Soave/ソアーヴェに行きたい。もう一度、行きたい。絶対にいつか
また行きたい。それがかなった時はレンタサイクルで大自然の中を
疾走するのも良いな。
この「いつかまたpart2」ではソアーヴェに実際に行った気になって
みましょう。ソアーヴェは前回、Veneto/ヴェネト州(北イタリア)
にあるとお話ししました。ロミオとジュリエットの舞台で有名な街、
Verona/ヴェローナからローカル電車で僅か20分ほどのS.Binifacio
/サン・ボニファチオが最寄り駅で、この駅からソアーヴェ村までは
徒歩で約30分です。
ソアーヴェ村を中心としたエリアで、村名と同じ名前の白ワインが
造られています。ソアーヴェは元々は丘陵地、小山の畑でブドウが
栽培され、ワイン造りが行われていました。
生産量を増やす為、平野部にも畑が拓かれ、そこで育まれたブドウ
でもソアーヴェが造られる様になると、酒質にばらつきが出始め、
斜面の畑のブドウで造った内容の充実したワインに対し、平坦地の
畑のブドウで造ったワインは香味が比較的穏やか(悪く言えば平板、
水っぽくメリハリがない)で、ソアーヴェと一括りにするのは問題
ありの状況となりました。
その解決策として、丘陵地や小山の傾斜地に元々あった畑で育った
ブドウで造るソアーヴェを区別する為、Soave Classico/ソアーヴェ
・クラッシコ(模範的な、由緒あるを意)と言う原産地呼称を造り、
平坦地のワインと差別化を図ります。
最も著名なクラッシコのエリアはサン・ボニファチオ駅の北側正面
にあり、ソアーヴェ村の背後地になります。ヴァーチャル・ツアー
では駅をスタートし、北上、Monteforte d'Alpone/モンテフォルテ
・ダルポーネ村から小山、と言っても歩いて登ると結構、険しい、
を登り、道中にあるブドウ畑を散策、山を下り、ソアーヴェ村へと
進み、ソアーヴェ城を望みつつ、駅に戻ってみましょう。
ソアーヴェ・クラッシコの産地訪問ですが、先ず、出迎えてくれる
のはお手頃価格で高品質のスプマンテ(スパークリングワイン)を
市場に送り出す生産者、Riondo/リオンドのワイナリーです。中に
入っていませんので外観からの想像ですが、超近代的な設備があり、
クリーンな環境で、クリーンなワイン造りをしていると思います。
実際、彼らのワインを味わうとその想像が正しいと証明してくれる
酒質をしています。黒カビの生えた壁、薄暗い部屋、そんな環境で
ワインを造る事は今や非常識ですから。
リオンドの建物を左に北へ進みます。多くのワイン産地で言える事
ですが、結構、家があるのにほとんど誰にも会いません。皆、どこ
にいるんだ?と言いたいくらい静寂の世界が広がっています。
緩やかな小道を進んで行くと民家の間に小さな畑が点在しています。
0,5haもなく、手入れするのに少々気合が必要な家庭菜園の大きさ
ほどと言えます。
ブドウ畑と言うとどんな光景を思い浮かべますか?日本ですと棚状
にブドウ樹が仕立てられ、実は頭上に生る。これが一般的ですし、
馴染みある光景でしょう。でも、多くの場合、これとは異なる光景
がワイン産地には広がっています。
ブドウの樹を仕立てるのは自分の好き勝手にしている訳ではなく、
明確な理由があります。雨が多い、保水性の高い土壌で湿度が高い。
この様な時は、病害虫によるダメージを避ける為、ブドウの葉や実
が地面から離れている事が望まれます。だから日本では棚仕立てが
多いのです。
これからブドウ畑の広がる光景の中を進んで行きますが、畑ごとに
見える光景が違います。この違いは畑の所有者が違う、畑の管理者
が違うからである事が一般的で、それに加え、畑の地勢や土壌の質
なども違いを作る要因です。
同じ産地なのに、隣接した畑なのにそこに広がる光景にそれぞれの
特徴があり、他との違いがある。これは大局で見れば、専門用語で
言う所の「テロワール」。ワインのヴァリエーションの豊かさは、
このテロワールにも一因があります。
この辺りの住宅地の中に点在するブドウ畑はこんな感じです。何か
気が付く事がありますか?1枚の畑の様に見えますが、ブドウの樹
の仕立て方が2通りあります。樹が低く、地面からそう遠くない所
に枝が伸びている仕立て方と棚までは行きませんが、かなり高い
位置に枝が広がっている仕立て方です。
2通りの理由が考えられます。一つは、2人の所有者がいて、栽培に
