2016年11月24日木曜日

驚きはいつも意外な所からPart3

ロシアは極寒の地でしょうか?確かにその様なエリアもあります。広大
な国土がヨーロッパから日本の直ぐ近くまで広がり、それ故、自然環境
は多岐に渡ります。永久凍土に閉ざされたシベリア、冬季には極寒の
地になるサンクト・ペテルブルクやモスクワ、比較的マイルドな気候を
保つ黒海沿岸エリアなど。
私達のある事に対するイメージは多くの場合、ある事が持つ幅広い中
の極にあるものになりがちです。ロシアは極寒の地だからワイン造りと
無関係、ブラジルは熱帯の大密林地だからワイン造りと無関係と言った
具合に。
しかし、現実を直視してみればロシアからもブラジルからも驚きの品質
のワインが多数誕生し、世界のワイン・ラヴァーを熱狂させています。
ロシアで驚きの品質のワインを誕生させているエリアはどこにあるので
しょうか。それはロシア国内で年間を通じ比較的マイルドな気候を保つ
黒海沿岸のエリアです。





上の画像中に赤丸があります。そこはKrasnodar/クラスナダールと言う
ロシア南部の中心都市で、ロシア・ワインの造り手のほぼ全てがこの地
の周辺に集まっています。現在、当店で販売している9種類のワインの
全てがそこで誕生しています。
クラスナダールは北緯45度に位置しています。この北緯はワインの世界
ではどの様な状況なのでしょうか。45度ラインを西に進むと、今、非常に
高品質でありながら、比較的低価格のワインが数多く造り出されている
として大注目のルーマニア、そしてイタリアの銘醸地ピエモンテ、更には
フランスのブルゴーニュやボルドーと言った著名な産地があり、ワインに
とって大切なエリアであると言えるでしょう。




Hong Kong International Wine and Spirits Fair/香港国際美酒展で
出会った驚愕の品質のロシア・ワインはそのクラスナダールとは
原産地を異にしていました。
その産地はCrimea/クリミア。クラスナダールをほぼ真西に行った
所にある半島です。それならロシア・ワインではなく、ウクライナ・
ワインじゃないの?そんな疑問を抱くでしょう。国際的には今でも
クリミアはウクライナですから。
この問題は非常にデリケートで簡単に持ち出し、語り合う事を慎む
のがベターですが、何度も訪れた事があり、ロシアは故郷の様な
地ですので、その立場で簡単に解説します。
クリミアはロシアにオリジンがあります。そこの住民はロシア人が
約60%、ウクライナ人が約25%、他は多民族で構成されています。
オリジンがロシアにある事、ロシア人が圧倒的多数を占めている
現実はその地をウクライナではなく、ロシアだと考えるのが自然と
する人がいるのです。
これは非常にデリケートな事ですので、当事者以外は言及しない
事がベストな対応です。そこに住む当事者がクリミアはロシアと
言っているのですから、その考えを尊重し、話を聞く、話を進める
事が必要です。





ロシアに滞在した際には可能な限りロシア産ワインをチェックして
来ました。甘味を残した赤ワインが主流であった時も知っています
し、フランスワインの影響を受け、甘味を残す事を排し、造られた
ボルドータイプの赤ワイン、ローヌタイプの赤ワイン、ブルゴーニュ
タイプの白ワインへとシフトした時代もシッカリと見て来ました。
そして、その様にシフトし、それらの品質が飛躍的に向上して来た
流れも見て来ました。しかし、その変革は更にスピードを上げ進み
つつあったのです。
上の画像のPinot Noir/ピノ・ノワから造られた赤ワイン、下の画像
のSauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランから造られた白のアイス
ワインは今まで知っていたロシア・ワインの範疇を越え、異次元の
世界へ到達してしまっていました。
赤ワインと白ワイン、辛口ワインと甘口ワインの違いはありますが、
どちらにも共通しているのは「美しさ」、様々な要素のパーフェクトな
調和、角々しさのない優しさです。
クリミアの地のポテンシャルなのか。この造り手のタレントなのか。
理由は一つではなく、複合の結果と思いますが、それにしても凄い
と一言で片づけられるレヴェルではありません。





クリミアは複雑すぎる問題を抱えている為、色々な障害が発生して
います。原産地クリミアの商品は現在、日本へと輸入する事が不可
となっています。こんなにも素晴らしいワインがあるのに。
経済制裁はいつ解除になるのでしょうか。それは誰にも判りません。
解除が近い将来、行われた際にはこのワイナリーのワインを是非、
インポーターに輸入してほしい。今はただそう強く願っています。