辛口>