覆す事の出来ない事実です。極論を言えば、ブドウ畑でこれからの未来
が確立されてしまうのです。だから、様々な要件を満たしている最高の畑
を取得したい。それが出来ないのなら、その畑で育まれたブドウを入手し
ワインを造りたい。そうなるのです。
北カリフォルニアのワイン産地巡りの最初の地Calistoga/カリストガには
喉から手が出るほど手に入れたいブドウが産出される著名な畑が２つ
あります。この畑のブドウでワインを造るのなら、そのワインの将来の
名声が確約されるからです。
上の画像の中、上側の緑色（山）の境にピンク色の○が２つあり、それが
著名なブドウ畑になります。その片方の畑のブドウで造った赤ワインを
当店の取引先の輸入元が輸入していますので、ワインを販売するに前
に見ておこうと考え、訪問して来ました。
Napa Valley/ナパ・ヴァレーは東側をVaca Mountain/ヴァカ山に西側を
Mayacamas Mountain/マヤカマス山に挟まれた南北に細長いエリアで、
その中を流れるNapa River/ナパ川の周りの平地、両山に向かう丘陵、
両山の斜面などにブドウ畑が拓かれています。
ナパ川の浸食や両山の崩落で長い年月をかけて形成されたこのエリア
の土壌は複雑極まりなく、その土壌の性質を科学的に検証し、それぞれ
に相応しいブドウを植樹し、育てています。
２つある著名な畑の片方はThree Palms Vineyard/スリー・パームス・
ヴィンヤードと言いまして、直ぐ上の画像ではBg（砂利のある砂、粘土
混じりの土壌）の部分に位置しています。Be（砂、粘土混じりの土壌）
やBc（粘土の多い砂、粘土混じりの土壌）など他の表示は全て異なる
土壌を意味していて、大きく分類されている上の画像を見ても多様な
構成になっているのが判ります。
ナパ・ヴァレーはCabernet Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョンと言う
品種にとって神に与えられた天国の様な地なのですが、フランスの
ボルドー地方が原産の他のブドウ、Merlot/メルロやSauvignon Blanc
/ソーヴィニョン・ブランにも同じ様な事が言えます。
と言うのもナパ・ヴァレーの大部分は浸食により堆積した沖積土壌で
ボルドー地方の土壌に類似しています。自分が育てたいブドウを好き
勝手に植え育てる訳には行かず、与えられた前提条件に従い、それ
尊重し植樹、栽培しなければなりません。よって土壌が類似するなら
そこにあるブドウは同じ品種になるのです。
スリー・パームス・ヴィンヤードを山側から見たのが上の画像です。
茶色っぽい土壌に石が混じっているのが見えます。ワイン醸造用の
ブドウは基本的に水はけの良い土壌を好みます。水分の少なさに
打ち勝とうとする事により、土中深く根を張り、必要な栄養素を吸い
上げ、それを実に蓄えます。その蓄えが良質なワインへと移行し、
結果、成分豊かな（高品質の）ワインが誕生します。
このスリー・パームス・ヴィンヤードではメルロを育てています。この
周りにもメルロを育てている畑はありますが、この畑ほどの名声を
得ていません。なぜなのでしょうか？
それはこの畑のロケーションに秘密があります。ほど良く含まれた
石が水はけを良くしている事に加え、南西向きの緩やかな斜面に
なっています。傾斜があると、水はけがより良くなります。ブドウは
水分不足のストレスに打ち勝とうとし、大地にシッカリと根付きます。
また傾斜がある事で太陽の恵みをより享受し、実の成熟へ繋がり
ます。それがこの畑が他から抜きん出ている理由です。
それにしてもなぜ３本のヤシの畑なのでしょうか？この答えは上の
画像を見れば一目瞭然です。畑のど真ん中にヤシが３本そびえて
います。予備知識として畑にヤシがある事は得ていましたが、本当
にそびえる３本を見て、思わずあったよと感動してしまいました。
この画像、ソムリエコンクールに出そうです。この画像を見て、この
畑名を答えなさい。この画像を見て、このワイン産地を答えなさい。
この画像の畑に植わっているブドウの品種を答えなさい。等々。
机上の学習でもある程度の事は知り得ますが、真実は現場で見聞
しなければ得られません。こうして現地で得た色々な事をワインを
売る上で活用したいと常に思っています。
当店ではテイスティングした事のないワインは販売していませんが、
更に訪問した事のない産地のワイン、訪問した事のない造り手の
ワイン、会った事のない造り手のワインも販売していません。理由は
簡単。真実をお客様に伝えたいからです。
次回はスリー・パームス・ヴィンヤードのワインを紹介します。
