2020年2月20日木曜日

Sekt/ゼクトとは?

ワイン文化が深く根付いていない国では発泡性ワイン(スパークリング
ワイン)をシャンパンと言ってしまう人がとても多くいます。残念です
が、この日本でも状況は同じです。
発泡している(炭酸ガスを含有している)ワインは英語ならSparkling
Wine/スパークリング・ワインと言います。スパークリング・ワイン
には様々な産地のものがあり、例えば、Champagne/シャンパーニュ
(英語でシャンパン)はフランスのシャンパーニュ地方で造られる炭酸
ガスを含有しているワインですので、スパークリング・ワインです。
この様な言い方をしてみましょう。「シャンパーニュはスパークリング
・ワインですが、スパークリング・ワインはシャンパーニュではない。」
どうですか?ピンと来ませんか?
つまり、シャンパーニュはスパークリング・ワインの一つの種類であり、
シャンパーニュ=スパークリング・ワインですが、逆のスパークリング・
ワイン=シャンパーニュは常に成立するとは限りません。
スパークリング・ワインの代表格とも言えるシャンパーニュ。いやいや
違うよ。と言う方もいらっしゃるでしょう。それはその通りです。私も
そう言いたい一人ですから。
シャンパーニュと同格、あるいはそれ以上のスパークリング・ワインは
世界各国、様々な産地で造られれています。イタリアならFranciacorta
/フランチャコルタやTalento/タレント、スペインならCava/カヴァ。
ドイツならSekt/ゼクト。などなど。
今日はそれらの中でもゼクトに焦点を当ててみたいと思います。ゼクト
は発泡していないワインを酵母、糖分と共に瓶詰し、その瓶内で発酵を
行い、炭酸ガスを含有するワインへ変化させたスパークリング・ワイン
の一種です。
この瓶内発酵でスパークリング・ワインを造る製法はシャンパーニュも
同じで、フランチャコルタ、タレント、カヴァもその製法で造られます。
この本格的な伝統的製法で造られるスパークリング・ワインは炭酸ガス
のアタックが強いのですが、クリーミーと表現できる様なきめの細かさ
があります。
その中でもゼクトがユニークな存在として人気があります。それは多く
の伝統的製法のスパークリング・ワインがChardonnay/シャルドネや
Pinot Noir/ピノ・ノワと言ったブドウで造られるのに対し、ゼクトは
ドイツのオリジナルのブドウ、Riesling/リースリングで造られるもの
もあり、香り、味わいが他と大きく異なり、とても個性的だからです。
リースリングは果皮の色が紫色ではない白ブドウですから、非発泡性の
ワインも、発泡性のワインも白しかできません。そして、発泡している
していないに関わらず、アロマが豊かで、酸味とミネラリーさの広がり
を基調とし、果実味が上品に凝縮した味わいをしています。
この様なタイプはシャルドネからも、ピノ・ノワからも生まれなく、真
にリースリングならではの個性、風味になります。輝きが高く、黄金色
をし、黄色い果実(かりん、黄リンゴ、パインを思わせる)の香りに、
黄色やオレンジ色の花(ユリ、バラ、キンモクセイを思わせる)の香り
も感じます。
この様な香りのリースリングのワイン(発泡性も非発泡性も)には甘酢
あんの料理(酢豚)、トロピカル・フルーツを使った食べ物(ピッツァ
・ハワイアン)、柚子を使った淡い味わいの料理(キスの天ぷらを柚子
塩コショウで)がとても良くマリアージュします。


ここに2種類のゼクト(どちらもMittelrhein/ミッテルラインのトップ
生産者、Ratzenberger/ラッツェンベルガーの)があります。左側は
鮮やかな濃い黄色でリッチな印象、右側は僅かにベージュのトーンが
あり、比較すると色合いは薄めです。
さあ、どちらがリースリングのゼクトでしょうか?リースリングから
出来るワインの色のイメージは黄色。だから答えは左のワインです。
見た所、どちらも白のゼクトに見えますが、右のゼクトは何故、黄色
だけでなく、ベージュの色調も感じるのでしょうか?白ワインなのに
ベージュの色調を感じる時、そのワインは果皮の色が紫色の黒ブドウ
で造った白ワインの可能性があります。
黒ブドウは果皮の色をワイン造りに使わなければ白ワインになります。
巨峰を食べた時の事を思い出してみて下さい。皮を剥いて食べます。
そうすると指が紫色に染まります。剥いた時に果汁が垂れます。その
果汁は白です。白い果汁に紫色の果皮を浸漬せず果汁に果皮の色素を
移さなければ白ワインになる訳です。ただ、僅かに色素が果汁に染み
出しますのでそれがベージュの色調としてワインに感じられる訳です。
黒ブドウ(Noir/ノワ)から造った白ワイン(Blanc/ブラン)。これ
をBlanc de Noir/ブラン・ド・ノワと言います。
ブラン・ド・ノワの特徴は外観だけでなく、香りと味わいにもあり、
多くのブラン・ド・ノワのワイン(発泡性、非発泡性に関わらず)は
苺ミルクを思わせるチャーミングな香り、穏やかな酸味でシルクの様
なしなやかな口当たりをしています。
映画、PRETTY WOMANの中で苺を食べながら白のシャンパンを飲む
シーンがありましたが、それがブラン・ド・ノワであったのなら良い
調和をしたでしょうが、もしそうでなかったなら...。
苺、ラズベリー、アセロラ等の果実と、あるいはそれらを使った料理
食べ物に合わせるのなら、香りの波長が同じですので、ブラン・ド・
ブラン、またはエレガントなタイプのロゼのスパークリング・ワイン
がお勧めです。
ワイン(発泡性、非発泡性のどちらも)と料理の相性の良さを決める
最重要要因はどちらにも同系の香りがある事。リースリングに甘酢、
パイン、柚子が合うのも、ブラン・ド・ブランに赤い果実が合うのも
お互いの香りがマリアージュするからなのです。
今週末から3連休。柚子塩コショウで食べる料理、酢豚、ピッツァ・
ハワイアンを食べながらリースリングのゼクトを、その後、苺を食べ
ながらブラン・ド・ノワのゼクトを楽しんでみては如何ですか?
*Ratzenberger 14 Riesking Sekt Burt
 ラッツェンベルガー14リースリング・ゼクト・ブリュット
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな辛口>
4,000円
*Ratzenberger 10 Blanc de Noir Brut Sekt Brut
 ラッツェンベルガー10ブラン・ド・ノワ・ゼクト・ブリュット
飲み頃温度:8~10度。
<軽く、まろやかな、やや辛口>
4,000円