2015年9月3日木曜日

ここまで凄いとは思いもしなかったよ、中国ワイン

人口が多い故に大きな消費量が期待でき、欧米のワイン生産者から
重要視されて来た中華人民共和国。それに伴い、自国でもワインを
造ろうと言う動きが加速し、今ではブドウ栽培面積がスペインに次ぎ
世界第2位、また稼働しているワイナリーは2,000を超えると言われて
います。
今までは単に量、数ばかりが注目されていて、中国産ワインの品質
はと言えば、悪くはない程度のレヴェルなのではと勝手に予想して
いました。日本での中国に対する負のイメージが付きまとい過ぎて
真実が見えていませんでした。
昨夜のワイン会で3種類の中国産赤ワインをテイスティングしました。
結論から言いますと、これ程までに完成度が高く、香味のバランス
がとれていて、かつ品種個性が明確なのかと驚かされました。広大
な国土に様々な環境が混在し、世界中のワイン産地が一国内に
存在すると言えるほどですので、適地適品種の栽培、栽培技術の
向上が更に進み、同時にワイン造りがより洗練されれば、この程度
の品質には収まらない恐ろしいレヴェルのワインが多数誕生する事
でしょう。


上の画像の2種類の赤ワインは同じ造り手(北京丰收葡萄酒有限
公司/Beijing Fengshou Wine Co..Ltd.)によるものです。ご覧の通り
色合いは淡く、よって、香味は控えめで個性の主張に欠けるのでは
と思ってしまいますが、明確な個性の主張がある香り、深みのある
味わい、しなやかで優美なバランス感は否定的な表現が一切不要
な程です。


その2種類はCabernet Sauvignon/カベルネ・ソーヴィニョン(左の
グラス)とCabernet Gernischt/カベルネ・ゲルニッシュト(右)から
それぞれ単一で造られています。
カベルネ・ゲルニッシュトは中国にいち早く入って来たワイン用の
ブドウで当初はCabernet Franc/カベルネ・フランの亜種、仲間と
考えられていましたが、つい最近の研究結果は元々フランス原産
で今はチリで最も重要視されているCarmenere/カルメネーレ種で
ある事が判っています。
実はこの2つのブドウは親戚なのです。カベルネ・ソーヴィニョン
はカベルネ・フランとSauvignon Blanc/ソーヴィニョン・ブランの
交配で誕生し、カルメネーレはカベルネ・フランとGros Cabernet/
グロ・カベルネの交配によって誕生しました。
片親が同品種ですので、そのワインには類似性があります。昨夜
はその2品種のワインをブラインドでテイスティングしたのですが、
どちらにもチェリーやプラムの果実味、メントールや緑黄色野菜の
植物のヒントがあり、酸度は高め、余韻にはハーブ・スパイスを
イメージさせる爽やかなニュアンスが残りました。
違いを強いてあげれば、左のカベルネ・ソーヴィニョンにはカシス
を思わせるほのかなヒントとやや強めのハーベイシャスさがあり、
右のカベルネ・ゲルニッシュトにはドライフルーツを思わせる鉄分
ぽさがあった事でしょうか。


そして別の造り手のカベルネ・ソーヴィニョンの赤ワインがこちら。
先程の2種類のワインよりも色調が鮮やかで色合いも濃いのが
判ります。3種類とも収穫年表示がありませんので、いつの収穫
のブドウから造られたのは推測の域を出ませんが、下の画像の
ワインの方が新しい事は間違いないと思います。



こちらのワインは中国の西方、キルギスとの国境をなす天山山脈の
山裾がブドウ栽培地です。ラベルでも判る様に山の斜面に拓かれた
ブドウ畑は日射を効果的にブドウ樹が受ける事が出来ますので、
熟度の高い実が収穫できる傾向があります。恐らく、その為でしょう
ワインの外観が充実しているのは。


カベルネ・ソーヴィニョン(赤霞珠)の個性である濃い緑色の植物を
感じさせる香味、チェリー、プラム、富士りんごの外皮を思わせる
爽やかな香味、酸味とミネラリーさを基調とした酒質で余韻にも
爽やかさを感じさせるメントールのヒントが残ります。
このワインは初めから中国産と知りつつテイスティングしましたが、
それでもフランスのボルドー地方のカベルネ・ソーヴィニョン主体の
ワインを思わせ、今、既に中国のカベルネ種の赤ワインは日本の
それのレヴェルを凌ぎ、遥かなる高みへと到達し、やがては本場
ボルドーをも蹴落としてしまう程の凄さを見せつけてくれるに違い
ないと思わずにはいられません。
初めて北京に滞在し、中国の真実を知りました。中国のワインを
真剣にテイスティングし、その凄さを実感しました。私達、日本人
が偏見の目を向けずに見たなら、そこには中国の素晴らしさや
本当の良さがあるはずです。
この日本では中国ワインの入手、安定した販売はかなり困難を
極めますが、当店は今後、将来性豊かな中国産ワインを注視
し続けて行きます。