2016年4月28日木曜日

ブレンドの妙

料理、着こなし等、既に完成された食材、調味料、服を組み合わせて
新たに何かを完成させる。ただまとめればそれで完成。それでOK。と
言う程、単純な事ではないでしょう。センスが問われる作業です。
ワインの世界でも同じ事。単一品種で造るワインでさえ、高いレヴェル
に仕上げるのは簡単ではありませんが、品種別に出来上がっている
ワインを複数ブレンドし、高次元の品質を持つひとつのワインに造り
上げる事などもう神業としか言い様がありません。



ワインのブレンド作業には色々なやり方があるでしょうが、よく見かける
光景は複数のサンプルワイン入りボトルとワイングラスが目前に並び、
全てのワインがグラスに注がれ、それらを先ずは一通りテイスティング。
その後、どの様な酒質に仕上がるのかを思い描き、それを実現する為
メスシリンダーを使いブレンド比率をシュミレートする。こんな感じです。
ブレンドには1+1=2にはならない不思議な状況が待っています。
1+1=2となるのなら話は簡単ですが、1+1=5(A品種とB品種のワインを
ブレンドすると、それぞれにはなかった要素が創造され、思いがけない
香味が生まれる。)になったり、1+1=0,5(お互いが個性を消し合い、
平板な香味になってしまう。)になってしまう事もありますから、ブレンド
比率の着地点を見つける、決めるのは天性のセンスにかかっていると
言えます。
しかも、ワインの世界で常識に捕らわれ、凝り固まってしまった思考の
人間にとってボルドー地方のブドウ(Sauvignon Blanc/ソーヴィニョン
・ブラン)とブルゴーニュ地方のブドウ(Chardonnay/シャルドネ)から
造られたワインをブレンドし、新たなワインを生み出す事など頭の片隅
にさえ微塵もありませんから、思わぬ発見、結果など生まれ様がない
のです。





今までになかった素晴らしいもの。それを創り出し、人を驚かせる
事が出来る人は凡人には判らない特別な何かを備えています。
その何かは何なのか。他人の常識は自分の非常識と考えられる
思考回路なのか。単にセンスがあるだけなのか。
何れにしても脳の働きが違う事に間違いはありません。1+1をし、
2ではなく、+αを生み出すワイン造り。その秘密は謎ですが、
消費者の立場からすれば、秘密は判らなくても+αを実感する
素晴らしいワインがありさえすればそれでOK。
ボルドーとブルゴーニュの合体でも良いでしょう。地中海沿岸と
アルザス地方のミックスでも良いでしょう。何か素晴らしい未知
の傑作は思わぬ事、思わぬ所から誕生します。そのきっかけを
見逃さず、やり遂げる。ワインのブレンドに於いて、その様な事
が出来るのはマジシャンの様な優れた特殊能力を備えたワイン
・メーカーだけです。
実はその様なワイン・メーカーが私達のそばにもいます。次回は
ブレンドの魔術師、小布施ワイナリーの栽培醸造責任者の曽我
さんが柔軟な発想で誕生させたユニークな組み合わせのワイン
を2種類紹介致します。