物事を単にイメージだけで決め付けてはいけません。付き合ってみたら
とても素晴らしい人だった。そんな経験をした方も多くいるでしょう。
ワインと料理、食べ物の関係でも同じ事が言える場合が多々あります。
ワインを飲みながら一緒に食べるなどと思いもしない様な料理、食べ物
は誰にもあるはず、もしかするとあったはず(実際に試してみてワイン
と合う事が判ったので、なくなった。)です。
長い年月、ワインと様々な料理、食べ物との相性研究をして来た当店の
結論を言いますと、「どんな料理、食べ物にもマリアージュするワイン
が必ずある。」です。
枝豆にも、キムチにも、栗きんとんにも、味付けメンマにも、日本そば
にも、苺のショートケーキにも、何にでもです。
今日は日本人のソウル・フードとも言える誰もが大好きな出汁巻き玉子
焼きをいくつかのタイプに分け、それぞれに合うワインを紹介します。
玉子焼きなんかにワインが合うのかって?やってみれば解ります。至福
のマリアージュとは真にこの事だと。
先ずは玉子焼きですが、砂糖を入れて作る必要はありません。入れない
方がベターです。ただ、煮切りみりんを使い、照りと甘味旨味を出す事
をお忘れなく。また、焼き加減は、玉子焼きの内部に半生の部分がある
のがベストです。
それでは本題に入りましょう。玉子焼きはプレーンのもの、刻んだ分葱
を入れたもの、煮穴子や鰻の蒲焼を入れたものの3種類にそれぞれ合う
ワインのタイプと今、当店で買えるお勧めのワインを紹介します。
・中心部が半生のプレーン玉子焼き
この様な玉子焼きには果実味が華やかでリッチな濃さのある赤ワインが
とても良く合います。普通、料理とワインの相性の良さがなぜ生まれる
のかを理論的に説明できるのですが、玉子と赤ワインの関係を見た場合、
不思議と合うのですと言うのが率直な意見です。
黄色と赤色ですので、合いそうもありません。両者に香味の共通項さえ
ない訳ですし。でも、本当に不思議な事ですが、実に良く両者はリンク
し、素晴らしいマリアージュを奏でます。
こればかりはやってみて下さい。そうすれば、中心部が半生のプレーン
玉子焼きとフルーティーでリッチな香味の赤ワインがマリアージュする
事が判ります。と言うしかありません。ウソではありませんので、是非、
試してみて下さい。
そして、中心部が半生のプレーン玉子焼きに合わせ楽しむお勧めの1本
がこちら。
*Black Velvet 2017 Bali
ブラック・ヴェルヴェット2017バリ
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
2,500円
Alphonse Lavallee/アルフォンス・ラヴァレと言うバリ島のオリジナル
品種で造ってあります。メジャーなブドウで例えますとシラーで造った
赤ワインの香り、ピノ・ノワやガメイで造った赤ワインの味わいと言う
感じに仕上がっています。
紫色の花や果実を思わせる華やかさ、シルクの様な滑らかな口当たり、
果実味と渋味(タンニン)のきめ細かな融合からの甘味旨味が玉子焼き
と至福のハーモニーを創造します。
・中心部が半生で細かく刻んだ分葱を入れて作った玉子焼き
この様な玉子焼きにワインを合わせる時のポイントは分葱の香りに注目
する事です。既に述べました様に、フルーティーでリッチな香味が必須
ですが、加えてハーブを思わせる香りがその赤ワインにある必要があり
ます。
その様な赤ワインの多くは、カリフォルニア、オーストラリア、チリ等
のいわゆるニュー・ワールド・ワインに多くあります。赤ワインの原料
ブドウの品種はCabernet Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョンで、
出来れば100%カベルネ・ソーヴィニョンが良いでしょう。
中心部が半生で細かく刻んだ分葱が中に入っている玉子焼きに合わせて
楽しむお勧めの1本がこちら。
*Terra Vega 2018 Cabernet Sauvignon
テラ・ヴェガ2018カベルネ・ソーヴィニョン
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
900円
原料ブドウ由来のハーブ香が強過ぎず、玉子焼きの中からほのかに香る
分葱のヒントとタイトに調和します。
↓この玉子焼きとの相性はいまいちでした。みりんの成分が効いていま
せんでした。(スーパーで購入)
・煮穴子や鰻の蒲焼を巻いた玉子焼きで穴子や鰻の周りが少々半生
この様な玉子焼きにワインを合わせる時のポイントは穴子や鰻の血合い
のヒントに注目する事です。この野趣さは料理とワインを結びつける際
の重要な要素です。
ワインと料理のマリアージュ完成をさせる時、両者にどれ程多くの共通
する要素が備わっているのかに注意を払います。プレーンな玉子焼きに
合う赤ワインでは香味がシンプル過ぎます。分葱の香りに合わせ選んだ
赤ワインでは香味の波長が異なり過ぎます。
野趣さのある赤ワインとはどの様なワインなのでしょうか。原料ブドウ
に由来する場合と、熟成で得たブーケ(熟成香)に由来する場合、また
それら2つが融合している場合にその赤ワインに野趣さを感じます。
原料ブドウで見ますと、Merlot/メルロ、Syrah/シラー、Tempranillo/
テンプラニージョなどから出来る赤ワインに野趣さを感じます。当然の
事ですが、フルーティーでリッチな香味が備わっている事も必須です。
煮穴子や鰻の蒲焼を巻き、その周りが少々、半生の玉子焼きに合わせて
楽しむお勧めの1本がこちら。
*Visokii Bereg 2017 Syrah
ヴィソーキ・ベリェーグ2017シラー
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
2,500円
シラーから生まれる赤ワインの多くは、とても華やかなフローラルさと
フルーティーさがあります。そして、球体の様にどこにも引っかからず
喉をすり抜けて行くしなやかさがあります。この様なワインが玉子焼き
に合う基本スタイルです。加えて、シラーの赤ワインにはそれらの要素
の奥に赤身肉を思わせるニュアンスの香味が潜んでいます。これがこの
種の玉子焼きに合う必要な条件です。
赤ワインのつまみとして最も意外で、しかし最も素晴らしいハーモニー
を奏でてくれる食べ物のひとつである玉子焼き。この機会に躊躇せず、
マリアージュにトライしてみて下さい。