2018年6月17日日曜日

このスパークリングワインは何を語る

ワイングラスを凝視し、その中に入っているワインの色合い、
色調などをチェックしている様を見た事があるでしょう。これ
は何をしていると思いますか?
この作業には色々な目的がありますが、その主たる目的は目前
にあるワインの素性を探る、推測する事です。ワインの原料は
ブドウです。そのブドウがどんなブドウなのか。そのブドウが
どんな背景(育った場所や環境)を持っているのか。ブドウが
ワインへと姿を変える際にどんな道を辿って来たのか。この様
な事を考え、グラスの中のワインは恐らくこんなワインだろう
と一先ず決め付ける訳です。その後、香りをチェックしたり、
味わいをチェックしたりし、結論を導き出す。これがワイン・
テイスティングです。


それでは上の画像の2種類のワインを見てどの様な事が判るで
しょうか?気泡が立ち上り、ワインのエッジ(縁)にその層が
出来ていますのでこのワインはスパークリングワインだろうと
(その前にワインか否かが問題ですが...。ここでは予めワイン
ですと前提条件を提示してある事にします。)考えられます。
次にワインの色調を観察し、左はピンク、ベージュのトーンが
あり、右は僅かにベージュがかっているものの黄色の色調です。
同じワインではないだろうと考えられます。
ワインの色は原料ブドウの果皮の色素がワインへ移行した結果
ですので、ベージュのトーンを感じると言う事はブドウの果皮
にそのトーンを生み出す色がある訳です。
ブドウは果皮の色で大きく3つに分けられます。果皮が黄色や
緑色のブドウは白ブドウ、果皮が紫色や黒っぽい色のブドウは
黒ブドウ、そしてピンク色や灰色ぽい色の果皮のブドウはグリ
ブドウと言います。
白ブドウからベージュのトーンは生まれませんので、上の画像
の2種類のワインは黒ブドウやグリブドウで造った、あるいは
黒ブドウやグリブドウも使って造ったと推測できるのです。


答えを言いますが、2種類のスパークリングワインは上の画像
にあるPinot Noir/ピノ・ノワと言う黒ブドウを主体に造って
いて、スパークリングワインの元になるワインを造る際に果皮
の色素がそのワインへ移行し、ベージュのトーンを強弱はあり
ますが、共に備えた訳です。
解り難いかもしれませんが、巨峰を思い浮かべてみて下さい。
巨峰の皮を剥くと果肉も果汁も白ぽく皮だけ紫色です。そして
指もその紫色に染まっています。指に付いたこの色がワインの
色となります。
黒ブドウを圧搾すると白ぽい果汁が採れます。そこに紫色の皮
を漬けておくと果汁が染まって行き、最後は紫色になります。
途中で果汁から皮を取り出せば、ピンク色ぽい果汁で、それを
ワインへと変化させればベージュのトーンがある外観のワイン
になる。こう言う事なのです。


2種類のスパークリングワインは実は同じ生産者の同じワインで
なぜ違いがあるのかと言いますと、スパークリングワインとして
完成した商品になった時期が異なるのです。上の画像が2種類の
スパークリングワインで、左がベージュのトーンが強いワインが
入っていたボトル、右がベージュのトーンが弱いワインのボトル
です。
左のラベルにはMar 2018と右のラベルにはMay 2016と記載が
あります。これは市場に流通できる(商品化された)時期の意
で、専門用語でDegorgement/デゴルジュマンと言います。
シャンパーニュなど複数のスパークリングワインが発泡のない
ワインを瓶に入れ、そこに酵母と糖分を加え、瓶内で炭酸ガス
を捕捉する発酵を行い、発泡したワインにする瓶内2次発酵製法
で造られています。
その際に発酵の副産物としてオリが出ます。このオリを取り除き
コルクをし、コルクが飛び出ない様に針金を掛け、シールを付け
商品として完成です。このオリを取り除く作業がデゴルジュマン
で、デゴルジュマンの時期が異なれば中のワインは同じではない
ですし、仮に元々、同じワインであったとしても、瓶内でオリと
接触しながら熟成をしている間にワインは絶えず成長しますので
デゴルジュマンの時期が異なればワインの状態も異なる事になり
ます。


こちらが本日紹介致しますスパークリングワインです。インド
のSula Vineyards/スラ・ヴィンヤーズが造ったエレガントな
酒質の逸品です。
現在、販売しているのはMar 2018デゴルジュマンの商品で左
のベージュのトーンが強い外観をした方です。赤みを帯びた
果実の明確な香りがあり、アセロラ、サクランボ、ラズベリー
をイメージでき、味わえば軽やかでしなやか、優しく和みある
酒質をしています。エレガントさの極のスパークリングワイン
是非、味わって頂きたい逸品です。
*Sula Tropicale Brut/スラ・トロピカル・ブリュット
相性の良い料理:素材の持つ優しい甘味を生かした軽やかな
        味わいの料理。チーズなら、モッツァレッラ。
飲み頃温度:8~10度。
<軽く、まろやかな、やや辛口>
3,000円