2020年6月21日日曜日

Negiciant / ネゴシアン?

「ネゴシアン/Negociant」と言う単語を聞いた事がありますか?辞書に
依れば、「卸売業者、卸売商、仲買業者」と言う程の意味のフランス語
です。
ワインの世界ではその意味の他に「ワインを買い付け、自社ブランドの
ラベルを張り、そのワインを流通させる業者」をも意味します。これは
高品質のワインをお手頃価格(コスト・パフォーマンスに優れる価格、
状態)で売りたい。こんな思いから誕生したのがネゴシアンのシステム
です。
ブドウ畑を持たない、醸造所を持たない、持つのはワインをブレンドし、
瓶詰めし、ラベルを張り、商品をストックしておくスペースのある建物
です。
畑を持てば、栽培にかかる費用、固定資産税などが発生します。醸造所
を持てば、建設費、維持費、やはり固定資産などが発生します。事実、
ワイナリーの建設は億単位の資金が最低限必要ですし、醸造設備も相当
の資金を要します。それらが減価償却費として商品のコストを引き上げ
ます。
ネゴシアンのシステムでなら1,500円で売れるワインを供給できるが、
ブドウを栽培し、ワインを造り、販売者にワインを供給するなら、その
ワインは3,000円にも、4,000円にもなってしまいます。
ですから、ネゴシアンと言うシステムは、消費者の為には理にかなった
存在なのです。しかし、一部にはネゴシアンのワインが品質で劣るとか、
ブドウ栽培からワイン造りまで一貫して行ったワインでなければワイン
ではないなどと言う人がいて、ネゴシアンの存在がおとしめられている
事もしばしばです。
それの最たるものが、「Domaine/ドメーヌ神話」です。ドメーヌとは
フランスのブルゴーニュ地方でブドウ栽培、ワイン造り、ワインの流通
を一貫して行う生産者の事で、ブルゴーニュにはネゴシアン業者もいる
のですが、ブルゴーニュワインはドメーヌものでなければダメだと多く
の人に多くのワイン消費国で言われています。ここ日本もドメーヌ神話
を創り上げた最たる国のひとつです。
でも、よく考えて。目の前に高品質のドメーヌ・ワインとネゴシアン・
ワインがある。品質に差がないのなら、どちらを選びます?4,000円と
1,500円です。自分で買うなら、1,500円のネゴシアン・ワインです。
そして、当店で売るのなら両方と言いたい所ですが、やはり、1,500円
のネゴシアン・ワインです。
今、日本のワイン市場で購入者が買う1本当たりの平均単価は大都会で
2,000円ほど、地方都市で1,500円ほど、当店のある太田市の様な田舎
では1,000円前半(ワイン専門店なら)で、スーパーやコンビニならば
1,000円に満たないでしょう。
4,000円のワインを在庫した所で商売になりません。そのワインは不良
在庫になる可能性大です。そうしたら身銭を切って自分で飲むしかない。
だから消費者の皆様の為にも、店の為にも、ネゴシアン・ワインは必要
不可欠なのです。


当店は1997年に開業しましたが、開業以来、販売し続けているワインが
あります。そのワインはネゴシアンのシステムで商品化され、超を付け
たくなる程、驚きの高品質をしています。
自分が勝手に言ってるだけではありません。海外のワイン生産者を訪問
する時に土産として必ず持って行き、プレゼントするのですが、日本人
と違い、プレゼントされたものはその場で中から取り出し、多くの場合、
そこで抜栓し、味わってくれます。そしてその時の反応はワインの品質
に驚いている。間違いなくそうです。実際、帰って来る感想も、驚きに
満ちたコメントばかりですから。
そのワインを当店に供給してくれているのが群馬県中之条町にある塚田
農園です。「良いものを安く」を第一に考え、ネゴシアンとしてワイン
ビジネスに参入しました。先々代からのビジネスですから、もしかする
と日本に於けるネゴシアン第1号かもしれません。
優良な生産者から高品質のワインを仕入れ、自社のセラーで少々、熟成
させた後、思い描く酒質になる様、複数のワインをブレンドし、香味が
落ち着くまで再び熟成、洗練させます。
ネゴシアンなんて誰かが造ったワインを買って、ただ瓶詰しているだけ
だろ。と言われそうですが、そんな単純な作業ではありません。複数の
ものを合わせ、ひとつのものを誕生させる。それはただ混ぜ合わせる事
を意味しません。
1+1=2ですが、ワインのブレンド作業は失敗すれば、1と1を足しても
2にすらならない。成功すれば、3にも4にもなる。マジックの様な作業
です。
ブレンド(ワインも、香水も)には持って生まれたセンス、タレントが
必要です。誰もが簡単にできる技ではありません。ネゴシアンの凄さは
ブレンド能力の高さにあります。
ワイン造りこそ行っていませんが、ネゴシアンにはその様な高度の技量
が必要と考えた時、ドメーヌの方が上位でネゴシアンの方が下位などと
考える事がいかに不条理かお判り頂けるでしょう。
開業以来、23年間、販売し続けている群馬県内瓶詰ネゴシアン・ワイン
を日頃から味わって頂きたいと同時に、県外の方へのお土産の品として
ご利用頂ければと思います。


<白ワイン>
*Vin de Luxe Blanc / ヴァン・ドゥ・ルクス・ブラン
相性の良い料理:柑橘類の酸味や青みの薬味、ハーブが良く合う淡白な
味わいの料理。チーズなら、シェーヴル(山羊乳)タイプ。
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな辛口>
1,500円
<赤ワイン>
*Vin Regulier Rouge / ヴァン・レギュリエ・ルージュ
相性の良い料理:脂肪分を含んだ旨味のある料理。チーズならチェダー、
パルミジャーノ。
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
1,300円
*Vin de Luxe Rouge / ヴァン・ドゥ・ルクス・ルージュ
相性の良い料理:脂肪分を含んだ旨味のある料理。チーズならチェダー、
パルミジャーノ。
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
1,500円
赤ワインの説明が全く同じになっていますが、酒質の違いは明確にあり
ます。渋味(タンニン)の含有量はほぼ同じです。ヴァン・レギュリエ
はベリー果実を思わせる果実味が美しく広がります。その要素も感じる
ヴァン・ドゥ・ルクスですが、更に香辛料を思わせるスパイシーな香り
があり、そこから引き締まったニュアンスを感じます。香りの構成要素
が多いヴァン・ドゥ・ルクスには味わいの深みをより感じます。
それ故、マグロと一緒に楽しむのなら、ヴァン・レギュリエには赤身を、
ヴァン・ドゥ・ルクスには中トロを。動物肉とならヴァン・レギュリエ
はフィレ、ヴァン・ドゥ・ルクスはロースが良いでしょう。
ただ、それですと料理の味わいが不明です。あくまでも食材の脂肪分と
赤ワインの味わいとの相性に言及しただけで、料理の味わいにまで対応
できていません。
そこで、もっと明快で簡単なペアリングのさせ方がこちら。中濃ソース
で食すならヴァン・レギュリエを。ウスターソースで食すならヴァン・
ドゥ・ルクスを。
山椒、七味、ペッパーを振りかけて食すならヴァン・ドゥ・ルクスを。
振りかけないで食すのならヴァン・レギュリエを。
これで塚田農園のワインと相性の良い料理とのマリアージュが完成です。
群馬県内で瓶詰されている驚きの品質のワインを是非、味わって下さい。
その品質の高さに必ず驚くはずです。


上の建物内でブレンド、瓶詰を行っています。中に入っての見学はでき
ません。外から中を覗き見る事はできます。