2016年4月29日金曜日

絶妙なハーモニーfrom小布施

ワインの世界に長くいるとある潜在意識により、固定概念が勝手に身に
付いていて、柔軟な思考が働こうとするのを阻害します。ワインを考える
時、なぜかいつもフランスが基準になってしまう。これもその結果ですし、
フランスの2大ワイン産地のボルドーとブルゴーニュが交錯するなどあり
得ない。そんな風にも思ってしまいます。
Sauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランとChardonnay/シャルドネと言う
2つのブドウがあります。前者はボルドーが主産地、後者はブルゴーニュ
が主産地です。ボルドーのブドウとブルゴーニュのブドウなのだから、
両方を使いブレンド・ワインを造るなんてダメだろう。こんな風に。
実際、フランス以外の世界中のワインを見ても、その様な融合の結果、
誕生しているワインは非常に少なく、ここでもワイン業界にいる人の頭が
いかに凝り固まっているか証明されています。



ボトルの形からしてもボルドーとブルゴーニュは全く別物。それぞれは
別の道を進むのです。しかし、いつでも、何にでも、どこにでも例外は
あります。訳の分からない無意味な固定概念を一度でも解き放てば、
新たな境地が拓かれ、今までなかった新しい傑作が誕生します。
昨年、訪れたハンガリーにはボルドーのブドウとドイツ原産でフランス
ではアルザスが主産地のブドウの融合の結果、誕生したアロマ豊か
で、キリリと引き締まった口当たりも備えた白ワイン(ソーヴィニョン・
ブラン&Riesling/リースリング)がありました。
そのワインに出会う瞬間まで、境界を超えたとでも表現すれば良いの
でしょうか、非常識に思えるブレンドのワインには一種の拒絶反応を
持っていました。その様なブレンドは邪道と思っていました。
実は、そんな話を小布施ワイナリーの栽培醸造責任者の曽我さんと
語り合った事がありました。その時の曽我さんはそう言うブレンドも
ありだよ。と言う考えを示し、既に私も同様の考えに意識革命をして
いましたから、二人で大盛り上がりした事を覚えています。
あれから約1年。私自身、既に拒否反応がなくなった越境のブレンドで
仕上がった小布施ワイナリーのミラクルな白ワインが2種類入荷して
来ました。フランス国内で決して融合する事のない組み合わせもあり、
どの品種が使われているか推測するブレインド・テイスティングをし、
楽しむのも一興です。




上の画像のワインは5種類のブドウを使って造った事を意味するCinq
Cepages/サンク・セパージュ。下の画像のワインは4種類のブドウを
使い造ったワインで、あり得ないブレンドで造ったワインなので名前の
付け様がない所から、名なし(フランス語でNom Indecis/ノマンデシ)
となったのです。このノマンデシには面白いストーリーがあり、それは
裏ラベルに書いてありますので、購入した際には読んでみて下さい。

*サンク・セパージュ
相性の良い料理:素材の持つ優しい甘味を生かした軽やかな味わい
           の料理。
           チーズなら、モッツァレッラ。
飲み頃温度:8~10度。
<軽く、まろやかな、やや辛口>
このワインのブレンドはフランスで語るなら、ボルドー地方が主産地の
Sauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランにブルゴーニュ地方が主産地
のChardonnay/シャルドネが融合し、更にアルザス地方が主産地の
Pinot Blanc/ピノ・ブラン、Riesling/リースリング、Gewurztraminer/
ゲヴュルツトラミネルがアクセントを添えるミラクルな組み合わせです。

*ノマンデシ
相性の良い料理:柑橘類の酸味や青みの薬味、ハーブが良く合う
           淡白な味わいの料理。
           チーズなら、シェーヴル(山羊乳)タイプ。
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな辛口>
このワインのブレンドもフランスで語るなら、地中海沿岸が主産地の
Muscat/ミュスカにアルザス地方が主産地のゲヴュルツトラミネルと
リースリングが加わり、更にスペインと国境を接するピレネー地方
が主産地のPetit Manseng/プティ・マンサンもと言う具合。曽我さん
自身が言う様に全くあり得ないブレンドの結果、奇跡のハーモニー
を奏でました。