2012年11月17日土曜日
ワイン専門店ですが、日本酒も
私はドロップアウトしてワインの世界に進出しましたが、私の数代前
までは江戸時代から続く造り酒屋でした。ですから当然、私も社会人
になった頃には日本酒にも大きな関心を寄せていて、色々な日本酒
をわざわざ買いに行き、飲んでいました。
それはもう20年以上前の事です。当時、鑑評会用の為にだけ密かに
造れていた吟醸酒が市販される様になった頃です。米が原料なのに
果実や花の香りがし、味わいは瑞々しく洗練されていて、アルコール
の当たりが優しく、日本酒とは思えない飲料に感じた記憶が今でも
明確に残っています。今では当たり前の様に手に入る吟醸酒です
から、その感覚が想像出来ないかもしれませんが...。
その吟醸酒を飲み続ける内に、ひとつの思いが強くなりました。
それはどれを飲んでも、香味のヴァリエーションに大差がない事。
精米の技術を競うかの如く、米を削り、原料米の折角の個性まで
をも削ぎ取ってしまっているからなのです。
吟醸酒の精米歩合の規定は50%ですから、半分だけ精米すれば
良いのに、史上初30%代の精米歩合の吟醸酒などとアピールし、
香りも味わいも人工的な日本酒を良しとする流れが出来上がって
しまっていた時代でした。
しかも群馬県に酒蔵があったとしても、原料米の産地は兵庫県で
あったり、蔵には湧水がないので遠方からタンクローリーで運んで
来たり、あるいは手配がつかないので水道水を化学的に加工して
使用したり。もっと言えば、造り手も地元の人ではなかったり。
それでは本来の意味での地酒にはなりません。
なぜそうなるのか?
その答えは明確。それは、原産地呼称制度がないから。これが
日本の食の世界の最大の欠点、欠陥なのです。農作物の産地が
どこなのか判らない。水産物の収穫地がどこなのか判らない。
採れた/獲れた場所ではなく、最終集積地や最終出荷地が産地と
して表示されてしまうから。原産地呼称制度があれば、この問題は
一挙に解決し、消費者は何の迷いもなく、希望する産地の商品を
確実に手にする事が出来る様になります。
日本酒の画一化は、この制度がない犠牲の延長に出来あがった
構図なのです。しかし、わずかですが、日本酒の世界に原産地の
概念がないのはおかしいと疑問提起し、自ら原産地呼称制度を
取り入れ、日本酒の世界にも当然の様にその制度を根付かせ様
と奮闘している酒蔵があります。
私達は日本人ですから、日本酒に接する機会は創らなくても勝手
にやって来る事もあります。それ位、私達には身近な飲料です。
そんな身近な飲料なのに、中身の素性が判らない。偽装とさえ
言える状況の中で誕生していると言っても間違いではないもの
を飲料として口にしているのです。それで良いでしょうか?
当店はワイン専門店ですが、原産地呼称に支えられた本物の
日本酒をわずかながら販売しています。それらはワインの様に
原料の産地(田)がどこであるのか明確、本来の個性を削ぐ様
なバカげた過度の精米をしない、酒蔵がある地元の人だけで
造り上げている、こんな当たり前の事をして生まれる日本酒
です。
これを読んだ方は、是非、一度、根知男山/渡辺酒造店のHP
を訪れてみて下さい。日本酒の現状、問題点、これから進む
べき道、そして本物の日本酒とは何かを教えてくれます。
原産地呼称、食の安全は全てここから始まります。
根知男山の渡辺酒造店では今酒造年度の寒造りが本格的に
始まっています。昨日の案内では第1弾の新酒の発売は12月
8日頃になる様です。当店では、その商品を初めに、この冬に
出荷される新酒を数種類取り扱います。入荷の度に、ここで
案内を致します。本物の日本酒に是非、出会って下さい。