どんなワインにもその後ろに必ずストーリーがあります。造る人であったり、
気候風土であったり、ワイナリーの佇む風景であったりと。WEBがこれだけ
発達した現在、Google Earthで検索すれば、その土地の状況を大まかに
把握する事が出来ますし、造り手に関してはそのHPを見れば詳細が判り
ます。
日本に居ながら世界中のワインを味わう事の出来る日本は世界でも最も
恵まれた消費地です。同じワインを飲むと言う行為をするのなら、見て、
味わって、更にイメージを膨らませて、ワインを飲むと言う同じ行為を数倍
も楽しんでみませんか。
先日、館林市の飲食店で行ったワイン・テイスティング会で、同じ収穫年の
フランス・ボルドー赤ワインで主体になる原料ブドウが異なる2種類を飲み
比べてみました。
ワイン業界にいる人間はボルドーの土壌の違いによる適応品種の違いの
為のワインの香味の違いは基本中の基本ですから、感覚的にも理解して
いる筈です。しかし、消費者にとっては同じボルドーと言う産地内でそんな
違いが発生するなんて...、と言う感覚なのでしょう。実際にに飲んで、説明
を聞いて、イメージを膨らませて、非常に興味深い経験だった様子でした。
ボルドーと言う産地はボルドー市を中心とし、2つの河、そしてその2つが合流
し、大西洋に流れるまでの両河岸にあります。上の画像がそのボルドー地方
です。
Dordogne/ドルドーニュ→Gironde/ジロンドと続く河の右岸、Garonne/ガロンヌ
→Gironde/ジロンドと続く河の左岸、ドルドーニュとガロンヌに挟まれたエリア、
ガロンヌの左岸(上の画像で緑色の円で囲まれた辺り)、これら4つのエリアで
誕生するワインが大きく異なります。
その違いには河の影響による土壌、温度、湿度の違いが大きく関わっていて
右岸では柔和で豊満、ドッシリトした重厚感ある赤ワインが、左岸では酸味と
タンニン(渋味)の織りなす力強い重厚感のある赤ワインが、ドルドーニュと
ガロンヌに挟まれたエリアでは清々しい軽やかな辛口白ワインが、緑色の円
のエリアでは妖艶で芳醇な甘口白ワインが主に生まれます。
今回、見て、味わって、イメージを膨らませて大いに楽しんだのは、右岸と左岸
の赤ワイン。右岸はドルドーニュ河の影響により出来上がった保水性の高い
粘土質主体の土壌で、その保水性の為、地温が上がらず比較的冷涼な地区。
左岸はガロンヌ河の影響で堆積した礫が主体の土壌で、含有される石が日中
に暖められ、その熱が夜間に放冷される比較的温暖で湿度が低い地区。この
気候風土の違いが右岸はMerlot/メルロと言う品種に向き、左岸はCabernet
Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョンと言う品種に好都合なのです。
その自然が与えた適正が右岸と左岸の赤ワインの香味の違いを創造し、同じ
ボルドー赤ワインであってもひとくくりに出来ない多様性を備えるのです。
1993年産の右岸と左岸のワインです。画像をみてもその違いが明らかです。
右のグラスはメルロ主体の右岸の赤ワイン、左のグラスは左岸の赤ワイン、
カベルネ・ソーヴィニョンが主体です。
収穫年を揃えた比較だった為、右岸のワインの方が高価になってしまったの
ですが、同じ価格帯のワイン同士なら、カベルネ・ソーヴィニョン主体の左岸
のワインも色調はもっと濃いと思われます。
しかしながら、土壌や気候の違いによる主要品種の違いがワインの香味に
大きな違いをもたらすと言う事を感覚的に捉えるには十分過ぎる比較だった
と断言出来ます。見て、味わって、イメージを膨らませて、非常に貴重な経験
でした。
当店では、そんな貴重な経験を実際に楽しめる比較OKなワイン達がセラー
に眠っています。右岸vs左岸、収穫年違いの右岸同士、収穫年違いの左岸
同士、ボルドーvsブルゴーニュ等々、様々な組み合わせの比較のリクエスト
にお応え致します。そのチャンスがある際にはお申し付け下さい。