Beaujolais/ボージョレ地方のほぼ真ん中から北側に広がるエリア
が原産地となるCrus des Beaujolais/クリュ・デ・ボージョレはワイン法でこの地方最上位のワインに位置付けられ、土壌、地勢、
気候などの違いにより10の呼称がある赤ワインです。10の異なる
呼称のあるクリュ・デ・ボージョレは全てGamay/ガメイと言う
ブドウで造られるのですが、一括りにして語る事が出来ないほど
多様です。
訪問記を始める前にそれら10のクリュ・デ・ボージョレを簡単に
説明し、訪問記内での話をイメージし易くする為の予習をしたい
と思います。但し、ひとつの原産地呼称の中にもワインは10の
クリュ・デ・ボージョレの様に多様性がありますので、大まかな傾向としてお考え下さい。
それでは10のクリュ・デ・ボージョレを北から南に向けて順に
説明して行きます。
Saint Amour Bellevue/サンタムール・ベルヴュ村の南側に扇の形
の様に広がるエリアでサンタムールと言う原産地呼称の赤ワインが
誕生します。
聖なる、聖人(Saint)、愛(Amour)、つまり聖なる愛、愛の聖人
と言った意味を持つワイン(原産地呼称)だけあって、恋人同士の
イヴェントに相応しいワインとされています。酒質はスウィートな
2人をイメージ出来る様なフルーティーでジューシー、エレガント
な事が多い様です。
Julienas/ジュリエナはサンタムールの南西に広がり、ジュリエナ村
と周辺の3つの村を含むエリアで誕生する赤ワインです。ジュリエナ
はユリウス・カエサル/Julius Caesarに由来すると言われています。
サンタムール同様、エレガントな酒質をしていますが果実味がより
明確でリッチさを感じる事が多い様です。
Chenas/シェナはジュリエナの南に広がり、シェナ村とその東に
あるla Chapelle de Guinchay/ラ・シャペル・ド・ガンシェ村に
またがるエリアが原産地の赤ワインです。
10あるクリュ・デ・ボージョレの中でブドウの栽培面積もワイン
の生産量も最小です。「ビロードの籠に入れた花束」の様と形容
される酒質は柔らかで繊細な口当たりをしている事が多い様です。
Moulin a Vent/ムーラナヴァンは原産地呼称ワインのシェナの
南東に広がるエリアで誕生する赤ワインです。ムーラナヴァン
と言う村はなく、原産地の中程の丘の上に15世紀に建てられた
風車(製粉機/Moulin、風/Vent)に由来し、そう名付けられた
と言われています。
10あるクリュ・デ・ボージョレの中で最も芳醇な酒質で、長期
の熟成を経て初めて真価を発揮する赤ワインとして別格の扱い
を受けています。
Fleurie/フルーリーはムーラナヴァンの南西に広がるエリアで
誕生する赤ワインです。フルーリー村がその中心にあり、畑は
村を囲むように広がっています。
フルーリーは「花の咲き乱れる」と言う程の意味で、その名を
付けたのは古代ローマの兵士と言われています。フルーリーの
赤ワインは10あるクリュ・デ・ボージョレの中で最も優美で、
「クリュ・デ・ボージョレの女王」と評されています。
Chiroubles/シルーブルはフルーリーの西側に広がるエリアで
誕生する赤ワインです。このエリアの中心にシルーブル村が
あり、畑は村を囲む様に広がり、小高い丘の斜面にあります。
標高が高いと言う事は気温が低いと言う訳で、その様な環境
で育まれたブドウから出来上がるワインはフルーティーさと
ジューシーさに満ち、繊細な酒質をしている事が一般的です。
シルーブルの赤ワインが「Glisser en Bouche/喉を滑る」と
形容される事からもその酒質を容易に想像できます。
Morgon/モルゴンはフルーリーとシルーブルの南に広がる
エリアで誕生する赤ワインです。ナポレオン3世が小集落
を統合して創った村Villie Morgon/ヴィリエ・モルゴンと
その南にあるMorgon/モルゴン村をそれぞれ囲む様に畑
が広がっています。
ロシュ・プリ/Roche Pourie(風化した岩)を含む粘土質
の土壌からはMorgonne/モルゴンヌと形容されるこの地
ならではの香味を備えた赤ワインが出来上がります。長期
の熟成に耐え、ムーラナヴァンと共に別格のクリュ・デ・
ボージョレと考えられています。
Regnie/レニエはモルゴンの南西に広がるエリアで誕生する
赤ワインです。10のクリュ・デ・ボージョレで最も新しい
原産地呼称ワインです。
Regnie Durette/レニエ・デュレット村とその西にある村
Lantignie/ランティニエが対象エリアですが、畑が広がる
のはレニエ・デュレット村の周りになっています。
レニエの赤ワインは軽やかで優美な酒質である事が多いの
ですが、モルゴンに近いエリアは土壌に類似性がある為、
モルゴンに似た芳醇な赤ワインも誕生します。
Brouilly/ブルイィはモルゴンとレニエの南に広がるエリアで
誕生する赤ワインです。10あるクリュ・デ・ボージョレの
原産地の中で最も南にあり、ブドウの栽培面積は最大です。
ブルイィの原産地は最大の面積を有す為、Cercie/セルシエ村
とその南にあるSt.Lager/サンラジェ村、セルシエ村の真西に
あるQuincie en Beaujolais/カンシエ・アン・ボージョレ村、
他3村の計6村にまたがっています。
これだけの広範囲ですから、自然条件が多様となり、同種の
ガメイであっても備える個性に差異があり、出来るワインに
ヴァリエーションが出ます。一般的には繊細なフルーティー
さがありますが、北部エリアのワインにはエレガントさが、
南部エリアのワインには丸みが感じられると言われています。
最後にCotes de Brouilly/コート・ド・ブルイィです。この
原産地はブルイィのほぼ真ん中に小高くそびえる標高477m
のMont Brouilly/ブルイィ山を囲むエリアで、この山の中腹
位から裾野にかけて畑が広がる地で誕生する赤ワインです。
このブルイィ山はボージョレ地方の東側を北から南に流れる
la Saone/ソーヌ川を創った時に掘り出した土を巨人が置き
この山になったと伝えられています。
ブルイィの赤ワインはコート・ド・ブルイィの赤ワインより
コクと深みがあると言われ、同じ造り手がどちらの赤ワイン
も造っている場合、飲み比べると確かにその事が言えます。
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同じ生産者が造った同じヴィンテージの10種のクリュ・デ・
ボージョレがもしあったなら、それら10種の赤ワインを比較
テイスティングして、違いを実感してみたい。そんな贅沢を
当店主催のワイン会でいつか実現させます。