1906年、兵庫県の酒どころの灘にある桜正宗から採取され、協会初の酵母
となったのがきょうかい1号酵母です。当時にしては低温に属する摂氏20度
で最適醗酵し、濃醇な酒を醸した強健な酵母であったそうです。安定的に
働ける酵母として培養された後、1917年から1935年まで第1号の酵母として、
日本醸造協会から頒布されていました。
この様に過去形の説明ですから、きょうかい1号酵母は現在、正式には頒布
されていない訳で、この酵母から造られた日本酒が現存する事はありえない
事になります。もし、きょうかい1号酵母から造られた日本酒があったとしたら
それは幻と言う表現が相応しい日本酒でしょう。
そんな幻の日本酒が今年も小布施から届きました。探求心旺盛で、不可能
などあり得ないと言う孤高のワイン・メーカー、曽我さんが幾多の困難を乗り
越え、手に入れたきょうかい1号酵母の種を自ら培養し、安定させ、数年前
からこの酵母での酒造りを始めたのです。
この酵母から出来上がった日本酒は不思議です。香りは釜で炊いたご飯の
香りとこげの香ばしい香り、乳系の香りがありつつ、味わうと口中では花や
果実のチャーミングな香りが広がります。そしてご飯を噛んだ時の甘味旨味
を感じつつも、瑞々しく、軽やかで絹ごしの様なしなやかな口当たりがあり
ます。ワインでよく例えますが、真に「美」と言う形容詞がピッタリです。
この度、入荷したのは、きょうかい1号酵母で醸したUn/アン(1)、きょうかい
6号酵母で醸したSix/シス(6)、きょうかい7号酵母で醸したSept/セット(7)
の3種類です。本日から販売開始です。在庫のある限り何本でもお買求め
頂けます。先着、店内販売のみ、電話での取り置き依頼は承れませんので
ご了承下さい。