2017年9月2日土曜日

魚介類と合わせるのなら更にもう一歩

白ワインは含んでいる酸味の性質で大きく2つのタイプに分ける事
が出来ると前回お話ししました。ブドウ由来のリンゴ酸がワインに
含まれ爽やかさを感じるタイプ、製造過程でブドウ由来のリンゴ酸
を乳酸菌の働きで乳酸に変えた丸みを感じるタイプの2つです。
リンゴ酸は温度が低いとその良さを明確に主張しますので、5度や
8~10度にワインを冷やして、柑橘類の要素のある味わいの料理と
共に楽しむと良く、乳酸は低過ぎない温度の方が旨味を明確に主張
しますので、ワインを11~14度や15~18度の温度帯にして、乳酸
の旨味のある料理と共に楽しむと良かったのでした。
私達日本人の好きな魚介類にカキがあります。カキには白ワインと
言われていますが、それではあまりにも大雑把な説明表現です。生
で食すのか、焼くのか、シチューにするのか、グラタンにするのか、
出来ればそこまで気にしてほしい所です。
肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインと言う考え方がこの日本
には定着してしまっていますから、その鉄則に従って生の魚介類を
食しつつ白ワインを飲んだ時、生臭さが表現し難いまでに強調され、
料理もワインも全然楽しめなかった経験はありませんか。
この現象が発生する最大の理由は相違する香りの衝突に因ります。
酸味の性質とは別の視点で白ワインを捉えた時、果実や花、植物を
思わせる香りのあるタイプとそれらに加え、ローストした食べ物を
思わせる香ばしい香りのあるタイプの2つがあります。
白ワインの製造過程を簡単に見てみますと下の画像の様になります。
既に述べた2つのタイプはどこでそうなるのでしょうか。画像の中
行程中でしたら、ステンレスタンクなのか木樽なのか、この段階が
その違いを生みます。



ステンレスタンク中でワインを醸造、熟成するとブドウからワイン
へと移行した成分、香味がブドウが本来持っていたもの以下にも、
以上にもなりません。
一方、木樽で醸造、熟成しますとブドウが持っていなかった成分が
ワインに付加され、ステンレスタンクを使用したワインとは決定的
に相違する香味を備えたワインになります。木樽由来の成分が香味
を形成するのです。それはバター・ピーナッツ、カシューナッツ、
アーモンド、トースト、ビスケット、コーヒー、チョコレートなど
を連想させるロースティーなヒントであったり、ナチュラルチーズ
やクリームなどを連想させるミルキーなヒントであったり、粘性の
ある口当たり、コクであったりします。
色々な事象に当てはまると思いますが、相性の良さはお互いに共通
する要素がある事から生まれます。人間なら趣味が同じ、考え方が
同じ、食べ物なら酸味の性質が同じ、香りが類似する所から相性の
良さが生まれます。
生の魚介類には焼いたり、炒めたりした魚介類の風味はありません。
魚だから白ワインだよねと思い、刺身に木樽熟成した乳酸の旨味が
あるコクのある白ワインを合わせたなら、香りの波長が全く合わず
そこに不協和音が生まれ、違和感ある生臭さ、心地の悪さが出た訳
です。
白ワインと魚介類料理を合わせ楽しむなら、カキを例にとりますと、



生カキならリンゴ酸とミネラルの豊かな主張のある辛口白ワインが
良く、リンゴ酸の主張が強いのでしたらカキにレモンや酢橘をかけ
食すのがベターです。


焼きカキなら火が入る事で香味が凝縮し、香ばしさとミルキーな
ヒントが出ますので、乳酸の主張に旨味、コクを感じる白ワイン
が良く、もちろん辛口で、焼きカキには乳酸と反発するリンゴ酸
の要素を加えない事(レモンをかけない、ポン酢をつけない)が
必要です。


カキのグラタンにするのなら、香ばしさとミルキーさが更に明確
になりますので、既にお話しした様な木樽からの要素がハッキリ
と判る芳醇な香味の辛口白ワインがベストです。
この様に同じ食材でも調理方法の違いにより、合わせるワインが
変わって来ます。白ワインを魚介類の料理に合わせ楽しむ時には
今回はカキを例にとりましたが、これをそのまま他の食材に活用
出来ます。これからは白ワインと魚介類料理とのより素晴らしい
マリアージュを実践してみて下さい。