2012年10月5日金曜日
魚には白ワインと言うけれど
魚料理には白ワインと世間では言われているが...。それはあまりにも
乱暴な言い回し。白身魚、赤身魚、淡白な魚、脂ののった魚、苦味の
旨味がある魚、更には白ワインにも多様なヴァリエーションがある。
また、味付けも様々。なので、魚料理には白ワインとひとくくりにして
しまわない方が良い。つまり、魚料理にも赤ワインに合わせた方が
良いものもあると言う事。
地中海沿岸エリアで造られる白ワインは原料となるブドウ品種の違い
に関わらず、色合いは黄色、色調は濃く、アルコールのヴォリューム
の豊かな、味わいは苦味のアクセントがあり、力強い広がりとコクを
持つ酒質、この様なタイプが多い。
現地での人々の楽しみ方を見ても、ワインと料理のマリアージュに
関する本を見ても、このタイプの白ワインには魚介類を使った料理
が合わせ易い。特に生ものとの相性が良いと感じている。
日本人、いや日本びいきの外国人、ヘルシー志向の外国人も大好き
な寿司。この寿司を食べる時には地中海エリアで生まれた白ワイン
が大活躍する。
でも、醤油をたくさんつけてはダメです。なぜなら、醤油の旨味成分、
乳酸が白ワインの旨味、味わいを削いでしまうから。嫌でなければ、
白ワインと楽しむ時には、醤油でなくて、塩で食してほしい。
塩は海の産物、魚介類と同じ世界で育まれた自然の恵み。出所が
同じものはなぜか良く合う。これは様々な事に当てはまる。地元の
郷土料理には、その地の酒をと言う考えと同じ。
それでは地中海エリアの典型的な白ワインにはどんな寿司があうの
でしょうか?まず、注目してほしいポイントは、味わいに苦味の旨味
がある事。この苦味に対処してあげなければならないのです。
ワインと料理の相性の良さは、お互いの香りの同化、お互いの味の
同化、お互いの力加減の均等化、これらのバランスが取れた時に
甘味旨味が生まれ、相性が良い、マリアージュしたと言えるのです。
そう考えると、食材自体にも苦味の旨味があると良いし、調味料に
だって、苦味の旨味がある方が良い訳。なので、白ワインで寿司
を食すのなら、苦味感じるミネラル感、旨味がある天然塩が良い
のです。
地中海エリアの典型的な辛口白ワインに、非常に良く合うのは
生しらす、イカやタコ、タイやヒラメなどの白身です。いずれにも
苦味の旨味を感じ、赤身の魚の様に血合いを感じない。これが
ポイントです。
特に生しらすの軍艦、姿やりいかのにぎりには抜群の相性の
良さを見せてくれます。それらの寿司を食した時に広がる苦味
の旨味、磯の香りと地中海からの自然の恵みを十分に受取り
育ったブドウで出来たワインの海を感じる風味とが口中で一糸
乱れぬハーモニーを奏でます。
しかしながら、今が旬のさんまではそう上手くはマリアージュ
しません。さんまの脂肪分、腸の部分から来る血合いの風味
これらが地中海エリアの典型的な白ワインにはないからです。
さんま、あじ、いわし、これら3種にはもっと味わいが強く、同系
の風味を持つワインでないと、生臭みが増長してしまいます。
それではどんなワインが良いのでしょうか?脂肪分と血合い
に相乗出来る要素がワインに必要なのです。血合いの風味
があるのは赤ワイン。そして赤ワインの渋味成分(タンニン)
は脂肪分と一体となり、お互いの旨味を引き立て合います。
また、穴子のにぎりの様につめタレをつけたものも、醤油
由来の旨味、乳酸がありますので、同じ乳酸を持つ赤ワイン
が合う事になります。
この様に魚なら白ワインが良い訳でなく、ある特定の風味
がある魚介類なら、白ワインが合うと考えて下さい。そして、
醸造過程で木樽で熟成した芳醇な白ワインは、その風味
ゆえ、生の魚介類には合わない場合がほとんどです。
樽熟成由来のトースト、ナッツなどの風味が生の魚介類
にはないからです。このタイプの芳醇な白ワインに魚介類
を合わせる時には、魚介類に火を通し、オリーヴ・オイル
やクリーム、バターなどで調理してあげると、その料理に
合わせ楽しめる様になります。
今日から3回シリーズで魚介類にワインを合わせ楽しむを
テーマにブログをアップして行きます。この3回シリーズを
通じ、今まで入り込めなかったマリアージュの世界に到達
して下さい。