2020年7月20日月曜日

何も知らなければキャブと判らないかも

ワインとは実に興味深いもので、同じブドウ品種で造ったとしても
ブドウが育った環境、ワインが造られた環境など、それらを総称し
専門用語でテロワールと言いますが、そのテロワールの違いにより
でき上がるワインのスタイルに違いが生まれます。
カベルネ・ソーヴィニョン/Cabernet Sauvignonと言う最も有名な
(異論がある人がいるかもしれませんが)ブドウがあります。この
ブドウからは通常、赤ワインが造られます。もちろん、果皮の色素
をどの様に使うかでロゼワインも白ワインもできますが...。
カベルネ・ソーヴィニョンの赤ワインは二つのタイプに大別でき、
一つは杉の葉、シダ、タバコなどの植物のヒントに加え、チェリー
やプラムなどの果実味があり、酸味とミネラリーさが強めに広がり、
メントールを思わせる爽やかさもあるもの。
もう一つはカシス、時にカシスリキュールを思わせるフルーティー
さがあり、植物を思わせる香りがあまりなく、酸味もミネラリーさ
も穏やかで、丸みのある口当たりをしているもの。です。
最初のタイプはフランスのボルドー地方の赤ワインに多く、二つ目
はアメリカやチリ、オーストラリアなど、いわゆるニューワールド
と総称される国々の赤ワインに多く見られます。
その違いは相性の良い料理の違いにもなり、鰻の蒲焼を食べるなら、
前者には山椒の風味があった方が良く、後者には山椒の風味がない
方がベターです。
ビーフシチューを食べるなら、前者にはローリエの風味がシチュー
にあった方が良く、後者にはローリエの風味がシチューにない方が
ベターです。ワインに植物のヒントがあるのか、それともないのか
に影響を受ける訳です。
ブドウがワインになる時、発酵や熟成に木樽を使用したなら、その
樽材が含有している成分がワインに移ります。チョコやコーヒーの
香り、オイリーな口当たりがその典型です。
今日、紹介しますカベルネ・ソーヴィニョンの赤ワインは、後者の
タイプで、更に木樽由来の成分の上品で豊かな主張があり、とても
優美な酒質をしています。何も知らずに味わったなら、カベルネ・
ソーヴィニョン(キャブ/Cab)のワインと判らない程で、メルロ/
Merlotで造った赤ワインと思うかもしれません。シルキーな広がり
のタンニン(渋味成分)の存在感は、メルロが主体のボルドー地方
のポムロル/Pomerolの赤ワインを彷彿させます。
そんな美しい酒質をしたキャブの赤ワインがこちら!!イタリア北部
ヴェネト州産で、ワイン法で認められた数少ないイタリアのキャブ
の赤ワインです。


*Anna Spinato 18 Montello Cabernet Sauvignon
アンナ・スピナート18モンテッロ、カベルネ・ソーヴィニョン
相性の良い料理:脂肪分を含んだ旨味のある料理。
チーズなら、パルミジャーノ、チェダー。
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
3,000円
Montelloは2011年に認められた原産地呼称です。
香り:カシスリキュールの華やかさ、モカコーヒーのヒントの中に
控えめに存在するシダ、タバコ、メントールのヒント。更にココア、
ミルキーなヒントが現れ、その後、ラズベリーのコンポートを連想
させるチャーミングさが全体を包み込みます。
味わい:シルキー、優雅、和みがあります。酸味、ミネラリーさは
穏やかな広がりで、タンニンは中程度、木樽からの成分と融合した
甘味旨味が豊かに、上品に広がります。
果実味、樽(恐らく新樽)からの成分、シルキーな主張のタンニン
の密に詰まったハーモニーは優美で、落ち着いた味わい深さがあり
ます。
余韻にはホワイトチョコレート、ミルクコーヒーのヒントがあり、
それらが新樽由来の成分の主張と思われ、シルキーなタンニンと共
にオイリーでふくよかなフィニッシュを創ります。このしなやかな
感覚がポムロル的なのです。


果実味が綺麗に広がり、木樽由来のオイリーさが上品に備わるこの
タイプの赤ワインは玉子の黄身との相性が実に良く、この赤ワイン
の様にエレガントな酒質の場合、味醂でシッカリ照りを付け、出汁
の風味が効いた玉子焼きは最高の相棒となります。
赤ワインに玉子焼き?本当に良く合います。まだ経験した事があり
ませんか?チャーミングな果実味があり、シルキーで、エレガント
な味わいのこの赤ワインで是非、お試し下さい。