2015年10月3日土曜日

日本清酒発祥之地

知っている様で実は全く知らなかった事が私達の周りには溢れています。
日本酒(清酒)は日本の国酒ですから、日本に住んでいる人、日本に旅
にやって来た人の多くは、恐らくほとんどは飲んだ事がある、飲んだ事
がなくても、飲んでみたいと思っているのではないでしょうか。

清酒はどの様に造られるのか。それはこのブログをご覧の方、ご自身で
調べて頂くとして、今回は日本清酒発祥之地がどこにあり、そこがどの
様な風景の中にあるのかをアップします。

清酒は米(白米)、麹、水を原料に発酵と言う過程を経て出来上がる飲料
です。しかし、今現在、行われている清酒造りの手法が清酒誕生時から
用いられていた訳ではありません。近代醸造法の基礎が確立されたのは
日本清酒発祥之地と刻まれた石碑の裏面(下の画像)に記されている事
から判る様に室町時代に入ってからの事でした。



日本清酒発祥之地は奈良県奈良市菩提山町にある正暦寺(しょうりゃくじ)
です。この事実を知ったのは偶然でした。大阪で所用があり、奈良駅には
1時間程で行けるとの事でしたので、アルコール飲料に関係があり、訪問
する価値のある所がないだろうかとWEB検索していた時に偶然、目にした
正暦寺のサイトにこの事実が明記されていました。清酒(日本酒)を飲んで
いても、この事実を知っている人は少ないのではないでしょうか?

正暦寺がなぜ日本清酒発祥之地と言われているのか。寺院では仏へ献上
する酒を自醸していました。その酒は「僧坊酒」と呼ばれていて、正暦3年
(992年)の創建当初から大量の僧坊酒を造る筆頭格の大寺院でした。

正暦寺では、仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」、精米した白米を
使用する「諸白(もろはく)造り」、発酵のスタートに必要な酒母(しゅぼ)を
使用する「菩提酛(ぼだいもと)造り」、酒の腐敗を防ぐ為の火入れ殺菌を
行うなど、現在とさほど変わらない醸造方法を確立し、酒造りを向上させ、
革新的な酒造法として室町時代や江戸時代の書物で評されています。


その様な高度な酒造法の中でも精米した白米で仕込む「諸白造り」は
現代において行われている清酒製法の祖とされています。この事から
正暦寺が日本清酒発祥之地とされているのだそうです。


現在、正暦寺で酒造りは行われていませんが、毎年1月に酒造りの
スターターである酒母を造り、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」
に属する酒蔵がそれを持ち帰り、その酒母(菩提酛)で造った清酒を
菩提酛清酒として正暦寺の福寿院(上の画像)で販売しています。

4月から販売するそうなのですが、少量製造の為、秋にはほとんどが
売り切れてしまいますので、お目当ての銘柄の清酒を買う事が出来ず、
菩提酛清酒を味わいながら、日本清酒発祥之地でその起源に思いを
馳せる事はかないませんでした。

菩提酛清酒の菩提酛(酒母)は下の画像(菩提酛創醸地の石碑付近)
の場で造るそうです。


正暦寺の敷地内には現在、銘水に指定されている菩提仙川が流れ、
また、この地は錦の里と呼ばれ、紅葉の名所として知られています。


菩提仙川の清水を用い、日本で初めて造られた清酒は「菩提泉」で
あったとの伝承がある事でも知られています。

奈良に行くと東大寺、春日大社などの世界遺産を巡る事に注力を
してしまいますが、人込みの喧騒から逃れ、静寂の地、深山幽谷の
趣のある日本清酒発祥之地、正暦寺で穏やかなひとときを過ごす
のも一興かと思います。

正暦寺はJR奈良駅から10キロメートル弱です。駅から数分の所に
ヤマト観光レンタ・サイクルがあり、ここで電動アシスト車を借りれば
正暦寺までの坂道は何の問題もありません。

奈良に行った際には是非、正暦寺を訪ねてみて下さい。