2015年6月13日土曜日

日本のワイナリーへ行こう@勝沼編

伝統を守る。経験と勘を大切に。そんな事に固執し過ぎて、革新的になれず、
新たな境地へと飛躍出来ないのは何とももったいない話ではないでしょうか?
西方から伝播して来たブドウながら、現在では日本の固有品種として世界で
知られる様になったブドウ「甲州」。日本では何百年にも渡り、この甲州から
ワイン(かつてはブドウ酒と呼んだ方が的確であったのでしょうが...)を造って
来ましたが、その品質に大きな変化が現れたのはつい最近の事でした。
恐らくブドウ酒と呼んだ方が相応しい時代からつい最近まで、(良くない)伝統
を守る。(役に立たない)経験と勘を大切に。そんな事を継続していた結果、
私達の周りに流通していたのが消費者に見向きもされない品質の甲州ワイン
だったのです。
ワインを造る為にブドウを栽培しなければダメだ。そんな思いを抱いた造り手
(ワインメーカー)がブドウ栽培から改革を行い、醸造用に適した状態のブドウ
を収穫し、ワイン造りを始めます。出来上がったワインは同じブドウ品種(勿論
品種が同じなだけで、ブドウの質には雲泥の差がありますが)から造ったとは
思えない別次元のワインが誕生しました。
今、甲州からワイン造りを行っているほとんどの造り手はその様な改革を実行
し、クリーンな果実味が広がり、ライトな口当たりのRiesling/リースリングでも
なく、Sauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランでもなく、甲州とはこれだと主張
するオリジナルの香味を備えたワイン造りに成功しています。
その最先端を走り続ける造り手が中央葡萄酒(Grace Wine/グレイス・ワイン)
です。本拠地の勝沼で畑の気候風土を反映させた3種類の甲州を造り、当店
へ供給してくれています。


勝沼町の東部にある急峻な山の斜面に位置する鳥居平畑、勝沼町の北東部
にある幾重にも織りなす渓谷の裾に位置する緩やかな傾斜地ながら標高が
勝沼町では最も高い菱山畑、それぞれの畑からの甲州ブドウで違いを追求
した2種類のワインに加え、菱山畑のブドウを多めに使い残りも全て勝沼町産
の甲州で造ったワインの3種類です。
この3種類を一度に比較しますと、ウソだろと言いたくなるほどの違いがあり、
同じブドウでも気候、風土が変ればブドウの組成が違い、それが違うから同じ
様に造っても出来上がるワインに違いが出ると実感できます。
人間は思い込みが激しい生き物ですから、この3種類の甲州ワインをブラインド
でテイスティングし、品種当てをしたなら、きっと3種類共に甲州と答えられない
事態になる筈です。


こちらが鳥居平畑がある柏尾山です。昔から慣習的に鳥居平地区と言われた
この山の斜面ですが、字名で言いますと下から上之山、鳥居平、道上の3つで
構成され、勾配がきつい地ですので、日射量が豊かで、水はけの非常に良い
立地になります。
その様な条件下で育まれた甲州ブドウは果実味が充実し、熟度が高く、エキス
の豊富な実になり、出来上がるワインはラ・フランスや白桃の香味と白い花の
華やかな香りがリッチに広がり、その中に酸味の広がりと清々しさを感じる酒質
になります。


上の画像は鳥居平から勝沼町を見下ろし、かつ西方に臨んでいます。日没まで
シッカリと陽光が降り注ぐのが鳥居平です。


上の画像は勝沼の中心エリアから菱山地区方面を望んでいます。いくつかの谷
がある山の連なりの中腹まで開拓され、ブドウ畑があるのが判ります。緩やかに
上って行く斜面の標高400~650mに畑が広がっています。
鳥居平から移動してみると、かなり気温が異なり、時折、吹き上げて来る涼風に
一層の涼しさを感じる地です。温度だけを考慮し、育まれる甲州ブドウの違いを
語れば、菱山畑のブドウの方が酸味を基調とした爽やかさを備える事になります。


菱山地区の最も高い位置から勝沼町の街中方面を望んでいます。この画像を
見れば、この地区がいかに高所に位置しているかが判ります。この道に添って
吹き上がる風で畑がクールダウンされ、清涼感を持つブドウになるのです。


また、菱山地区の特徴としてこの付近に流れる川がかつて氾濫した際に山から
崩落して来た大小様々な花崗岩が土中にあり、それ由来のミネラル成分を多く
含んだ土壌になります。
冷涼な気候に加え、ミネラリーな土壌で育まれた甲州ブドウはワインになった時、
白い果実よりも緑色の果実の新鮮な爽やかさがあり、シャープで清涼感ある酸味
とミネラルの広がりにリフレッシュシングな後口を備えます。
この爽快なアクセントをバランス良く含ませたワインが一番上の画像の右の畑名
表示のない甲州ワインで、それら3種類の中で一番柔らかい香味がありつつも、
どことなく菱山畑の甲州ワインを思わせる一面を持っています。
ワインの世界で同じブドウから同じ様に造ったのに、出来上がるワインが違う事を
テロワールの違いが生んだ相違と言います。今まで甲州のワインでテロワールを
語る事など皆無でしたが、良い甲州ワインを造る為、甲州ブドウをワイン醸造用に
栽培する様になって始まった新しい流れです。
勝沼町で栽培された甲州ブドウから造ったワインなのに、香味の違いがあるのは
こんな理由があったのです。ワインの違いは飲めば判るのですが、なぜそうなる
のか。それは畑に立って初めて判る事なのです。
ワインを飲んで興味、疑問を持ったなら、時間を創ってワイナリーへ足を運んで
みて下さい。多くのワイナリーが消費者の皆様を受け入れてくれ、色々な趣向で
楽しませてくれます。
日本のワイナリーへ行こう。そして、余すことなくワインを思いっきり楽しもう。別に
臆する事はありません。訪問者に合わせワインの楽しさ、真実を教えてくれるのが
ワイナリーです。

中央葡萄酒がテロワールを追求し、造り上げた3種類の甲州ワインはこちら!!

*Grace 14 Katsunuma Koshu
 グレイス14勝沼、甲州    2,400円(消費税別)

*Grace 14 Toriibira Vineyard Koshu
 グレイス14鳥居平畑、甲州     3,000円(消費税別)

*Grace 14 Hishiyama Vineyard Koshu
 グレイス14菱山畑、甲州       3,000円(消費税別)

勝沼→鳥居平畑→菱山畑の順に酸味とミネラルのシャープさが増し、爽快さや
清々しさを感じ、辛口の味わいになります。