2016年11月22日火曜日

驚きはいつも意外な所からPart2

1968年に米を原料にArac/アラックと言う蒸留酒(日本で言う米焼酎の
様なアルコール飲料)を造り始め、1994年には島の北部で育んだブドウ
でワイン造りを始めたHatten Wines/ハッテン・ワインズ。Hong Kong
International Wine and Spirits Fair/香港国際美酒展で出会った驚きの
品質のバリ島産ワインを造る2つのワイナリーの片方です。
ワイン造りとはおよそ無縁の地、バリ島で何もない道を切り開き、幾多
の困難、挫折を乗り越え、この地のパイオニアとしてワイン造りに従事
して来たハッテン・ワインズにはそれだけでも大きな敬意を表するべき
ですが、彼らが造り出した今のワインを味わうなら、パイオニアだから
と言う理由で敬意を表するだけではない事が明確に判ります。




インドネシアと言えば、ジャングル、スコール、海に囲まれた島々。これ
が多くの方がイメージする事で、ワインとは全く無縁の地です。しかし、
どこにでも不可能を可能にしてやろう、新しい常識を創り上げようと志す
人がいます。それがバリ島ではハッテン・ワインズでした。
熱帯に属するインドネシア、バリ島ですが、この気候条件がワイン造り
にアドヴァンテージを与えます。雨季と乾季の2つの季節が明確にあり
乾季の概ね5~10月には湿度が高くなりません。これがポイントです。
雨が少なく、乾燥し、十分な日照がある乾季。この期間にブドウを栽培
すれば高湿度下の病害虫によるダメージを受け難く、その結果、良質
のブドウを手に入れる事ができます。良質のブドウは良質のワインを
造り出す。これは常識ですので、例え熱帯性気候の地であっても良質
のワインが誕生するのは必然です。
同じ様な気候帯にあるタイではGran Monte/グラン・モンテやHua Hin
Hills/フア・ヒン・ヒルズが既に世界基準のワインを誕生させ、新常識
を打ち立てています。
赤道に近い南緯8度付近に拓かれたハッテン・ワインズのブドウ畑は
強い陽射しによるブドウの実の日焼けを防ぐ為、風通しを良くし低い
湿度を保つ為、そして作業効率を考え、ブドウの樹を棚仕立て(樹
を高く仕立て、葉を屋根の様に茂らせ、その下にブドウ実がなる。)
にしています。熱帯エリアのブドウ畑はこのスタイルが主流です。




先日であったハッテン・ワインズの驚きの品質の2つのワインがこちら
です。先ず白ワインのAga White/アガ・ホワイトです。アガとは現地語
で本物の、信頼すべきと言う程の意味で、この白ワインを味わうなら
アガと名付けた訳が自ずと判ります。
Belgia/ベルジアと言うMuscat of Alexandria/マスカット・オブ・アレキ
-サンドリアの仲間のブドウで造られ、白い花や白い果実のクリーン
でチャーミングな香りに満ち、爽やかで清々しい気持ちにさせられる
味わいをしています。
白いパラソルの下で真っ青な海と空、鮮やかな緑の木々を見ながら
味わえば最高の気分になれるでしょう。




そしてこちらがPino de Bali/ピノ・ド・バリです。未発酵のブドウ果汁と
グレープ・スピリッツ(ワインを蒸留したもの)をブレンドし、7年以上の
木樽熟成で酒質を洗練させました。
メープルシロップを思わせる華やかさ、芳醇さに満ちています。妖艶
なとはこの様な香味の事を指すのでしょう。こちらは浜に打ち寄せる
波の音、時々聞こえる風に揺れる木々の葉、夜の帳が降りたそんな
静けさの中、シットリと味わいたい逸品です。




ピノ・ド・バリはSolera System/ソレラ・システムと言う特殊な製法で
造られました。この製法はスペインの代表的なワイン、Sherry/
シェリー(Vino do Jerz/ヴィノ・ド・ヘレス)造りに用いられる製法で
3段or4段に積み上げた木樽でワインを熟成し、一番下(ソレラ)の
樽からワインを一定量取り出し、瓶に詰め、その分を上の樽から
ソレラの樽へ注ぎ足すます。減った分を上から下へと注ぎ足して
行きますので、樽の中のワインは平均すると下に行く程、古くなり
ます。
ピノ・ド・バリは7年以上熟成を経ています。それは一番下(ソレラ)
の樽の中のワインが7年の熟成を経ていると言う事で、この商品
が完成するまでに多くの時間、手間がかかる訳です。
パイオニアとしてバリ島のワインを常識の世界へと押し上げて来た
ハッテン・ワインズ。その進んで来た道はどれ程、過酷だったのか。
バリ島でこんなにも素晴らしいワイン達が誕生するのは何故か。
香港国際美酒展で聞いた事だけではない筈です。真実は現地に
もっと隠れているでしょう。来年、現地での再会を約束しています
ので、その時に全てを明らかにしたいと思います。