3回連続でイタリア南部の注目すべき地場品種を取り上げましたので、
本日は北イタリアからです。北イタリアも南イタリアに劣らず、地場
品種の宝庫です。その中からバルベーラを今日は紹介します。
ワイン用葡萄ガイドによれば、バルベーラは「生産性が高く、多目的
に使う事のできる品種。.....主な特性は、葡萄がたとえ十分に熟した
としても、暑い気候の栽培地で好まれる自然な酸を充分に残すことが
できる点にある。.....原産地だと思われるピエモンテ地方では、殆ど
の年にワインの総生産量の半分以上をこの品種から造り出している。
様々な栽培地で造られるワインは比較的タンニンが柔らかく、酸度は
高いが、そのスタイルの幅は広く、軽くて酸っぱいものから若々しい
微発泡性をもたせたもの、そしてオーク樽を使用して長期間寝かせる
必要のあるパワフルで濃厚なものまで様々である。.....」と言う感じ
です。
少し補足すれば、バルベーラで造った赤ワインはフレッシュで果実味
が豊か、比較的酸味が強く、その酸味の主張で口中に熱さを感じます。
その感覚を形容し、バルベーラはCaldo/カルド(熱い)なワインだと。
カルドさはワインにより強弱がありますが、どのワインにもカルドさ
を必ず感じます。赤ワインを飲んでその味わいにカルドさを感じるの
なら、それはバルベーラのワインかもしれません。
ガイドで解説されている様に、バルベーラの赤ワインのスタイルの幅
は広く、複数本を同時にブラインド・テイスティング(ヒントになる
前情報が全くない状態で行うテイスティング)すると、これら全部が
同じ品種で造ったワインではないだろうと思う程、多様です。
今日、紹介します2種類のバルベーラの赤ワインも同時に飲み比べる
と、同じブドウ品種のワインとは全く思えない程、趣を異にします。
しかし、強弱はあるものの、どちらにもカルドさは明確にあり、この
カルドささえ感じ取れれば、どちらもバルベーラの赤ワインだと結論
付ける事が可能でしょう。
それではカルドさを感じてほしい2種類がこちら。バルベーラのワイン
の多様性を是非、実感して頂きたいので飲み比べられる様、お手頃な
価格の商品を選びました。
*Villa della Rosa 18 Barbera d'Asti
ヴィッラ・デッラ・ローザ18バルベーラ・ダスティ
相性の良い料理:脂肪分を含んだ旨味のある料理。
チーズなら、パルミジャーノ、チェダー。
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
1,500円
香り:スミレのパフュームさ、ブルーベリーのコンポートなど紫色の
ものを連想させる華やかさ。インクやリキュール様の立ち昇る
妖艶さもあります。メントール的な爽やかさが同時に備わり、
フレッシュさが引き立てられ、香りの核となっている果実味の
チャーミングさにアクセントを添えます。
味わい:ジューシー、チャーミング、ライトタッチ、そしてシルキー
なファーストアタックです。酸味は強くなく、ミネラリーさ、
タンニンの広がりも優しい。ブルーベリー様の果実味の瑞々
しさの中にそれらが溶け込み、丸く、しなやかな口当たり。
甘酸苦渋の美しい調和がとても優雅で、和まされる。
一方で、ジワジワと湧き上がるカルドさがあり、バルベーラ
の本質を感じる。但し、一貫して持続する優しさがカルドさ
をオブラートする。
紫色のイメージが口中に広がり満ちる高貴さがあり、デイリーワイン
とは思えないレヴェル。完璧に完成された香味がありますので、何も
食べずにワインだけで楽しむのもひとつの方法です。
もし、何かを口にしながらこのワインを楽しむのであれば、この酒質
に非常に良くマッチする「オタフクソース」や「テリヤキソース」で
味わいを整える料理、「出汁巻き玉子焼き」をつまみつつ、お楽しみ
下さい。
*Montej 18 Barbera del Monferrato
モンテイ18バルベーラ・デル・モンフェッラート
相性の良い料理:脂肪分の多い、コッテリとしたコクのある料理。
チーズなら、ブリー。
飲み頃温度:19度。
<まろやかなミディアム~フルボディー>
2,000円
香り:メントール、富士リンゴの外皮、サクランボなど爽やかな印象
を持つニュアンスが主体。その奥にブルーベリーを連想させる
果実味と共に深みを感じさせる皮革やスパイス(特にシナモン)
のヒントがある。
味わい:ファットさ、ラウンドさ、温かみあるふくらみがあり、高い
アルコール分を含むワインであると感じる。酸味はやや高く、
ミネラリーさも十分にあり、タンニンは多め。
果実味のリッチさの中の丸い主張のタンニンには甘味旨味が
シッカリと伴い、温和なアルコール分の厚みと共に味わいの
深みをアフターにまで持続させる。
そこにはカルドさとは異なる温かさがあり、このワインには
カルドさがないのかと思いきや、柔和さ、しなやかさの中に
内包されていたカルドさが目覚め、これもまたアフターへと
進む。
ファットさに中に創られる果実味とタンニンのハーモニーには深みが
あり、一般的なバルベーラのワインとは一線を画す酒質。シルキーで
ラウンド、そして、落ち着いた穏やかなフィニッシュにはカルドさが
アクセントを添え、ホット。
このワインの最大の特徴であるフィニッシュのホットさが相性の良い
料理を選ぶ決め手になります。「ピッツァ・マルゲリータ」ならば、
「レッド・ペッパー」を振りかけ刺激的な味に、筑前煮」ならば、
「七味唐辛子」を振りかけ刺激的な味にしてあげるとパーフェクトな
マリアージュを奏でてくれるでしょう。