異常な暑さが続いたと思ったら、今度はまるで梅雨の様な天気
の連続。直ぐに土用の丑の日ですが、鰻を食べなくてはと思う
程、夏バテをしていないのでは。しかし、これから来るだろう
猛暑に備え、暑気あたりを防ぐ為、習わしに従い、鰻を食べ、
健康を是非、維持して下さい。
鰻は魚。だから魚料理には白ワインとの法則に倣って、一緒に
楽しむワインは白でOK?事はそう単純ではありません。皆様、
ご承知の様に鰻料理と言っても、たれ味の蒲焼、たれの付いて
いない白焼があり、その香り、味わいは全く別ものです。
また、山椒をかけて食べるのか、山葵を添えて食べるのかでも
フレーヴァーが異なります。その違いを考慮し、ワインを選ぶ
必要があります。今日は4パターンの食べ方を念頭に、ワイン
選びを解説します。
・鰻の蒲焼、山椒をかけない
・鰻の蒲焼、山椒をかける
・鰻の白焼、山葵を添えない
・鰻の白焼、山葵を添える
以上の4パターンです。
日本でまかり通っている「魚料理には白ワイン」「肉料理には
赤ワイン」。これは世界では一般的な考え方でしょうが、日本
では全く通用しません。それは日本の伝統品、醤油があるから。
醤油がない地域ならではの調理方法が魚料理には白ワイン、肉
料理には赤ワインと言った簡潔な法則を導き出しています。
醸造し、長期に渡り熟成をさせた調味料、醤油や赤味噌に含有
された成分、ソトロンと言いますが、その成分は同様の成分を
含んだ醸造酒との相性にとても優れています。
ワインは醸造酒の一つでして、熟成期間の比較的長い赤ワイン
に、特にソトロンを感じます。ソトロンはカラメルを思わせる
フレーヴァーとして感知でき、醤油や赤味噌、そしてそれらで
作ったたれやソースにも感じるはずです。
少々、脱線しますが、ソトロンの究極のフレーヴァーはカレー
でして、その事からカレーを食べる時にワインを合わせるなら
その色は自ずと決まる訳です。
鰻料理の4パターンに戻りますと、蒲焼にはソトロンを感じ、
白焼にはソトロンを感じないとなり、ソトロンをマリアージュ
のキーとするなら、蒲焼には赤ワイン、白焼は赤ワインでなく
て良い。となります。
ワインと料理を合わせる時、最も簡単な方法は両者の色を同系
にする事。それを少し高度にすると、両者の香味に共通な要素
を多く創る事。そして、応用編は料理の色が白ぽくても、食材
に脂肪分が多いのなら、色と色の組み合わせを無視して良い。
となります。例えば、ヒラメやカレイのえんがわには白でなく、
赤ワインと言った具合に。
それでは4パターンそれぞれのフレーヴァーを考慮し、どの様
なワインがベストの相棒なのかをお知らせします。
鰻の脂肪分がタンニンをコールします。たれの香り、味わいが
ソトロンを呼び寄せます。赤ワイン以外の選択肢はありません。
食材の味わいに合わせ、血合いぽさを感じる赤ワイン、大地の
味わいを感じる赤ワインがお勧めです。
山椒をかけない時のワインでも良ですが、両者のフレーヴァー
をより密にリンクさせる為、ハーブやスパイスの香りも感じる
赤ワインがベターです。
鰻の脂肪分を考慮すれば、料理の色が例え白ぽいとしても、既
に言及した応用編の様に赤ワインで良い事になります。但し、
合わせる赤ワインによっては役不足になる可能性があります。
そこでベストなチョイスはオーク樽で発酵、熟成した白ワイン
となります。
オーク樽で発酵、熟成した白ワインにはオイリーな口当たりが
あり、それが鰻の脂肪分と相乗します。また、ロースティーな
香ばしさがあり、白焼の焼き目に感じるフレーヴァーと同系と
なります。
ワインと料理のマリアージュを奏でるキーは、両者に共通する
要素がどれだけ備わっているか。共通する要素がどの位、多く
存在するかにかかっています。