完璧な自然条件が整った時、遥か遠くにモン・ブランを目視できる
ヴュー・スポットが山頂にあるMont Brouilly/ブルーイィ山。この
山を見上げる地にDomaine/ドメーヌ(ワイナリーと言う程の意味)
を構え、この地ならではの香味を湛えた珠玉の赤ワインを造り出す
のがDom.du Pavillon de Chavannes/ドメーヌ・デュ・パヴィヨン
・デ・シャヴァンヌです。
ドメーヌの正門からブルーイィ山を見上げるとその斜面にブドウ畑
が広がっています。パヴィヨン・デ・シャヴァンヌの所有する畑は
そこにあり、Cote de Brouilly/コート・ド・ブルーイィと言う呼称
の赤ワインを造っています。
こちらが正門からブルーイィ山を見上げた画像です。ドメーヌの塀
に沿って走る道路がこの山の中腹よりやや下方となります。原産地
呼称ワインのコート・ド・ブルーイィはその道路の上方のエリアと
この山の裾野に沿って山を囲む様に走る道路の内側のエリアが対象
となっていて、外側は前回のブログで取り上げた別の原産地呼称の
ワインが誕生するエリアになっています。
標高477mのブルーイィ山の山頂に近い畑はこの様な地勢に拓かれ
水はけの良い、日照を十分に受けられる環境にあります。しかし、
この傾斜ですから畑仕事は重労働です。
ワインの誕生する背景を知ると好き勝手な事を言ってワインを批評
する様な軽率な行動をとるものではないと思わずにいられません。
車一台が通れる道を隔て上下に畑がありますが、様子が異なる事が
判りますか。上の畑のブドウ樹は古木で、下の畑のブドウ樹は若木
です。
ブドウの樹も生き物ですから当然、寿命があります。樹齢15年程に
なるとワインを造る為の高品質なブドウを育める様になり、その後
20~30年間、その状態をキープし、それ以降は少しずつ産出量を
減らして行き、役目を終わらせます。樹齢100年のブドウ樹がある
畑もありますが、多くの場合、樹齢50~60年程で若木へと改植する
様です。
パヴィヨン・デ・シャヴァンヌの若木の畑は高樹齢によりブドウの
実の生産性が衰えた為に改植したとの事でした。改植のタイミング
はそればかりではありません。樹が病気に侵された時、旱魃や雹、
浸水などの自然の猛威で樹が枯死してしまった時などは勿論、改植
します。
改植した若木の畑はこの区画だけで、その畑の下には幹の太い樹
が植わっている畑が見えます。その先に目を向けますと林を挟み
2つの建物が見えますが手前がパヴィヨン・デ・シャヴァンヌの
ドメーヌです。
ドメーヌのワイン熟成庫がこちらです。歴史を感じます。木製の
大樽、しかも長年使いこんだ古樽はワインが持つ天然成分の酒石
が内側に付き、ワインと木が触れ合わない事、また長年使った事
で木に含まれている成分が減少し、木に含有されていた成分での
ワインへの影響がなくなるなど、ワインの熟成をある意図を持ち
行う際に好都合となります。
その意図とは微量の空気との緩やかな接触により酸味、タンニン
(渋味)を和らげ、香味を洗練させると同時に原料ブドウ由来の
ナチュラルな成分に余計な要素を添加させない為にステンレス製
のタンクでもなく、木の成分がワインへと流出してしまう新しい
木樽でもなく、大きな古樽を使う事でワインへ余計な成分の添加
を防ぐ事です。そして何故、大きな樽かと言いますと、小さい樽
は木とワインの接触する比率が高まり、空気接触に加え、木から
の成分がワインへと移行し易くなる為、その現象を回避する目的
で大きい樽、しかも古樽を使用するのです。
次回はパヴィヨン・デ・シャヴァンヌのコート・ド・ブルーイィ
と隣接する原産地のワイン、ブルーイィ(生産者は別になります
が)のワインを紹介します。