2014年3月14日金曜日

アロマに満ち溢れた季節の到来

ワインを表現する時には私達の身近にある果実、花、植物、香辛料など
様々な物質に例えます。これが簡単な様で簡単ではないのです。何故
なのでしょうか?
私達は呼吸をする時、鼻から空気を吸うと同時に、空気中に漂っている
無数の香りを嗅覚を通し身体に取り込んでいます。しかし、その行為が
意識的なものでない為、嗅覚で感じ取ったそれらの香りを認識する事が
ないまま、その行為が終了してしまっているのです。
ブラックペッパーの香りが判りますか?マッシュルームの香りが判ります
か?幸水梨の香りが判りますか?キンモクセイの香りが判りますか?
普段、私達が無意識にしている行為を意識してみませんか。食事をする
際には食材や調味料は何かなと注意を払う。口に運び、噛み、その料理
の香りも感じる。こんな簡単な行為を意識的に繰り返す事だけで、様々な
物質の香りをイメージし、ある香りを感じた時にその香りを特定の物質に
置き換え、表現できる様になります。
ワインを買いに行きます。どんなワインが良いですかと聞かれます。その
時にこんなワインがほしいと具体的に言えますか?バナナの香りがする
ワインが欲しい。ライチの香りがするワインが欲しい。スミレの香りがする
ワインが欲しい。春の高原の香りがするワインが欲しい。若葉若草の香り
がするワインが欲しい。そんなリクエストが出来ればあなたのワインへの
欲望がシッカリと満たされます。
これは別の視点から捕えると、ワインのテイスティングの能力を高めたい
時、グラスの中に鼻を突っ込んでワインをチェックする事だけが全てでは
ないと言えます。私達の周りに存在する様々な物質の香りを感じ、その
香りとその物質が一致する様に感覚に留める。この行為こそが表現力を
養うのです。
日本ソムリエ協会の資格認定試験を受けようとしているあなた。金銭的
に余裕がないから、十分なテイスティングが出来ない?そんな事は全然
ありません。自分の嗅覚を通して身体に入って来る香りの正体を知る。
そしてその香りをワインに感じた時に、その香りを発していた正体の物質
を表現として使える様にする。呼吸する度、口に含んだ物を身体に取り
込む度に五感を意識して働かせれば、それがテイスティングなのです。


今朝、買い物に行き、車を降りたら高貴な白ワインを生むブドウRiesling/
リースリングに出会いました。その香りの正体は沈丁花。白っぽい小さな
花。リースリングの香りが判るから、この花の香りにリースリングを感じた。
逆に沈丁花の香りが判るなら、リースリングから造られた白ワインを前に
し、どんな香りを感じますかと聞かれれば、沈丁花の香りがしますと答え
られる。
リクエストを単語で表現できるか否かは日頃、どれ程、自分の行為を意識
し行っているかによるのです。五感の稼働域が広がれば、味覚の喜びが
∞に広がります。野に咲く花の香り、芽吹いた若葉の香り、春の日差しが
もたらす香りを大いに感じてみて下さい。