2021年6月13日日曜日

これも白ワインです。


当店はワイン専門店ですので、販売している商品はワインとその
仲間の飲料です。ご存知の通り、小布施ワイナリーが密かに造る
Sakeも季節限定で販売していますが...。
私達が販売するアルコール飲料は酒税法により、細かく分類され、
ラベルにその分類による品目を表示しなければなりません。当店
に並んでいる商品ですと、「果実酒」と「甘味果実酒」、そして
「清酒」と表示されています。
清酒は日本酒ですし、果実酒はワインですが、甘味果実酒とは何
でしょうか。果実酒(ワイン)の甘口のものを特別に甘味果実酒
と分類しているのでしょうか。
それは違います。甘味果実酒の甘味とは甘いと言う意味で用いて
いるのではなく、エキス、人為的に加えた成分と言う程の意味で、
ワインの製造過程でグレープ・スピリッツ(酒精)を加え、酒質
の強化と安定を図った「フォーティファイド・ワイン(酒精強化
ワイン)」、薬草や果実を浸漬し、その風味(アロマ)をワイン
に付け加えた「アロマタイズド・ワインまたはフレーヴァード・
ワイン」が該当します。



フォーティファイド・ワインにはSherry/シェリー、Port/ポート、
Madeira/マデイラ、Marsala/マルサーラなどがあり、味わった事
のある方ならご存知の様に、それら全てが甘い訳でないので甘味
果実酒の甘味が甘いを意味しているのではないとお判り頂けると
思います。
またアロマタイズド・ワインにはVermouth/ヴェルモットなどが
あり、果実酒(ワイン)とは異なる豊かな風味を持っています。
こちらも酒精強化ワイン同様、辛口のものもありますからやはり
甘味果実酒の甘味が甘いを意味していない事が明らかです。
生の魚介類を食する事が稀ではない日本の食卓で大活躍する飲料
のひとつに酒精強化ワインのシェリーがあります。スペイン南部
のアンダルシア地方の名産で、スペインのみならず世界中で最も
有名で、人気のあるスペイン産ワインの代表格と言えるでしょう。
店で接客していて時々出会うのですが、発泡していないワインが
ワインで、スパークリング・ワインはワインではない、更に酒精
強化ワインは完全にワインではないと思っている方がいます。
発泡していないワインをワインとすれば、炭酸ガス含有の発泡性
ワインや酒精(エキス)が加えてあるワインは別物だと言う考え
に共感しない訳ではないですが、ワインの定義は「ブドウが原料
で、その果汁中の糖分を酵母の働き(発酵)でアルコール飲料に
変化させたもの。」ですから、発泡性ワインも、酒石強化ワイン
も、アロマタイズド・ワインも全てワインなのです。
シェリーとはどんなワインなのでしょうか?様々なタイプがあり、
色がメープルシロップの様なものまでありますが、長期に渡って
酸化熟成させた結果、その様な外観になったのであって、元々は
私達が目にする白ワインの様な外観をしていました。ですから、
シェリーはどのタイプでも白ワインなのです。
様々な外観を持ち、それぞれ異なる個性を備えたシェリーですが
私達が通常、イメージする白ワインに最も近いタイプのシェリー
はFino/フィノと言います。このフィノが生の魚介類との相性に
優れ、刺身、寿司はもちろん、生でなくても天ぷら、炙りを塩で
食すのなら、一緒に楽しめます。
スペインはヨーロッパの中でも食に関しては日本に近い所があり、
イカのリング揚げ(Calamares Fritos/カラマレス・フリトス)、
茹でタコをオリーヴ・オイルで和え、パプリカと塩で味を調えた
料理(Pulpo a la Gallega/プルポ・ア・ラ・ガジェガ)があり、
これらをつまみにフィノを楽しむのがとてもポピュラーです。
和食、寿司、天ぷら、焼き鳥、刺身はもはや日本だけのものでは
ありません。日本語がそのまま現地語として通用し、様々な地で
根付き始めています。寿司を食べながらフィノを味わう。こんな
光景さえ現地でよく見かけます。
料理にワインを合わせ楽しみ、食の充実を図る事を日本人以上に
する彼らがイカやタコの料理だけでなく、寿司にも合わせ楽しむ
のですから、シェリーのフィノは真にシーフードの為のワインと
言えるでしょう。




そんなフィノと魚介類料理のマリアージュを堪能したくて、何か
相棒となる料理をTo goできないかと探していた所、ありました。
今日紹介のフィノのパーフェクトな相棒が。「タコの唐揚げ」@
はま寿司なのですが...。
しかし残念なお知らせです。皆様にその素晴らしいマリアージュ
をお楽しみ頂きたいと思っていたのですが、期間限定メニューで
あった為、もうTo goする事が不可能に。ですので、是非、自分
で作って、フィノとペアリングさせ、そのマリアージュをご堪能
下さい。




「タコの唐揚げ」や「イカの揚げもの(塩で食す)」にベスト・
マッチのシェリー・フィノがこちら!!
*Colosia Fino / コロシア、フィノ
飲み頃温度:11~14度。
<辛口>
2,200円




(備考)
ブドウ→圧搾→果汁→酵母を加え発酵→白ワイン→熟成→ワイン
の表面に産膜酵母(Flor/フロール)が出現→熟成→酒精強化→
アメリカン・オークの樽で長期熟成(Solera/ソレラ)→瓶詰



この様な感じでフィノは造られます。ワインがフロールの影響を
受けつつ造られるのとソレラと言う手法での熟成がフィノの個性
(香味)を創る最大の特徴です。
白ワインのひとつのヴァリエーションのシェリー・フィノ。この
機会に是非、味わってみて下さい。白ワインの新しい世界の扉が
きっと開きます。