2017年6月18日日曜日

訪問記:山の斜面と麓では

隣同士の畑なのに畦をひとつ隔てただけで同じブドウを育てても
出来た実の性質が同じでない事があります。これをワインの世界
ではテロワールの違いが生み出したと言います。テロワールとは
解りやすく言えば自然環境の違いが生み出したワインの多様性、
相違と言った感じでしょうか。
畦ひとつを挟み土壌、地勢が異なり、その結果、気象条件に差異
が出る事によりブドウの生育環境が異なり、同じ品種であっても
実が持つ性質が異なる訳です。違いが違いを生み出すのです。
5月に訪問したフランスのボージョレ地方北部に広がるCrus des
Beaujolais/クリュ・デ・ボージョレ地区はテロワールの違いで
10の原産地に区分けされています。そして、それぞれの原産地で
そのテロワールを反映した多様なワインが誕生しています。
10あるクリュ・デ・ボージョレのワインの中でイメージを沸かせ
つつ、テロワールの違いが生むワインの相違を最も理解し易いと
思われるのは最南端にあるBrouilly/ブルーイィとその原産地の中
にあるCote de Brouilly/コート・ド・ブルーイィの比較でしょう。



上の画像がブルーイィの原産地とコート・ド・ブルーイィの原産地
です。ブルーイィは山裾(丘と言った方が正しいかもしれませんが)
コート・ド・ブルーイィは山の斜面が原産地です。
この山はMont Brouilly/ブルーイィ山で標高は477mあり、山頂から
の眺めは最高で、この地のベスト・ヴュー・ポイントと言われ、稀
ですがスイスのモン・ブランも見える事があるそうです。


コート・ド・ブルーイィ(斜面)とブルーイィ(麓)を分ける基準
は斜面と麓と言う地勢によるよりも土壌の違いによる所が大きく、
コート・ド・ブルーイィは上の画像の様な青っぽい色をした花崗岩
を含んだ土壌で、ブドウにミネラリーな性質をもたらします。


ブルーイィの土壌は同じ花崗岩質の土壌であっても、上の画像の様
に茶色ぽい岩の風化土で、コート・ド・ブルーイィの土壌よりも実
に果実味と柔らかさをもたらすと言われています。
実際に、同じ生産者、同じヴィンテージのコート・ド・ブルーイと
ブルーイィのワインで比較してみますと、前者の方がストレートな
香味の広がりを見せ、後者の方はより和らぎを感じます。


上の画像はそれら2つのワインが誕生する地の境界線を目視でき、
ほぼ中心に引かれてある赤いライン(道路そのものなのですが)
の向こう側がブルーイィで手前がコート・ド・ブルーイィです。
同じ様に見える風景の中に広がる畑であっても、土壌の質が明確
に異なり、同じ品種のブドウの実が持つ要素に差異が出て、結果
そのブドウから出来るワインの香味に違う個性を感じる。ワイン
の奥深さがそこに凝縮されているかの様です。
次回はこの地を語るならこの生産者を語らずに済ませる事は不可
で、実際にその生産者を訪問した時の様子をアップします。画像
右下の建物へ次回は行ってみましょう。