対する考え方の違いが仕立て方の違いになっている。もう一つは、
テロワール(風通し、土壌、日照)の違いで仕立て方が決まった。
どちらでしょうか?それは今、判りません。今度、再訪する機会が
あった時、聞いてみる事にします。
住宅地を過ぎるとモンテフォルテ・ダルポーネ村に入って行きます。
ここではブドウ畑の中に民家が点在する風景へと変わります。いよ
いよワイン産地に来たな。と言った気分になります。
の畑の手前の方のブドウ樹の仕立て方とほぼ同じ仕立て方(こちら
のエリアの方の樹はやや高め)のブドウ畑の光景が広がります。
山の裾野に畑がありますので、斜面から流出して来た土が堆積して
います。結果、粘土質の混じる土壌となり、保水性が比較的高く、
地表の湿度が高めになりますので、それに対応し、枝が高めになる
様に仕立てられています。
ここもクラッシコの原産地ですが、平坦地の畑ですので、レベルの
高いワインを造る為に低収量で、ブドウの選果をより厳しくする事
が求められそうです。
もっとも優れたソアーヴェ・クラッシコの誕生地は畑の後方にある
小山の中(傾斜地)にあります。一度、住宅地に戻り、小道を右折
し、山の中へと登って行きます。
写真でお判りの様に、この日は超が付く程の好天で、強い日差しに
干乾びてしまいそうになりながら、高温(猛暑に近い)の中、頂を
目指しました。
比較的なだらかな斜面に拓かれた畑に植えられたブドウ樹は日の出
からの陽光をシッカリと浴びられる様、東向き(イメージとしては
顔を東に向け、両手を広げると、東からの陽光をタップリと身体に
浴びられる感じです。)
斜面が東向きの為、西に傾いた太陽の陽がこの面には差しません。
だから、陽が差す時間に最大限の陽を浴びられる様(生育、光合成
の為)その様な植樹になっています。
こちらの畑も東向き。先程の畑から100mほど登った所にあります。
樹が細いので、樹齢が先程の畑の樹より若いと言えます。
向かいの山へと視線をずらすと、山間の平坦地にも、向かいの山の
斜面にもブドウ畑が広がります。これこそがワイン・カントリー。
こんな天気の良い日に自転車で巡ったなら最高です。
また少し登りました。ここに見える畑のブドウの樹の列は今までと
少々、違います。手前から奥に向かうと、列が右にカーブして行く
のが判ります。これはこの畑が東向きから南東へと向きが変わって
行く事を意味し、列の向きが曲がって行く事で常に陽光を正面から
受け止める事ができる様に配慮しているのです。
頂に近くなって来ましたから、斜面の傾斜がきつくなって来ました。
頂に到着です。山間のブドウ畑の間を走る道はたいてい未舗装です。
そして車1台分の広さしかなく、この画像の道には路肩がありますが
ない場合も多く、車で走る時は脱輪に最大限の注意を払わなければ
なりません。幸いにもまだ一度も脱輪をした事がありませんが。
頂にあるこちらの畑は植生栽培をしています。土壌の水分蒸発防止、
土壌の流出防止、益虫の宿確保など理由があります。この植生栽培
をしている場合、大抵の場合、オーガニック(有機農法)であると
言えます。
ここから先はソアーヴェの村に向かい、下って行きます。頂にある
最後の畑です。ここも植生栽培で、仕立て方も同じ、同じ所有者、
同じ栽培者の畑が続いている訳です。
小道に沿って左側にはオリーヴの樹が生えています。ブドウ畑の横
にオリーヴの樹、イタリア中部南部では一般的ですが、ヴェネト州
(イタリア北部)ではあまり一般的な光景ではありません。温暖な
中部や南部に一般的なオリーヴの樹がここにあると言う事は、この
地がいかに陽光に恵まれた地なのかを物語っています。
Wine person/ワイン・パーソン、そしてOlive oil person/オリーヴ
・オイル・パーソンの人にとってはたまらない風景です。
山を下り始めてすぐの所からサン・ボニファチオの駅やヴェローナ
の方面を望む位置にいます。緩やかな傾斜の南南西向きの斜面に畑
があります。
陽光をタップリ浴びられる様、カビが発生しない様に風通しを良く
する様、非常にきめ細かく手入れされた畑です。遠方の光景と共に
開放的でナチュラルなシーンを構成しています。
ソアーヴェ(原産地呼称)の地は石灰質、火山性土壌が主なのです
が、画像の真ん中やや右にピンク色っぽい所が見えるでしょうか?
