2017年12月24日日曜日

重厚な渋味があり甘いニュアンスがない赤ワインなら

赤ワインのあの色、それは渋味成分です。ですから色の薄い
赤ワインは渋味が少なく、色の濃い赤ワインは渋味が強いの
です。
色が濃いと言う事は色々な要素が凝縮している訳で、果実味
ならフレッシュな酸味を感じる生の果実よりも完熟した黒み
のある果皮をした果実や生の果実でなく、コンポートにした
果実を思わせるニュアンスがあるのです。
そのリッチな果実味が実際には甘口ではないにも関わらず、
飲み手の脳を刺激し、甘いワインと錯覚させる現象が起こり
ます。お客様の甘くない赤ワインがほしいと言うリクエスト
は多くの場合、そこから発生しています。
しかし、お客様は渋い赤ワイン、重厚な赤ワインが欲しいと
言います。しかも甘くない赤ワインがと。これは一般的な赤
ワインの常識に矛盾しているのです。色合いが濃いから渋く
重厚な訳で、甘くないと言うリクエストを優先させるなら、
色合いの濃くない赤ワインにする必要が出て来ます。
そうすると赤ワインは渋くなくなります。これではお客様の
要望に沿っていません。困りました。この地球上にワインを
造る為の醸造用ブドウは無数にあります。ですので渋いのに
甘いニュアンスがない赤ワインを誕生させるブドウもあるの
です。
そのブドウはNebbiolo/ネッビオーロ。主にイタリア北部で
栽培されています。ネッビオーロで造られる赤ワインの代表
はBarolo/バローロ、Barbaresco/バルバレスコでどちらも
ピエモンテ州に産地があります。



ネッビオーロは10月頃の収穫の時に発生する霧(Nebbia/
ネッビア)に因み命名されたと言われています。

ネッビオーロで造られた赤ワインの大きな特徴は外観の色と
その味わいにあります。色合いは濃くなく、色調はオレンジ
をワインのエッジ(縁)に感じる事が多く、味わいは甘味を
感じず、ドッシリとしたタンニン(渋味)に乾いた様な感覚
や鉄分ぽさが伴い、それが余韻に長く残ります。
それではネッビオーロで造った2種類のイタリア赤ワインを
紹介します。どちらもピエモンテ州のワインでその産地は川
を挟んで対岸同士にあります。ヴィンテージが違いますので
比較対象として正確性を欠きますが、産地(特に土壌の構成)
の状況を反映し、酒質は大きく異なっています。


紹介する2種類の赤ワインはRoero/ロエロとBarbaresco/
です。ロエロの産地はタナーロ川の左岸、ネッビオーロで
造られる赤ワインの代表格とも言えるBarolo/バローロと
Barbaresco/バルバレスコはタナーロ川の右岸です。また
バルバレスコはバローロの下流にあります。
タナーロ川のこの辺りの流域は上流から下流に行くに従い
砂が多くなり、同じブドウで造った赤ワインですと上流の
ものより下流のものの方が軽やかさ、優しさを感じる傾向
があります。
そして川の右岸よりも左岸の方が土壌中の砂の比率が高く
同じ品種で造った赤ワインは右岸のものより左岸のものの
方が繊細さを感じる傾向があります。



つまり右岸のバルバレスコの方が力強くドッシリとした渋味
(タンニン)を感じ、左岸のロエロの方が柔らかさ、優しさ
を感じる訳です。
実際に上の画像の2種類の赤ワインは造り手もヴィンテージ
も異なりますが比較しますと、バルバレスコに乾いた感覚の
鉄分を伴った重厚なタンニンを感じ、ロエロにはその主張を
感じません。
更にロエロには豊かな果実味が備わっていて、バルバレスコ
の典型的スタイルと趣を異にしています。砂質の多い土壌で
育まれたネッビオーロから出来る赤ワインは上品な果実味が
あり魅力的と言われていますが、真にその通りです。


ロエロ(左)もバルバレスコ(右)も色調は異なりますが
色合いは濃くなく、ネッビオーロの赤ワインであると予想
がつきます。
口に含めばタンニンの存在感が同じ様な外観を示すPinot
Noir/ピノ・ノワの赤ワインに感じられるそれとは明らかに
異なり、もしかしたらこの赤ワインはピノ・ノワの可能性
があるかもと言う疑いを晴らしてくれます。



強弱の差はありますがネッビオーロで造った赤ワインの主
となる特徴はドライなタンニン、鉄分ぽさを感じる事です
ので、一緒に楽しむ料理に鉄分ぽさがある食材が含まれて
いるとワインと料理のマリアージュの可能性が高まります。
鴨肉のすき焼き、レヴァーカツ等が特にお勧めできる料理
です。
果実味が備わったロエロでしたら、鴨肉のすき焼きを食す
時に溶き玉子をつけてあげる。レヴァーカツに中濃ソース
をかけ食すのがベターです。
果実味があまりないバルバレスコでしたら、玉子をつけず
にすき焼きを食す。カツを塩で食す。レヴァー本来の味を
よりワイルドに感じ易い食べ方をするのがベターです。


*Valmaggiore 2013 Roero Riserva
ヴァルマッジョーレ2013ロエロ・リゼルヴァ
飲み頃温度:19度。
<果実味を感じるフルボディー>
3,500円
*Nicorello 2004 Barbaresco
ニコレッロ2004バルバレスコ
飲み頃温度:19度。
<パワフルなフルボディー>
4,000円