2014年11月2日日曜日

黒いワイングラス

先日、偶然、知った事。私達が受け取る情報の80%は視覚からなのだとか。
ワインをテイスティングする時、もし外観をチェック出来ず、グラスに入っている
ワインが白か、ロゼか、赤か判らないなら、たった20%の情報からその品種
を推測しなくてはならない訳です。
白ワインに特有の香り、赤ワインに特有の香り、ロゼワインならそのどちらも
含有している可能性があります。酸味は赤ワインよりもロゼワインの方が、
それより白ワインの方が強いでしょう。しかし、マロラクティック発酵をした白
ならば、その考えは当てはまりません。何故なら、ブドウ由来のリンゴ酸が
乳酸菌の働きで乳酸に変わり、口当たりが柔和になるからです。
一部のロゼワインと大多数の赤ワインはそのマロラクティック発酵を経ている
ので、マロラクティック発酵をした白ワインですと、その酸の質が似ますから
酸味だけでどの色のワインなのかを判断できなくなるでしょう。
そこで重要になって来るのがタンニン(渋味成分)の存在です。ロゼワインや
赤ワインのあの色(色素)がタンニンですので、ワインを口に含みタンニンの
感じ方でロゼなのか赤なのかを判断する事になります。
しかし、ここで混乱を起こす可能性があるのは木樽で醸造熟成した白ワイン
(熟成しただけの白ワインもあります)です。木樽からワインへと抽出された
タンニンが含まれている事になりますので、その成分がある事でロゼワイン
や赤ワインと勘違いしてしまうのです。
そんな事ある訳ないだろう。そう思う人が多いと思いますが、既に言いました
様に情報の80%は視覚からです。目で見て白ワインだから、ロゼワインや
赤ワインに含有されているタンニンを白ワインには感じないと脳で処理して
いる可能性が高いと思います。
嗅覚で色の違いによる特有の香りをチェック、味覚で酸味、タンニンの質を
チェック、触覚で酒質をチェック、それらを精密機械の如く行う事が本当に
出来るのか?
先月、行われた第7回全日本最優秀ソムリエコンクール決勝のブラインド・
テイスティングの最初の3種類の飲料は真っ黒なワイングラスに注がれて
いて、外観が全く判らない状況でのテイスティングでした。日本のトップに
位置するソムリエでさえ、その飲料(最初が赤ワイン、次が白ワイン、3番目
がロゼワインでしたが)の特定に困難を極めていたぐらいですから、視覚で
チェック出来ないと言う事がいかに障害になるのかが理解できました。
視覚からの80%の情報、嗅覚・味覚・触覚からの20%の情報をフル活用
し、正解を導き出す。それでさえ簡単ではないのですが、20%の情報のみ
で正解にたどり着かせるには、非常に高度な分析力が必要です。白ワイン、
ロゼワイン、赤ワインそれぞれの様々なタイプを緻密に正確に分析的に、
嗅覚・味覚・触覚で日頃から捉えていなくては対応できません。


真っ黒なワイングラスにワインが入っていたなら、それをテイスティングして
一体どんなコメントをするのでしょうか。目隠しをし、テイスティングをした事
がありますが、結論を出すのに非常に苦労をした記憶があります。もちろん
正解を導き出す事は出来ませんでしたが。
ブラインド・テイスティングは無情報からのスタートですので、対峙している
ワインの真実を感じる事が出来ます。視覚の情報が入らなければ、更に真
の姿を感じる事が出来るのかもしれません。これからは心を無にし、ワイン
の真実に接する為、時々、この真っ黒なワイングラスでテイスティングし、
テイスティング能力の向上にも役立てたいと思います。