2013年12月15日日曜日

白ワイン円熟極み

長期熟成するのは赤ワインだけではありません。白ワインだって長い
経時変化により円熟の域に達するものがあります。赤ワインの熟成の
カギはポリフェノールの存在、白ワインでは酸味と甘味の存在です。
爽快さがほとばしる柑橘果汁の様に豊かな酸味がある事、蜜の様に
エキス分の中に濃厚な甘味がある事、これらが白ワインが長い時間
をかけて発展、向上、熟成する為の要因なのです。
白ワインで最も長い生命を持つのは、ある種の菌によりレーズン状に
なったブドウ(貴腐ブドウ)から造られた貴腐ワイン。時には100年近く
経ち、ようやく飲み頃を迎えるものもあるくらいです。次世代への希少
な贈り物です。
貴腐ワインは例えればネクターの様、あの流動性の少ないリッチな
エキス分が酸素を遮断し、ワインを酸化する現象から守っています。
エキス分が貴腐ワインほど豊かでない場合、それを補完し、酸化を
防ぐには豊富な酸味の存在が欠かせません。高い酸度はペーハー
が低く、抗菌作用と共に酸化防止作用があります。
高い酸度のワインは一般的には冷涼な産地で誕生します。北半球
なら今の所、ドイツが代表的でしょう。そして、ドイツを代表する品種
Riesling/リースリング。この品種から造られる白ワインには長期熟成
の為の必要不可欠な要素が満載されています。


先日、当店のワインセラーで大切に育んでいた1990年産ドイツ白
ワインを味わってみました。コルクのコンディションは弾力性がまだ
残り、側面に液が回ってしまっているものの、ワインに欠陥を及ぼす
ほどの事ではなく、コルク臭もなく、この段階ではワインの健全度に
何ら問題はありません。


実際にグラスに注ぐと、蜂蜜に近い色調の黄金色。綺麗に澄み渡り
妖艶な輝きを解き放っています。熟成した白ワインに必ず感じられる
とも言えるマッシュルームの香り、そして色から想像できるカンロ飴
の香り、カリンのコンポートの香りもします。
味わいは生き生きとした酸味の広がりを基調に、エキス分タップリの
果実味と骨太なミネラル感が口中を満たします。そして、23年も経つ
のにミントを思わせる爽やかさまでもが余韻に残ります。
テイスティングしてみた限りでは、コルクのコンディションが保たれる
のであれば、30歳は迎えられそうな生命力です。


香味はパーフェクトとも言えるバランスの良さですので、ワインだけで
味わい尽くすのがベターですが、何かを軽くつまむのであれば、その
バランスを崩さない様に、穏やかで同系の香味ある食べ物と一緒に
楽しんで下さい。
甘味旨味の十分なサツマイモを多めのオリーヴオイルで揚げ焼く様
にして火を通した上の画像の様なもの、そして正月のおせちに定番
の豊かな風味の栗きんとん等がお勧めです。


円熟の極み、ドイツ白ワインを正月に是非、ご堪能ください。
Schloss Schonborn 
1990 Hattemheimer Nussbrunnen Riesling Auslese
シュロス・シェーンボルン
1990 ハッテンハイマー・ヌスブルンネン、リースリング、アウスレーゼ
相性の良い料理:素材の持つ優しい甘味を生かした軽やかな   
           味わいの料理。
バランスを崩す可能性が高いので、チーズとは合わせない方
良いでしょう。
飲み頃温度:7度。
<軽く、爽やかな、やや甘口> 15,750円