なら、かなり多くの人、いや大部分の人がSoave/ソアーヴェと答える
のではないでしょうか。
今でこそ多くのイタリア白ワインがこの日本でも手に入りますが、この
業界で働き始めた1989年頃には輸入された辛口白ワインなら、フランス
のシャブリやボルドーとイタリアのソアーヴェくらいしかなく、その他
の白ワインを見かける事はほとんどありませんでした。
地方に行けばワインを飲んだ事がない人もいましたし、ソムリエなどと
言う単語、職業がある事すら知らない人が大勢いたほどですから。当時
ワインは特別な飲み物でした。東京でさえ、レストランやホテルで飲む
ものと思われていました。
そんな状況は少しずつ変化して行きましたが、大きく変わったのはあの
快挙の瞬間からでした。1995年5月、田﨑さんがヨーロッパ人以外では
初めての世界最優秀ソムリエになった事に因ります。
それ以降、飲み物であるワインが多くの日本人の意識の中に存在する様
になりました。ソムリエの存在が知られる様になりました。大都市では
カジュアルな飲食店でもワインを楽しめる様になりました。色々な事が
ワインに関しては変わりました。
それでも今から思えば、ワイン文化の成熟度(ワインの品質に対しての
意識)は低く、極論を言えば自分を含め、ワインなら何でもOKと言った
感じでした。
あれから変わりましたか?消費量は大きく変わった訳ではありませんが、
ワインに対しての意識は大きく変わりました。これは日本人だけでなく
欧米の人たちも。
例えばソアーヴェと言う白ワイン。日本に於けるワイン文化の黎明期を
支えていた訳ですが、当時のソアーヴェと言えば、水代わりに飲める、
水の様にスイスイ飲める、などと言われる有様で、実際、そんな飲み方
をされていた事を覚えています。
日本に来ているソアーヴェがそんなタイプだったのか。それとも当時は
その様なタイプのソアーヴェしか造られていなかったのか。恐らく後者
の状況だったと思います。
イタリアに関しては1980年代に一部の生産者が高品質のワインを造る事
に意欲を示し、次々と驚くべき品質のワインを誕生させました。それが
全土に広がるのはまだ時間がかかりました。
↓原産地呼称ワイン、ソアーヴェは黄色っぽいエリアが、ソアーヴェ・
クラッシコはオレンジ色ぽいエリアがワイン法で指定された産地で、緑
のエリアが新たにソアーヴェ・スペリオーレに割り当てられた産地です。
ソアーヴェでは2000年頃に品質重視の傾向が強まり、前回紹介しました
ソアーヴェ・スペリオーレが誕生します。これによりソアーヴェ全体の
レヴェルが大きく向上し、かつての水代わりに飲める、水の様に飲める、
と形容するのが適当なソアーヴェに出会う事が滅多になくなりました。
当時のソアーヴェしか知らない人が今、ソアーヴェを飲んだらその驚き
は筆舌に尽くし難いでしょうし、今のソアーヴェを知る人は当時そんな
酒質のソアーヴェが一般的だったなんて信じられないでしょう。
ソアーヴェはソアーヴェ村を中心とした13の村に広がる産地で誕生する
白ワインです。そしてソアーヴェ村と山を挟んで東側にあるMonteforte
d'Alpone/モンテフォルテ・ダルポーネ村に広がる元々あった産地では
Soave Classico/ソアーヴェ・クラッシコと言う格上の別の原産地呼称
の白ワインが誕生します。今日、紹介のワインはこの原産地呼称ワイン
です。
原産地呼称ワイン、ソアーヴェが一般的に誕生する平坦地とは異なり、
ソアーヴェ・クラッシコは傾斜地が主産地になります。良質なブドウを
作るには平坦地よりも傾斜地の方が良く、多くのワインがそうですが、
生産量を増やす為に産地を広げると、それは元々あった産地よりも条件
が劣る地(平坦地や水はけが比較的良くない)に畑を拓かなくてはなら
ない現実があります。その為、別呼称のクラッシコを制定して、単なる
ソアーヴェとは異なる、品質が優れると明確化したのです。
ない現実があります。その為、別呼称のクラッシコを制定して、単なる
ソアーヴェとは異なる、品質が優れると明確化したのです。
恐らく、水代わりに飲める、水の様に飲める、と言ったソアーヴェは今
もあるでしょう。しかし、ソアーヴェ・クラッシコには絶対と言っても
過言でなく、その様なタイプのワインはない筈です。また、前回紹介の
Soave Superiore/ソアーヴェ・スペリオーレにも。
↓ピエロパン所有の傾斜地に拓かれたブドウ畑からソアーヴェ村を望む
ですから、水代わりに飲むのでなければ、水の様に飲むのでなければ、
皆様にはソアーヴェ・クラッシコを飲んで頂きたいと思います。どうせ
飲むのなら、この生産者のソアーヴェ・クラッシコを。
*Pieropan 2018 Soave Classico
ピエロパン2018ソアーヴェ・クラッシコ
相性の良い料理:柑橘類の酸味や青みの薬味、ハーブが良く合う淡白な
味わいの料理。チーズなら、シェーヴル(山羊乳)タイプ。
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな辛口>
2,000円
香り:白い果肉の果実、白い花をイメージさせるハニー&フローラルさ
に満ちています。そこにミントやメントールのヒントが加わり、涼しさ、
清々しさを感じます。
味わい:一点の曇りもない爽快さに気分がリフレッシュさせられます。
酸味は豊かで、ミネラリーさも豊富、クリーンでシャープな主張に爽快
さが一層、引き立ちます。
清涼感いっぱいのリフレッシングなフィニッシュに柚子塩コショウや塩
レモンで食す淡い味わいの料理がとても良く合います。
・ホタテ貝のフライを塩レモンで
・鶏のささみ焼きを柚子塩コショウで
こんな料理がピエロパンのソアーヴェ・クラッシコの良き相棒です。