ワイン業界に入って今年で26年。味覚を鍛え続けて来ていますので、その
鋭さには自信がありますが、その考えはあくまでも主観に過ぎませんから、
真実を客観的に証明しなくてはなりません。
世界にはワインを評価する様々な機関、コンクールがあります。その中でも
「Gambero Rosso/ガンベロ・ロッソ」と言う食にフォーカスした会社が行って
いるイタリアワインのランク付けが非常に高く評価されています。
最高ランクに格付けされたワインはTre Bicchieli/トレ・ビッキエーリ(ワイン
グラス3個)で称され、日本でもここ数年は秋に東京でお披露目会があり、
その年のほぼ全てのトレ・ビッキエーリ・ワインを自分でチェック出来ます。
トレ・ビッキエーリが発表になる前、自分でイタリアワインをテイスティングし、
このワインの品質は半端ないな、きっとトレ・ビッキエーリになるだろうなと
思う事があります。結果、そのワインがトレ・ビッキエーリになっていたりする
と、自分のテイスティング能力が客観的に証明される事になり、日頃の鍛錬
が正しかったと納得できます。
テイスティングは感覚的なスキルが複雑に融合した結果の能力ですから、
絶対的な評価をする事が不可能で、ブラインドで品種が当たった当たらな
かったですとか、言葉で表現してワインの香味を正確に人に伝えるなどと
言った行為でしか、その能力を示せないと思います。
ですから、ソムリエ・コンクールで優勝したり、ワインアドバイザー選手権
で優勝したり、先程の話ではないですが、自分が評価した通りにワインが
何かしらの評価を得たり、その様な事で自分のテイスティング能力を確認
するしかないのです。
今年の春に100種類ほどのイタリアワインをテイスティングする機会があり
ました。その中で香り、味わいの構成に衝撃的な感覚を持った赤ワインが
あったのです。その赤ワインは南部、Puglia/プーリア州産で、地場の固有
品種から造られています。品種を知らず、ブラインドでテイスティングをした
なら、Sangiovese/サンジョヴェーゼから造られたかなり高額な赤ワインの
様に感じるでしょう。
この赤ワインですが、後にトレ・ビッキエーリになったと知る事になります。
その赤ワインがこちらです。Torrevento/トッレヴェントと言うワイナリーが地場品種
Nero di Troia/ネロ・ディ・トロイアから造り、2011年にイタリアのワイン法でトップ
のD.O.C.G.に格付けされたワインです。
ラズベリーなどのベリー・フルーツの香り、インクを思わせる華やかな香りがあり、
口当たりはジューシーでありながら、内包された酸味、渋味、ミネラルのバランス感
ある広がりがあり、余韻では野趣な香味が口中に残ります。既に言いました通り、
サンジョヴェーゼの中の高貴品種Sangiovese Grosso/サンジョヴェーゼ・グロッソや
Brunello/ブルネッロから造られた赤ワインに極似した酒質です。
この様な品種から造られたワインには魚や動物肉に感じる血合いのニュアンスが
あり、そのニュアンスに相乗する様に食材にも血合いのニュアンスがあるとワイン
の個性が更に引き立ち、料理とワインのマリアージュが完成されます。
このタイプの赤ワインにお勧めの食材は、今、真に旬の秋刀魚(さんま)です。
魚にボディーのふくよかな赤ワイン?魚にだって赤ワインは合います。どんな
状態の魚で、それにどの様な酒質の赤ワインを合わせたら、魚料理にだって
赤ワインがOKなのでしょうか。
ボディーのふくよかな赤ワインはアルコールが高い場合が多く、渋味(タンニン)
も豊かに含まれています。この様な赤ワインでしたら、脂がのっている脂肪分の
豊かな魚を醤油で調理したり、食したりすればまずはお互いの調和に違和感を
感じません。
その様な赤ワインの香味に加え、品種個性の血合いのニュアンスがある場合
なら、脂肪分だけでなく、身に血合いぽさがあり、鉄分を感じる事が必要になり
ます。
今が旬の秋刀魚(さんま)は非常に脂がのっていて、味わいが濃厚です。この
濃さが赤ワインの豊富な渋味(タンニン)と相乗します。また、腸から来る野趣
な血合いを感じる味わいは、渋味の豊かさに加えてワイルドなヒントある重厚
な赤ワインに香り、味わい共にマリアージュします。
塩焼きを食すのなら、大根おろし、レモンは合わせず、赤ワインにマリアージュ
させるのがベストです。また、新鮮な秋刀魚ならば、刺身にして醤油で味わい
にアクセントを添え、赤ワインにマリアージュさせる事が出来ます。
昨日のブログでも触れていますが、ある特定の個性のある魚にはその個性を
活かせる赤ワインを合わせ楽しむ事が出来るのです。鮭だって、マグロだって
サバだって、ブリにだって赤ワインを合わせる事が出来ます。ヴァリエーション
が豊かなワインだからこそ出来るのです。この秋は旬の魚に赤ワインを合わせ
味覚を大いに楽しんで下さい。
秋刀魚(さんま)に合わせ楽しむ赤ワインならこれ!!
Ottagono 2011 Castel del Monte Nero di Troia Riserva
オッタゴーノ2011カステル・デル・モンテ、ネロ・ディ・トロイア、リゼルヴァ
相性の良い料理:脂肪分の多い、コッテリとしたコクのある料理。
チーズなら・・・ブリー。青カビタイプ。
飲み頃温度:19度。
<まろやかなフルボディー>
3,700円(消費税別)