2016年8月10日水曜日

修道院とワインⅣ

オーストリアの首都ウィーンとハンガリーの首都ブダペシュトは高速列車
で3時間程で結ばれています。両首都のほぼ中間にGyor/ジュールと言う
ハンガリー第3の工業都市があります。ジュールは11世紀から交易都市
として栄えたと同時に宗教の中心地でもあった歴史的な街としても有名で
落ち着いた重みのある雰囲気が漂う街並が印象的です。
この街からそう遠くない所にハンガリー最古の修道院が丘の上に立つ街
Pannonhalma/パンノンハルマがあります。パンノンハルマ修道院はチェコ
からやって来たベネディクト会の修道士によって996年に建てられました。
修道院の建つ丘は、パンノニアの聖なる丘と呼ばれ、丘にはラヴェンダー
が咲き誇るエリアがあり、熱心な教徒だけでなく、美しい風景を楽しみたい
観光者も多く集います。




そして、この地が有名なのは修道院に併設された醸造所がハンガリーで
最高レヴェルとされるワインを造り出している事にも因ります。300m程の
頂きに建つ修道院、丘の麓にはかつてのブドウ畑、醸造所を忠実に再現
した博物館があり、博物館とは反対側の斜面の中腹には現在の最高の
水準を誇る設備を持つワイナリーがあります。上の画像の中の赤い矢印
の辺りです。
修道院の醸造所と言えば、古を感じる重々しい雰囲気があり、醸造設備
は長年使いこまれ、歴史をシッカリ感じられる。この様なイメージですが、
パンノンハルマ修道院の醸造所は全く異次元の世界のそれでした。




こちらがその醸造所です。丘の頂から下方に向けブドウ、果汁、ワイン
が進んで行くゼロ・グラヴィティー・システムを採用したモダンな醸造所
です。このシステムだけなら、最先端を行く醸造所とは言えません。今、
このシステムを採用するのは常識ですから。
何が凄いのか。それは醸造所の中で無用な雑菌に悪戯をさせない為
の工夫が至る所に散りばめられている事です。ブドウが雑菌に悪戯を
されては原料として使えません。醸造に入る前の果汁が雑菌に悪戯を
されてはワインになりません。ミサで使う状態、あるいは商品になる前
に雑菌に悪戯をされては台無しです。肉眼で見えない雑菌が相手です
から万全の対策が必要です。
けがれていてはいけない。それがワインであっても。修道院ならではの
考えが、危険回避の為のその様な対策を徹底させているのかもと想像
します。





こちらがミサにも用いられるこの醸造所で最も大切なワインのTricollis/
トリコリシュです。完璧なまでにクリーンに保たれた環境で造られたワイン
であるとアピールするかの様に一点の曇りもない洗練された美しい香味
をした白ワインです。
2種のRiesling/リースリング(ドイツが故郷でハンガリーではRajnairiesling
/ライナイリースリングと呼ばれるリースリングとそのリースリングと何ら関係
がなく、東欧が故郷とされ、東欧を中心に栽培されているWelschriesling/
ヴェルシュリースリングでハンガリーではOlaszriesling/オラズリズリングと
呼ばれるリースリング)を主体に造られています。
白い花、白桃、ラ・フランスなどをイメージ出来る香りに加え、フレッシュな
ミントの爽やかさも感じます。高原の空気、滝つぼの清涼感、秋晴れの空
と言った感じの爽やかさに満ちた味わいをしています。その清らかさに身
が清められてしまう程です。
完成度の高い白ワインですので、ワインだけでその本質を堪能するのが
ベターですが、キスやホタテ貝など苦味の少ない繊細な味わいの食材を
淡く味付けして食す時にも十分お楽しみ頂けます。
*Tricollis 2015 Pannonhalmi
 トリコリシュ2015パンノンハルミ
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな、やや辛口>
1,900円(消費税別)




ブドウ畑の先の丘に修道院のある風景。前回、アップしたオーストリアの
パルト村と同じ様にここ、パンノンハルマにもあります。