2017年3月10日金曜日

クラスナストープfromロシア

様々な事が垣根を越え、物事のオリジナル性が弱まって来ている
現在、自国の地場品種を使い、その個性を重んじたワイン造りが
見直されています。この流れは特にイタリアで顕著ですが、何も
イタリアに限った事ではありません。
前回から連載を開始したロシアのワインにも地場品種のユニーク
さを追求したワインがあります。その品種はロシアにしかないと
され、しかも、Krasnodar/クラスナダールと言う街の周辺でしか
確認されていません。


上の画像がKrasnostop/クラスナストープです。「赤い」を意味する
ロシア語のкрасный/クラースヌィと「ウォッカ用の小さいグラス」
を意味するстопка/ストープカからの造語です。
赤いは果梗が赤い所から、ウォッカ用の小さいグラスは房を横から
見るとその様に見える所から来ています。上の画像はイラストです
ので、そうなのかなと疑問視してしまいますが、実物を見てみます
と、果梗はシッカリと赤く、房はグラスの様に見え、確かにそうだ
と納得できます。


上の画像はロシアの主なワイン産地の分布図です。クラスナダール
は右側中央付近にあり、その南方には2014年冬季オリンピックが
開催されたSochi/ソチがあります。
上の画像を見て変だなと感じる方がいるかもしれませんので、簡単
に説明をします。Crimea/クリミア半島はロシアか、ウクライナか
と言う非常にデリケートな問題があります。今現在、ロシアが自国
領土であると主張し実効支配している事実が問題視され、経済制裁
が加えられています。
傍から見ている私達にはロシアは悪い奴らだとなるのですが、話は
そんなに簡単な事ではありません。昨年、香港国際美酒展に行った
際にクリミアから来ていて自分達のワインはまぎれもなくロシア産
とアピールしていた造り手にこの件について聞いてみました。その
答えはこうです。
クリミア半島のオリジンはロシア帝国であり、ソ連、ウクライナと
移り変わったが実際に住んでいる人の60%以上はロシア人である。
ウクライナと言われても心はロシアにある。更に、母語に関しては
クリミア半島に住む80%近い人がロシア語を母語としている。そう
考えるとこの地がロシアであると認識するのが自然の流れだと。
この考え方に異論がある人がいるでしょうが、民族の問題は非常に
デリケートで思い付きで投げかける質問ではありません。彼らには
ナイーヴな人間と嫌がられます。もし、質問をするのならナイーヴ
なヤツと思われないくらいに親密な関係になってからか、ロシア語
で質問できるのならにした方が良いでしょう。



こちらがこの度、日本に初めてやって来たクラスナストープで造った
赤ワインです。ロシアのワイン業界のリーダー格であるKuban Vino/
クバン・ヴィノの商品です。このワイナリーはクラスナダールの西、
黒海沿岸のAnapa/アナパと言う街にあります。黒海沿岸の穏やかな
気候条件の恵みでシッカリと熟したブドウでワイン造りをしています。
クラスナストープで造った赤ワインはどんな感じですか。その問いに
答えるのは容易ではありません。何故ならあまりにもローカルな品種
すぎてそのワインをテイスティングするチャンスがレアだからです。
ですから、クラスナストープの赤ワインはどんな感じですか。でなく
この赤ワインはどんな感じですかと言う問いに明確に答えてみたいと
思います。


キャップシールを取り、コルクを抜くと、コルクは上の画像の様な
プラスティック製です。天然素材のコルクにたまたま付着していた
菌によりワインに不快な要素が取り付いてしまう現象(コルク臭)
を回避する事を目的にこの様なコルクが使われます。
香り味わいはワインをある程度飲んでいる人であれば判りやすい様
に熟成感あるメルロの赤ワインの様と先ずは結論付けておきます。
それでは細かく説明しましょう。色合いは濃く、ワインのエッジ
(端の部分)には紫色を感じます。香りは紫色の花、動物の赤身肉
の料理が欲しくなる様な野趣さ、木樽熟成により備わったコーヒー
を思わせる芳醇さがあります。味わうと口当たりはしなやかで柔和
さがあり、落ち着いています。重厚さとは異なる深みを感じます。
ワインが喉を通り口の中に残り広がるニュアンスは豊かな大地から
の恵みをイメージさせます。網焼きした肉厚のシイタケをイメージ
させる、赤身肉の加工品をイメージさせる、根野菜の炒め物や煮物
をイメージさせる、この様な感じです。つまり、そんな料理をこの
赤ワインを飲みながら食べたくなるのです。
Chateau Tamagne 2015 Krasnostop/シャトー・タマーニュ2015
クラスナストープは家庭の食卓に上る家庭的な和風料理との相性が
抜群のワインなのです。ロシアから初来日のこの赤ワインをあなた
の食卓で是非、活躍させてあげて下さい。
相性の良い料理:脂肪分を含んだ旨味のある料理。
チーズなら、パルミジャーノ、チェダー。
飲み頃温度:15~18度。
<まろやかなミディアムボディー>
2,500円(消費税別)