2011年10月1日土曜日

常識非常識


私達にとって馴染みのあるブドウ畑の風景は画像の風景とはかなり
異なる。観光ブドウ園を思い出せば、その違いは明確。ブドウの葉
で屋根の様に覆われた下にブドウの実がたわわになり、収穫する際
には棚の下に入り、頭上の実を収穫する。その様なブドウの栽培を
棚栽培と言う。これは雨が多く、湿気があり、その為、葉や実などに
病気が発生し易い産地が病害虫におかされるのを回避する為に採用
する栽培方法。
世界のワイン産地は日本と違い、基本的には多雨多湿の自然条件下
にはない。だから、画像の様に垣根の様に仕立て、美しく一直線に並び、
ブドウの実がひざ上から腰のあたりに実る様な仕立て方で栽培されて
いる。様々な栽培形式があるが、これらを総称し、垣根栽培と言う。
棚栽培、垣根栽培にはそれぞれ長所短所があり、自然条件との兼ね
合いでどちらにするのかが決まる。が、この湿気の多い日本でも、近年
ワイン用ブドウの栽培には棚ではなく、垣根で栽培する畑が多くなりつつ
ある。
簡単に優劣を語れないが、棚栽培ではブドウの収量制限が難しく、多産
になってしまう為、質の観点から、垣根栽培に劣るとされている。
古来からの日本の固有品種、「甲州」。このブドウは棚栽培が当たり前か
の様にどこの畑も棚の下に棚が折れてしまうほどに実を実らせ栽培し、
酸度も糖度もエキスもワイン用としては不十分な実からワイン造りをして
いた事実がある。
ワインはブドウの持ち味が100%移行したアルコール飲料。ブドウの質
でワインの質は既に決まっている。だから、棚栽培で瑞々しいブドウを
多産しても、食べるには良いが、そこから良質のワインは決して生まれ
ない。この事はワイン生産者なら誰もが知っていた。それなのに....。
その悪習を打破する造り手が現れた。日本オリジナルのブドウから、
世界に通用するインターナショナル・テイストのワインを造る。その使命
に燃え、垣根栽培可能な自然条件の畑、垣根栽培に耐えられる甲州
ブドウのクローンを見つけ出し、ワインを造り上げた。そのワインは
初めて飲んだ25年前の甲州とは、同じ麺類でもうどんとそばが異なる
様に、甲州から出来た白ワインと認識するには埋める事の出来ない
程のギャップがあった。
高い志の下には心を揺り動かされる素晴らしいものが誕生するのだ。
それをその造り手が教えてくれた。この造り手は更なる高みを目指し、
進み続ける。中央葡萄酒株式会社/Grace Wineグレイス・ワイン、この
造り手は甲州で世界の白ワイン市場の構図を必ず変えるに違いない。


収穫前の甲州。垣根栽培だから実が樹の側面にあるのが判る。そして
房のなり方も少ない。これが世界で常識のワイン用の仕立て方。