ワインと料理、食べ物のマリアージュを完成させる時、両者を
取り持つ存在(仲人の様な)をなしで行う事も、ありで行う事
も可能です。
今年はまだ楽しめる「フローエス・ゲグルンツェ、マイスター
佐藤の生ハム」。この逸品にワインをペアリングさせ、両者が
奏でるマリアージュを楽しみたい。そんな時にお勧めのワイン
を今までに何度にも渡り紹介して来ました。
それらのワインを選び出したポイントは果実味の豊かな広がり
がある事。フルーツを食べているかの様な錯覚に陥る程の明確
なフルーツのフレーヴァーを感じるワインがマイスター佐藤の
生ハムの相棒です。
今日は更にもう1種類、相棒となるワインを紹介します。その
ワインは「Cabernet Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョン」
と言うブドウだけを用い、造りました。
それなら赤ワインですか?と聞かれそうですが、いいえ、違い
ます。白ワイン、それも非発泡性ではなく、スパークリング・
ワインです。
カベルネ・ソーヴィニョンは果皮の色が深い紫色をしたブドウ
で、黒ブドウに大別され、ご存じの様に多くの場合、赤ワイン
を造り出します。
ここで質問です。赤ワインのあの色はどこから来ていると思い
ますか?簡潔に答えれば、ワインの色は果皮の色。果皮が持つ
色素をそのブドウの果汁に移しつつ、ワイン造りをした結果、
果皮の色を備えたワイン(赤ワイン)になったのです。
つまり、果皮の色素を果汁に移すか否かで誕生するワインの色
が決まる訳で、それが黒ブドウのカベルネ・ソーヴィニョンで
あっても果汁を果皮の色素で染めなければ白ワインを造る事が
可能、色素の移行を控えめにすればロゼワインも、なのです。
今日、紹介しますスパークリング・ワインは白で、果皮の色素
を果汁に移さず、言い換えればブドウの果皮をその果汁に浸漬
(マセラシオン)しないで果汁を酵母で発酵させ、白ワインを
造り、その白ワインを再び酵母で発酵し、炭酸ガスを補足させ、
スパークリング・ワインに仕上げました。
フレッシュで、軽やかなスタイルを志向したのでしょう。白い
花のフローラルさ、白い果肉の果実のフルーティーさが上品に
口中を満たし、酸味の柔らかい主張と炭酸ガスのクリーミーな
アタックがその後に続きます。
ここまでは白のイメージなのですが、余韻に緑色のイメージが
広がり、それはフレッシュなハーブのニュアンスで、カベルネ
・ソーヴィニョンの個性のひとつです。
色と色はワインの場合、大抵は連動していて、赤ワインには緑
や黄色をイメージするフレーヴァーはないのですが、カベルネ
・ソーヴィニョンにはその様なフレーヴァーがある事が大きな
特徴です。
それは何故か?このブドウは2つの品種が自然に交配した結果、
誕生したからです。その2つの品種(親品種)は、黒ブドウの
Cabernet Franc/カベルネ・フランと果皮の色が緑色のブドウ
(白ブドウ)のSauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランで、
フレッシュなハーブのフレーヴァーはソーヴィニョン・ブラン
の白ワインの最大の特徴です。その特徴を引き継いだからこそ
黒ブドウなのに緑色をイメージするフレーヴァーをワインへと
もたらす訳です。
黒ブドウの果皮の色素をワインへと移行させない白ワインです
から黒ブドウの由来のフレーヴァーが発せられず、片親である
白ブドウの個性が際立つ。それが余韻となっているのです。
ワインの緑色をイメージさせるフレーヴァーに注目し、それを
利用するとワン・ランク上のマリアージュを創造する事が可能
となります。
生ハムに緑のイメージを添えれば良く、その役目をエクストラ
・ヴァージン・オリーヴ・オイルに担わせてあげるなら、両者
のマリアージュはパーフェクトの領域に突入する事、必至です。
先ずはオリーヴ・オイルなしで、そして、途中からオリーヴ・
オイルありでワインとマイスター佐藤の生ハムの奏でる完璧で
至福のマリアージュをお楽しみ下さい。
*Radacini 2020 Blanc de Cabernet Brut
ラダチニ2020ブラン・ドゥ・カベルネ、ブリュット
飲み頃温度:8~10度。
<軽く、まろやかな、やや辛口>
1,760円