これは石灰岩の切り出し場です。
ヨーロッパのワイン産地の多くは石灰質、石灰岩であり、有名な白
ワインのChablis/シャブリ、スパークリングワインのChampagne
/シャンパーニュの故郷もそうで、その地にも切り出し場があります。
石灰岩と言うと白っぽいと思いがちですが、ヨーロッパではピンク
色ぽい事も結構あります。
更に下ると、オリーヴ・オイル・パーソンにとってテンションMax
の風景が現れます。ブドウ畑の中にオリーブ畑が登場です。これが
あると言う事は、やはり陽光が豊かで温暖、雨量が比較的少ない地
であると改めて証明された訳です。でも、本当にヴェネト州でこの
光景が見られるなんて驚きです。
もう直ぐでソアーヴェ村の位置に下って来ました。この畑は西向き
です。人が顔を西に向け両手を広げ立っている。そんな様子を想像
し、この畑にいる。それが真にこの畑のブドウの樹たちです。
東からの陽光(午前中の)よりも、西からの陽光(夕刻の)の方が
エネルギーが大きく、ブドウの実への影響(日焼け、希望を超えた
過熟)の危険があり、西向きの畑でブドウを育てる時は葉を日よけ
に使うなどして慎重な管理がより一層、必要になります。
ソアーヴェ村の中心街です。昼時ですが、ワイン産地の街は本当に
人がいません。彼らは必要な時以外は外出しません。Stay st home.
日頃から実践しています。Sustainable/サステイナブル(持続可能
な)精神が根付いています。これは私たち日本人が大いに学ぶ必要
のある精神です。
明るいのに電気をつけている。用もないのにドライヴする。値段が
安いからと言って遠くの店にわざわざ買い物に行く。これ、みんな
サステイナブルな人がしない事です。COVID-19で新しいライフ・
スタイルを取り入れました。この際、更にサステイナブルな生活も
取り入れてみては如何でしょうか?
このソアーヴェ村のど真ん中にソアーヴェ・ワインのトップ生産者
であるPieropan/ピエロパンがあります。この画像が彼らの建物の
外観で、道路に面した1階の部屋は売店になっています。この建物
の奥(裏)に別の建物があり、そこが醸造所です。
著名な生産者のほとんどはアポなしでは会ってくれません。この日
は彼らを訪問する予定ではありませんでしたので、アポなしです。
そんな事は承知の上で、折角、ここにいるのだからと呼び鈴を押し
ましたが、無反応。
再プッシュしていると通りがかりの女性が「彼らは朝、出かけたよ。
会いたいなら約束しとかなくては駄目だよ。」と。判っていました
が...。
ワイン産地を訪れる時、2つの方法で、その地を理解する様にして
います。
生産者と約束し、彼らの案内でワイナリーや畑を実際に訪ね、彼ら
の事を奥深く学ぶ。
誰とも会う約束をせず、レンタカーで走って、歩いて、産地を探検
する様に巡り、その産地全体のテロワールを自分の感覚で捉える。
これを組み合わせると、その地の理解度はパーフェクト・レヴェル
にまで高まります。
寂しいですが、ソアーヴェ村を後にし、駅に向かいましょう。この
ソアーヴェ村で最もお気に入りの場所がここです。ワインで生計を
立てている村らしく村を守る門にはこんな装飾が施されています。
古のブドウ圧搾機、そして上にはソアーヴェ・クラッシコのワイン
瓶です。ワイン村、ソアーヴェ。観光地訪問も良いですが、この様
なワイン村を訪れ、ゆったりとした時間をリラックスして過ごす。
そんな楽しみ方も異国の地でしてみては如何ですか?
ソアーヴェ村中心地の外に出ました。ここから村を見渡すと中世に
タイム・スリップした感覚になります。かつて村を守っていた壁の
上にはソアーヴェ城が見えます。
日本でも城下町に行けば、悠久の歴史を感じますが、それとは趣を
異にする感覚をヨーロッパの歴史ある村では覚えます。これは隣の
芝は青く見える程度の憧れなのか。それとも...。
ソアーヴェ村の中心からだいぶ遠ざかりました。それでも尚、一面
ブドウ畑です。この画像は、ここからソアーヴェ村ですよと言って
いるのですが、これを見て驚く人がいるかもしれません。こんな道
で時速50キロで?これ普通です。センターラインがこの道にあった
なら、標識は70になっています。ところ変われば文化、習慣は違う。
海外へ行く事の醍醐味はそれを感じる事です。
更に進みます。そろそろ原産地呼称、ソアーヴェ・クラッシコの地
が終わります。約12km、3時間の徒歩での探索。レンタカーを運転
しての探索では感じ取れないものをシッカリと見聞しました。
計画するのでしたら、是非、相談して下さい。役立つ情報、助言を
差し上げる事ができると思いますので。
また行くぞイタリア。その時まで待っててくれよ。Ci vediamo!!