2020年11月7日土曜日

合う、合わないとは一体どんな事?

人間関係に於て合う、合わないは端的に言えば、好きか嫌いかだ
そうです。では、ワインと料理の関係に於てはどうでしょうか?
ワインと料理が合い、とても良い調和を見せた時、ワインの世界
ではしばしばベスト・カップルの結婚になぞらえて、「ワインと
料理のマリアージュ」と表現します。
ワインと料理のマリアージュに於ては、ワインが料理を引き立て
料理がワインを引き立てるのですが、多くの場合、マリアージュ
の結果、料理の味わいが変わるのではなく、ワインの香味が料理
と融合する前と融合した後で変化し、そのワインをよりバランス
良く感じる様になると言えます。
具体的には、酸味を尖って感じていた味わいが、酸味がまろやか
な主張になり優美な味わいとなる。タンニン(渋味苦味の成分)
の厳しい広がりのあった味わいが、タンニンの角々しさが消え、
柔和な口当たりの味わいとなる。そして何よりもワインに品位の
ある甘味旨味を感じる様になる。これがマリアージュの最も明確
な状態です。
では、逆の場合、マリアージュしていないならどうなるでしょう
か。「魚料理には白ワイン」と言う意味不明の法則が知れ渡って
います。それを鵜呑みにし、「マグロの刺身、カツオのたたき、
ブリの刺身を食べながら白ワインを飲んだら口の中が超が付く程、
生臭くなった。」とよく聞きます。この状況はマリアージュして
いない典型で、魚でも赤身、脂がのっている、味わいに鉄分ぽさ
や血合いのニュアンスがある場合には、パートナーは白ワインで
なく、赤ワインになるからです。
何故なら、赤身の香味には赤ワインに通じる要素があり、脂肪分
はタンニンと相乗し易く、鉄分ぽさや血合いのニュアンスは白で
なく赤ワインにある固有の特徴だからです。マリアージュを創造
するのはワインと料理の両者に共通する要素がいかに多くあるか
で、共通項が多ければ多い程、マリアージュの完成度合いが向上
します。




また、別の場合、赤ワイン好きだからと言って、「料理をポン酢
で食べて、赤ワインを飲んだなら、口の中に不快な苦味が充満し、
口が曲がりそうになった。」ともしばしば聞きます。
これは「レモンをかじりながら牛乳を飲んでいる。」様なもので、
ポン酢の酸味(ハツラツとした爽快さがあるリンゴ酸)とワイン
の酸味(ほとんどの赤ワインが持つ柔和でコクのある乳酸)とが
反発し合った結果、そうなった訳です。





ワインと料理のマリアージュを完成させる前提条件には色々あり
ますが、酸味の性質を同じくそろえる。これは最も重要で、基本
となります。
*リンゴ酸(レモン、ゆず、ポン酢などで味を調えた料理)には
リンゴ酸を含有したワイン(多くの白ワインがこのタイプ)
*乳酸(クリーム、バター、チーズ、醤油などで味を調えた料理)
には乳酸を含有したワイン(ほとんどの赤ワイン、そして一部の
ロゼワインと白ワインがこのタイプ)
と覚えておくと良いでしょう。