2011年10月29日土曜日
甲州ブドウ
皆様が思い描くブドウ畑の光景はどんな感じですか?ここ日本ではほとんどの
方が経験のあるブドウ狩り。それをした観光ブドウ園の光景を思い描くに違い
ありません。
ワイン用ブドウとテーブルに乗る食用ブドウとは同じブドウでも似て非なる果実。
だから、当然の事ながら、栽培方法が異なって当然。世界のワイン産地を訪問
すると、とても多くのブドウ畑の光景は画像の様な感じ。一直線に整然と植樹
され、境界線を作るかの如く垣根の様に並んでいる。これを垣根栽培(Vertical
Shoot Positioning略してVSP)と呼ぶ。この方法で栽培すると収穫量制限を行い
易い。ワインはブドウの持っている要素をほぼ100%移行したアルコール飲料。
水を加えたり、甘味料や酸味料などで香味を整えたりしない。高品質のブドウを
栽培し、それをワインにしなければ、いくら技術を駆使し、醸造熟成しても良質の
ワインにはならない。高品質のブドウがある事が必須なのだ。
近年、日本のワインが世界のワイン市場で認知され始めている。特に甲州から
造った白ワイン。ロンドンやパリではかなりの人気を博していると聞く。その甲州
が栽培されている畑は、ほとんど見た目、観光農園風。ブドウ樹が屋根の様に
天井を作り、その下に樹が折れそうな位、たわわにブドウがなっている。瑞々しく
て食べるとジューシー、ほんのり甘味が広がり、実にほっとする味わい。
これがワイン用に栽培したブドウと食用に栽培したブドウの違い。ワイン用ブドウ
は瑞々しいというより、ネットリと張り付くかの様に濃厚な甘味、たっぷりのエキス
を果肉に含み、房を握り締めるとその濃厚な果汁が接着剤の役割を果たし、房を
手にピタリとくっつけてしまう程。この糖分が発酵によってアルコールに、エキスが
ワインの酒質をリッチにする。
そんなブドウを栽培するには1本の樹からの収穫量を減らし、少なくした果実に
栄養を集中させる必要がある。100採れるからと言って、100採っていたのでは
食用ブドウになってしまう。だから、甲州もVSP仕立てで収穫量を厳しく制限し、
タップリのエキスと糖分を含んだ果実を作り上げ、ワイン用にしている。それが
近年の甲州ワインの飛躍的な品質向上につながっている。
色は少し異なるが上の画像のブドウも下の画像のブドウも甲州。上がVSP仕立て
下が棚栽培。外観からして明らかに別もの。今年もVSP仕立ての甲州ブドウから
ワインが造られている。台風の襲来を乗り越え、育ったブドウ達には自然の恵み
がギュッと詰まり、驚きに品質のワインに変身する事だろう。テイスティングする
のが楽しみだ。ワインの進化の後ろにはそれなりの訳がある。今度、山梨などの
ワイン産地を訪れた時、注意深くワイン畑を見てみて下さい。きっと、垣根の様に
仕立てられた光景を目に出来る事でしょう。